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広がる学生デモとZ世代の絶望

現在、アメリカ中の120を超える大学で、ガザでの虐殺に対して抗議をするデモが行われている。抗議活動を行っているZ世代は、賃金の低迷や物価の高騰、ホームレス問題や学生ローン問題に加え、 学校銃撃事件/コロナ/ジョージフロイド/ガザなどあらゆる面で「アメリカは我々を守ってくれない」ということを知っている。失うものも希望もないZ世代のことを伝え続けていたけど、爆発の結果がこれなのだだ。

アメリカのZ世代の絶望や価値観について当事者として書き続けている中で、「そんなの西海岸のリベラル金持ちだけだろw」と冷笑されたことは何度もあった。今回の全国での切実さや連帯感が浮き彫りになった学生運動を見てもなお、果たして同じことが言えるだろうか。

日本のメディアも、アメリカの大学プロテストについて記載するときは「学生と警察の抗争」とか「過激化するプロテスト」とか、「どっちもどっち」と受け取れる記載に注意すべき。そして平和的にジェノサイドに反対するZ世代を冷笑する言動を取る人も、現実を見る必要があるだろう。

メディアに関しても、自分の大学の学生や教員に対して警察官を根拠なく出動させる異常性、学生が物理的に抵抗する理由、大学側の「過激化」する対応、州を超えて東から西海岸まで様々な大学でコロンビア大学に連隊を示している理由、そしてそれが制圧される理由、それを伝えなければとただ学生が意味もなく暴力的なように見えてしまう。

2022年に19人の小学生と2人の教員が殺されたテキサス州ユバルディの学校銃撃事件の際は約100人の警察官は介入せずに学校の外で待ち続けた結果、大きな被害を生んだ。 しかし学生が平和的なプロテストを行うと、ここまでテキサス警察は暴力的に抑圧できてしまうのだ。

空のウォーターサーバーの入れ物を持って警察を叩く動画が話題になってる、Cal Poly Humboldt大学での学生の立てこもりプロテスト。武装した警官から身を守るためにドアに家具を積んでバリケードを貼る手法は、まさにZ世代が子供の頃から叩き込まれた「学校銃撃事件」に備えるための訓練で学んだ手法。何も信用できない世代。

「ジェノサイド反対」と平和的に表明している学生や教員たちを、何百人もの警察官を大学が動員して暴力的に逮捕したり、学生カードを無効にして寮から追放したり、議会が学長を呼び出して「反ユダヤ主義だ」と圧をかけたり、アメリカでは学生たちの表現・発言の自由が脅かされている状況だと知るべきだ。

歴史的に何回も繰り返されてきた「学生運動」というものに対して再び暴力や権力で支配・制圧しようとする大学側の戦略に対して、屈するのではなく抵抗をし続ける学生の構図が浮き彫りになっている。アメリカの若者たちがすごいというよりは、大学・警察・政府の対応がおかしいという意見が広まっている。

さらに、普段は多様性・発言の自由・権力への抵抗の美しさみたいなことを提唱している有名「リベラル大学」でも、大学に向けられた批判となるとこのように強制的に制圧しようとする、という体制の問題が顕になった。加えて、実際にデモに参加して連帯を示している学生の中にユダヤ系や富裕層の学生も多くいる。

「アメリカ」という国のシステムの限界、そして既存の権威や表層的で非本質的な「平和」を都合よく守りたい大学の二面性が明らかになっているこの危機的な状況に対して、学生の抵抗運動だけ見て「アメリカっていいな」とか「アメリカすごい」というのは、どうしても全体のムーブメントの本質を捉えていないと感じてしまうのだ。


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竹田ダニエル
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