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急激に回復してきた中途採用市場。転職者が見ているポイント

皆さん、こんにちは。今回は「中途採用」について書かせていただきます。

昨年の第1回目の緊急事態宣言が発令された頃、転職市場は大きく急ブレーキがかかりましたが、その後採用面接のオンライン化が進み、選考だけでなく、そのまま入社の受け入れまでオンラインで対応する企業も出てきたりと、緩やかな回復傾向が見られました。
ただこの頃は、一部の高スキル保有者に求人が偏り、各社「厳選採用」を行っていた状況でしたが、2021年に入り、未経験者採用や大量採用といった求人がどんどん見られるようになってきています。

パーソルキャリア(東京・千代田)が20日発表した2021年4月の中途採用求人倍率は前月比0.02ポイント高い1.88倍だった。エンジニア派遣企業などの求人が伸びた。転職希望者数は20年6月以来の過去最高を更新した。
中途採用求人倍率は同社の転職サービス「doda(デューダ)」に登録する求人数を転職希望者数で割って算出する。
求人数は前月比2.6%増えた。企業が新年度を迎え採用活動を開始した。新型コロナウイルス禍で抑制していた採用を回復させる動きがみられた。業種別ではエンジニア派遣を含む「サービス」の求人数が前月比4.8%増で、「メディカル」が同3.7%増えた。
転職希望者数は前月から1.6%増えた。全職種で登録者が増えるなか、営業や販売系の人材がけん引しているという。dodaの喜多恭子編集長は「新型コロナで企業が業態変更や業績不振に直面しており、転職の相談が増えている」と指摘する。
リクルートが企業人事を対象に調査した2021年度の中途採用計画によると、23%の企業が中途採用を前年度より「増やす」とした。前年度並みの中途採用を計画する企業もほぼ半数に上った。新型コロナウイルスの収束後を見据え、企業の積極的な姿勢がうかがえる。
調査は3月19~24日、全国の企業の人事・採用担当者1015人にインターネットで実施した。
従業員規模別では、5000人以上の企業の27.3%が採用人数を増やすとした。99人以上の企業も21.7%と、300~999人以下(20.6%)や100~299人以下の企業(16.8%)を上回った。採用計画を減らすとした企業は全体で15.3%だった。
企業は社会環境や価値観の変容を踏まえた取り組みを今年も進める。21年度以降に新たに取り組みたい施策は、「兼業・副業容認などの人事制度改革」が18.6%で最も多かった。「新しい採用ブランディング施策の実施」(17%)、「地域限定社員の導入」(15.8%)などが続いた。
採用活動でも22.7%がオンライン面接を21年度以降に活用したいと回答。コロナ後も採用のデジタル化は進みそうだ。
リクルートの藤井薫HR統括編集長は「変化に適応し、新たなビジネスを推進する人材をいかにひき付けるかが、企業の経営課題だ」と指摘。そのうえで「自分の成長につながる兼業・副業を認めるなど、経営が変化し始めようとしている」と分析する。
新型コロナウイルス対策に伴う3回目の緊急事態宣言が発令されるなか、転職市場で求人需要がじわりと戻ってきた。過去2回の時は下回っていた、コロナ前の水準を超えた。国内ではワクチン接種が本格化している。経済活動の正常化を念頭に、人材を確保する企業の動きがうかがえる
エン・ジャパンの転職サイト「エン転職」の求人掲載件数を緊急事態宣言の期間に絞り比較すると3回目の期間中(4月25日以降)は、5月31日までの合計で前年同期の2.1倍。19年の同時期と比べても8%増えた。
1回目の宣言(20年4~5月)では、19年の同時期に比べ半減した。宣言は全国に広がり、飲食店や娯楽施設で休業が相次いだ。経済の先行きが見通せず、企業はコスト削減へ「リーマン・ショックよりも急速なスピードで採用を見送った」(エン転職の岡田康豊編集長)
2回目の宣言下(21年1~3月)は、前年同時期比8%増まで求人が増加した。感染対策の徹底を踏まえた「新しい生活様式」が広がると、即戦力となる経験者に絞り込んだ採用が先行して回復する。在宅勤務などへの対応に企業も慣れた。
3回目の宣言中の現在は「ワクチン接種後の世界を想定した人数確保といった採用ニーズが出ている」(岡田編集長)。職種別でみると、IT(情報技術)・webなどの技術系が19年比5割増加。業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を担う即戦力人材が伸びる。電子商取引(EC)のサポート人材の求人も目立つ。
就職情報大手マイナビの転職情報サイト「マイナビ転職」に掲載された求人案件数も4月は前年同月比95%増え、19年の年間平均を上回る。
即戦力ニーズは募集時年収にもみてとれる。マイナビ転職に掲載された案件の年収をまとめた中途採用の平均初年度年収(全国)は、4月は前月比0.5%(2万3千円)上昇し452万9千円だった。企業が採用を本格化し、不足感が広がるITなどの分野は経験者の年収を引き上げて募集する動きもある。
1回目の宣言下では、企業が採用を年収水準が相対的に高い経験者に絞り込み、平均年収が上昇。20年6月以降は、未経験者採用が再び動き始め相場は下がった。
賃金を引き上げて即戦力の人材を募集する動きは、企業の採用マインドの変化を映す。事業活動再開に伴う目先の人手の充足にとどまらず、中期的な事業戦略を見据えはじめた可能性がある。

