ロシア・ウクライナ問題を考えると、地理的要因から欧州経済には最も大きな打撃があると考えるのが普通である。ところが、思った以上に今年暖冬であったこと、ロシアからの一部のパイプラインが継続的に稼働していること、ドイツ・英国の風力発電やフランスの原子力発電が安定したエネルギーを供給していること、また、中国の景況感が戻らなかったことにより中国のエネルギー購入が少なく済んだこと、などがそれぞれ功を奏し、欧州のエネルギー価格は下落してきた。

1月19日午前に発表された11月の国際収支データによると、経常収支は136億ユーロの黒字に改善している。開戦前の水準にまで戻ってきており堅調だ。これは8月の380億ユーロの形状赤字とは対照的であり、エネルギー価格の下落による貿易収支の改善とサービス収支の改善のいずれにも起因したものである。

一方証券投資フローを見ると、ガス価格の下落に伴い、外国人投資家は昨年10―11月に2月以降で初めて、ユーロ圏の株式投資を再開したことがわかった。同時に、ユーロ圏の投資家も外国株からの投資を引き揚げ、自国域内に戻してきた。債券に関しても同様、ユーロ圏に資金を戻してきたことが確認できた。ユーロ圏の債券発行の拡大やより魅力的な域内利回り、エネルギー価格の正常化に伴う成長見通しの改善を考え合わせると、証券投資フローの動向はさらに改善する可能性が高い。

そうはいえ、欧州には懸念がないかといえば、とりわけドイツの景況感に懸念が残ることや気候変動対策のコストなどインフレを進行させる要因も残る。バイデン政権の打ち出したインフレ抑制法案に対抗すべく、欧州での結束が呼びかけられているなどポジティブな動きが見られるもまだ行方ははっきりしていない。神風吹いて思うより悪くならなかった欧州経済だが、注意を怠れる程、安心というわけではないことは付け加えておく。


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