カネでは解決できない難民問題
6月末から7月初旬にかけて欧州では難民危機に絡んだ首脳対応、特にドイツ政局が着目されました。この辺りの経緯を極力丁寧に整理させて頂きました。ドイツ連立政権合意前後の動きから足許に至るまでの展開を踏まえれば、CDUやCSUが守りたかったものはあくまで「メンツ」であって、難民については「極力受け入れない」という方向で暗に落としどころが決まっていたように感じられます。
それにしても最近の欧州を見ていると、ポピュリスト政党に政権を奪われたイタリアはもちろん、総選挙による極右躍進をおそれて路線修正を図ったドイツ、極右政党と手を結び政権を運営するオーストリア、難民政策でまったく妥協する気配のない東欧3カ国がそれぞれの利益のために立ち回っているだけだということが良く分かります。
2015年8月にメルケル首相が自身の理想に基づいて決定した無制限難民受け入れ政策を境に、欧州債務危機は欧州難民危機へと形を変えたようにも思われます。「カネを出せば解決する」という債務危機とは異なり、「カネをもらってもヒトは受け入れられない」という側面を持つ難民危機はより厄介で、強力な破壊力を持ちます。
現に統合の象徴であるシェンゲン協定が崩壊しつつあり、経済・金融では世界最強と形容されるドイツの政治も崩壊寸前まで追い込まれている現状はその証左でしょう。秋に再びユーロ圏はこのテーマに直面することになります。
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