引用させていただいた3本の記事からも分かるように、企業の中途採用の動きが今、活発化してきています。

■転職希望者が増えている理由

コロナ禍で転職希望者が増えている背景には、以下のような理由が考えられます。

▽会社が先行き不透明/業績不振だから
▽収入が減ったから

多くの人が転職を考えるきっかけとなったのが、日本全体における「経済の低迷」です。
業界・業種によっては、コロナの影響を大きく受け、売上は減少、社員の解雇や減給をしている会社もあり、先行き不透明な状況を受けて転職活動を開始している人が増えています。業績の悪化により離職を余儀なくされた人は増えていて、総務省が先月発表した4月の完全失業率は2.8%となり前月(2.6%)から上昇し、完全失業者数は194万人で前月比14万人も増加しています。

▽働き方や勤務スタイルを変えたいから(リモートワークや副業がしたいから)
▽キャリアに対する考え方が変化したから

在籍している会社がリモートワークに対応していない場合、感染の不安も相まって、働き方が多様化している会社を求め、転職活動を始める人が多いようです。求人情報を検索する際、「リモートワーク」を取り入れている会社かどうかを、必須条件にして検索する人が多いというデータもあります。

経済環境も会社も不安定になり、「会社が永遠に雇用を守ってくれるわけではない」という認識が広がり、個人が「会社に依存せず、自分のキャリアを主体的に作らなければいけない」という意識も高まりつつあります。リモートワークの普及だけでなく、副業や兼業など働き方の選択肢が広がったことも、「キャリアは自分で選ぶもの」という、個人のキャリアに対する自立意識向上につながっていると思います。

▽転職活動のハードルが下がったから
▽足元ではなく中長期を見据えた企業の採用意欲が上がったから

中途採用選考の面接もオンライン化が進み、企業側と求職者側双方の面接のハードルが下がったことも、転職希望者が増えている大きな理由の一つです。地方在住の求職者からの応募件数もオンライン化が進んだことによって大幅に増加しました。
そして、コロナ禍で苦しい経営を行っている企業が多い今だからこそ、「有能な人材の確保がしやすい」と捉えている企業が多いことも事実です。実際に今を好機と捉え、経験者採用に対する需要(求人件数)は増加傾向にあり、しばらくはこの傾向は続くと見込まれています。
この傾向が見られるようになったのは、先行きが不透明な中においても、完全に採用活動をストップさせるのではなく、足元ではなくもう少し先を見据えて、今だからこそできる「投資」へと舵を切っている企業が増えてきたからではないでしょうか。

■今どんな会社が選ばれるのか

それでは今、求職者からどんな会社が選ばれるのでしょうか。
結論から申し上げると、「変化への適応能力が高い会社」だと思います。
働き方だけでなく、従業員や求職者とのコミュニケーション手法も変化が求められるようになり、従来の育成方法や、組織マネジメント、組織風土、採用戦略に至るまで、とにかく「変化に適応していく力」が必要とされています。
「リモートワークができるか」だけで会社を選ぶなんて安易な発想だと思う人は多いかもしれません。ですが、求職者は、そういった要素を通して、「新しい時代にスピーディーに対応している会社か」をよく見ているのだと思います。世の中の変化にしっかり対応できている会社かどうかが、選ばれる会社と選ばれない会社の大きな違いになっているのです。

また、「会社のビジョンやパーパスに共感できるか」、「自分が会社のカルチャーとマッチするのか」は、企業選びの上で大事なポイントであることは従来から変わりませんが、最近は特にこの傾向が強くなっていると感じます。
この会社を選ぶことで、「自分がどんな価値を出せるのか」だけでなく、「その仕事はどのような社会的な意義があるのか」、「どんな影響を社会に与えられるのか」というところまで考えている人が増えていて、企業側が今まで以上にオープンに、理念や方針を打ち出していく必要性が高まっていることは明白です。

