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アーティストを目指す学生に伝えたい事。

先日、Tokyo Art Navigation(トーキョー・アート・ナビゲーション)という「東京の文化・芸術の現在」を紹介するメディアから、インタビューを受けました。

主に、美大生など、将来アーティストを目指す学生に向けて、キャリアやお金について、そしてクラウドファンディングという制作資金の集め方についてお話してくださいとの事でした。

私の場合は、東京芸術大学大学院に通っていたので、一様、元・美大生ではあり肩書だけみるとなんかすごそうですが、「大学院」であるところが重要です(笑)。

どこの分野でも近しい話があると思いますが、やっぱ学部からその領域でちゃんと学んでいる人は本域だな感じますし、ましてや「超難関」であることが間違いない美術系の学部ではなく、映像系の新設学部なので、ちょっとジャンルが違うという自己認識があり、元美大生として今の美大生にメッセージをとか言われると、いやそんな立場じゃないし・・・てのが正直な所。

もちろん、映像研究科にも誇りを持っていて、よく私みたいなものを入れてくれたなと感謝しかないですが、毎年「藝大の学園祭すごいよね!ああいうの作ってたの?」と言われるたびに、ああ、上野校舎とはちがうんだなあとか感じていたものでした(笑)。

そんなこんなで、端から王道な美大生のキャリアでは無い自分にとっての卒業後の進路は、作家・映画監督・映画プロデューサーの方面で頑張るわけではなく、よく言えばもっとメタに考えたりもともとのバックボーンでもあるビジネス領域との接続を考え、MOTIONGALLERYというクラウドファンディングプラットフォームを立ち上げるという、よくわからない方向になりました。

でもだからこそ見えてきたものも少しはあるので、それについてインタビューでお話しました。

プレゼンテーションについて

――クラウドファンディングを行う利点はなんですか。
プロジェクトの意図や情熱を伝える表現力や伝達力、周囲を巻き込む力が鍛えられますね。
アーティストは「自分が表現したいもののために作品を制作している」と誤解されているように思います。本当に素晴らしい芸術作品は、パーソナルを突き詰めてパブリックになっていく、個人の思いや世界観が普遍的なものとして受け取れるようなものです。そこまで達している作家や作品かどうかは一見わかりにくいので、一括りにされてしまう。作品の意図やその真価を理解してもらい、購入や上映・上演してもらうためにも、プレゼンテーション能力は大事です。

いま時代は、プレゼンテーションのスキル、そして共感を集める重要性が日に日にましています。背中で伝える的な職人肌なコミュニケーションは評価されないですし、いま一つの経済指標とも考えられもする共感を集められない。

一般的には、アーティストは気難しくて作品だけで語り、プレゼンテーションとか苦手な人種とひとくくりにされている気がします。
そのステレオタイプに安住し、本当にプレゼンテーションやらコミュニケーションを放棄している美大生に出会ったことも少なくなかった。村上隆がなんであんなにキレてんのかがすごく実感したこともありました。

ただし、一般的にすごく誤解されているなあと思ったのは、一線級の表現者は、作品が最大のアウトプットなのにわざわざ言葉でそれを表現しなおすといった自己否定的な事をしないだけであって、言葉で語れと言われたらものすごくロジカルにプレゼンテーションができる人たちです。
世界で戦うのであれば、一線級のアーティストになるのであれば、作品の種明かしはしないけども、作品が内包する価値をチラ見せして興味を引かせるようなコミュニケーションは今後より一層求められていくでしょう。

世間のステレオタイプは気にせずに、プレゼンテーションの実践の場が、もっともっとアーティスト志望の人たちにも増えるといいなと思っています。

共感について

――クラウドファンディングを成功させるコツはありますか。
クラウドファンディングは、実現できるかわからないものをやろうとするプレゼンターの情熱に対し、コレクターが共感・応援することで、才能の芽が生まれてくる仕組み。そのため、自分が考えていることにいかに正直かが大前提です。
「共感してもらえそう」「流行っているから」ではなく、「自分がどういうことをしたいか」「なぜみんなから資金を集めたいのか」を、自分の言葉でわかりやすく伝える。上辺だけの言葉は見る人にバレてしまうし、もともとファンだった人たちから見ても「いつもと言っていることが違う」と興味を失ってしまいます。それに、嘘が混じっていると自分自身も「応援してください」と言えなくなってくるんです。

そしてもう一つ、今求められている「共感」。
クラウドファンディングもまさにこの共感を集める仕組みです。

でもアートは、パーソナルな視点や感情から始まる作品も多く、一概にみんなにいいねと思われるを求めるものがいいとは限りません。それこそ自己承認欲求で作られた作品など・・・。

しかし、クラウドファンディングを運営していると気づいたことがあります。
「反共感」みたいな言葉もうまれてくる位、昨今の共感を求める世情に嫌気がさしている人も出てきていますが、

「共感」と「承認欲求」は違うということ。

ライトに提供できる「承認」は周囲にもとめればもらえるものかもしれないが、共に何かを成そうとする様な一段深い感情である「共感」は単に求めればもらえるものではないと感じることが多いです。
それは、多分「いいね!」と「クラウドファンディングでお金を出す」との間に大きな壁があるから特に実感しやすいのかもしれません。
それっぽい投稿をすれば「いいね!」は集められても、その言葉に本心や蓄積された経験からくる重い思いが乗っていなければ、ファンディングまではつながらない。そう思うことが多いです。

そして面白いのは、他人からみるとものすごく「コア」な内容だったりビジョンだったりするもの、つまりまだまだ一般化してない概念を、薄めずに原液のまま伝えているプロジェクトのほうが、より一層ファンディングに成功している事実。

つまりなんとなく思われている「みんながいいと思ってくれそう」「今の流行りに乗っかろう」というのが透けてみえているプロジェクトよりも、「コアで一般的には分かりづらいけど、少なくても本人がものすごく確信してやっていそう」なプロジェクトのほうが、同士となる共感が集まっているのです。

薄いメッセージを広く伝えることよりも、濃いメッセージを深く伝えるほうが「共感」があつまる可能性を示唆しているクラウドファンディング。

表現者の時代

そう、「プレゼンテーション」「共感」と一見するとアーティストには縁遠い様なスキルは、実はアーティストが本来持っている強みなのかもしれないと感じませんか?

付和雷同では大成しない現代芸術の世界で活躍することは、
すなわち、AIが進化する社会で一層求められる、人間でしかできない「プレゼンテーション」「共感」を磨いている事と等しいかもしれません。

アーティストを目指すが学生には、そんな事も頭の片隅に置きながら、ときには創作活動に必要なお金を、クラウドファンディングという形で集め、社会とまたいつもと違うコミュニケーション機会を創出してもらえると、もっと面白くなると感じています。

そんな表現者の時代を一緒につくる存在に、クラウドファンディング「MOTIONGALLERY」がなれるといいなと思います。


頂いたサポートは、積み立てた上で「これは社会をより面白い場所にしそう!」と感じたプロジェクトに理由付きでクラウドファンディングさせて頂くつもりです!