労働市場の流動性が高まれば高まるほど、企業が労働市場で選ばれる難易度は上がっていきます。しかも、働き手の価値観が多様化している今、従業員は少しでも違和感があるとすぐに違う職場を探し始めてしまいます。
常に「選ばれる会社」であるために、会社の規模や歴史、知名度などと関係なく、どんな会社でも努力し続けなければいけないのです。

■企業が中途採用で意識すべきポイント

直近の中途採用において、企業側が留意すべきポイントをまとめました。

①「短期集中型の選考フロー」
→リモートワーク、かつ選考がオンライン面接になったことで、求職者の移動コストがなくなり、現職の上司に知られることなく面接を受けやすい状況になり、選考開始から内定までのリードタイムが非常に短くなっています。競合他社の内定出しのタイミングも同じように前倒しされていますので、企業側はより、短期集中型の選考フローを構築する必要があります。
②「情報のオープン化」
→新型コロナウイルスが一過性のものではないという認識が生まれている中、これからの働き方が企業選定において重要な役割を担っていくことは間違いありません。
経営方針の打ち出しにとどまらず、中長期的にどのような働き方を考えているのか、コロナ禍で変化した経営課題に対してどのような取り組みを行っているのかなど、企業が対外的に発信していくことの重要性が高まっています。
③「採用基準の再定義」
→業績悪化に伴い「人材育成コストの削減」に迫られ、かつリモート環境におけるオンボーディングに苦戦している企業が増えていると聞きます。
ただでさえ中途採用において企業が重視するポイントの一つは「即戦力」となる人材かどうかですが、「即戦力」となることは大前提で、それに加えて育成のコスト(時間+お金)をかけなくても自走してくれて、さらに会社のカルチャーや組織風土に合致した人材を採用していくことが、採用の成功基準になってきています(採用の成功基準が上がっています)。こういった状況を踏まえ、改めて今までの採用基準を再定義する必要も出てきていると思います。
④「内定辞退に備えた対応強化」
→新卒採用も中途採用もどちらにも言える傾向ですが、数回のオンライン面接だけで内定が出た場合、わざわざ足を運んで各企業の面接を受けていないこともあり、それまでの対面での面接と比べて、「内定辞退」もライトな感覚で行う人が増えています。つまり、例年よりも内定辞退率が高い傾向が各社あるようです。
この状況を見越して内定を予定よりも多めに出していくことも一つの解決策ですが、できるだけ選考過程で、会社の理解度をより高める工夫が必要かもしれません。

■「変化」が生まれる時に雇用と転職のニーズが生まれる

「売り手市場から買い手市場」に、「オフィス出社からリモートワーク」にと、2020年から今現在にかけて、あらゆる人の“はたらく”ことに対する価値観が大きく変化しました。

2020年は特に「ニューノーマル元年」と言われ、働き方や消費者のニーズを変えただけでなく、企業のDXへの意識が一気に進んだ年になりました。新聞やニュースでもDXという言葉を見ない日はなくなり、そうすると人々の意識も「直近はDX領域に仕事が生まれている」「DX関連の仕事には転職しやすい」という方向に向きやすくなります。
それがいいのかどうかは別としても、ゼロベースで根本的なビジネスモデルから変えなければいけないような、大きな“変化”が起きるタイミングというのは、雇用ニーズ、転職ニーズともに出てくる時で、同時にリスキリングも含め、自分のキャリアを見つめ直す大きなチャンスだと言えるのではないでしょうか。

多くの企業がDXに取り組んでいる中、終身雇用や年功序列などの日本型の雇用制度が今の時代にはマッチしなくなっています。従来の雇用制度を維持したままで、変化・変革を起こさない限り、特に技術者など優秀な若手人材は他社に取られてしまい、採用や育成は失敗する可能性が高まってしまいます。


最後に、リーマンショック時と同じように、これから数年かけて徐々に経済回復がなされていき、日常生活が落ち着くにしても、完全に元と同じ状態に戻ることはありません。
この流れによって動き出したDXの流れやビジネス環境の変化が止まることはなく、逆に言うと、企業がその変化を受け入れることなく頑なに変わろうとしなかった場合、競争力が落ち、生き残ることが難しくなってしまうのだと思います。改めて、変化を恐れず「アップデートし続けていくこと」がこれからのニューノーマルな時代に求められています

そんな状況下において、積極的な中途採用計画を打ち出す企業が増えてきた理由は、足元の人材不足を補うためだけではありません。コロナ収束後を見据えた、中長期の事業拡大やDX推進のため。そして、個人のキャリア意識や、会社との関係性の変化に伴う、新たな採用・育成手法への転換が必要になってきたことが理由です。

企業は今こそ変化に適応しながら、既存事業拡大だけでなく新領域のビジネスを推進する人材を集め、いかに多くのチャレンジを生み出し事業成長につなげていくかが重要な経営課題であると認識する時だと思います。


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