ヒトの知能は60歳まで伸び続ける。いかにに学び続けるかが将来を決める。
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
先の記事では不確かな将来を生きのびるためには、学び続けることが大事ということをお話しました。
実はこれ、精神論でもなんでもなくて、科学的エビデンスのある話です。元TechCrunch Japan 編集長である西村さんのtweetで見つけたのですが、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターによる研究成果として発表されています。
知能の最も大きな分類は、ホーンとキャッテル3)が提唱した、結晶性知能(crystallized intelligence)と流動性知能(fluid intelligence)である。結晶性知能は、個人が長年にわたる経験、教育や学習などから獲得していく知能であり、言語能力、理解力、洞察力などを含む。一方、流動性知能は、新しい環境に適応するために、新しい情報を獲得し、それを処理し、操作していく知能であり、処理のスピード、直感力、法則を発見する能力などを含んでいる。
ホーンとキャッテルは、結晶性知能は20歳以降も上昇し、高齢になっても安定している一方、流動性知能は10歳代後半から20歳代前半にピークを迎えた後は低下の一途を辿るとし、知能には加齢に伴って低下しやすい能力だけではなく、維持されやすい能力があると考えた。
経験から学ぶことが多いというのは非常に納得感があります。特に洞察力というのは経験からのパターンマッチングに近いものがあり、直感だと思っているものも実は「似たような事例」を知っているからこそ思いつくものでしょう。よく刑事ドラマでベテラン刑事が鋭い推理を持ち出し「こいつが犯人だ!」というのも、膨大な経験がなせる技と言えるでしょう。
しかしながら、希望退職の募集で「45歳以上」が分かれ道になっているという指摘があります。それはなぜなのでしょう?
「45歳以上」を対象にした人員整理は他の企業でも相次いでいる。カシオも昨年、勤続10年以上の45歳以上の一般職と50歳以上の管理職を対象に、希望退職者を募った。協和発酵キリンも今月11日から、勤続5年以上かつ45歳以上の社員向けに希望退職者を募集している。
複数の大手企業で「45歳以上」が1つの区切りとして出されているのはなぜなのか。人材研究所の曽和利光さんは「45歳以上はちょうど団塊ジュニアがいて、人がだぶついている」にも関わらず、「氷河期世代で、マネジメント経験を始めとするビジネス経験を積めなかった」ことが要因にあると指摘する。
「経験がつめなかった」というのは重い指摘です。流動性知能、つまり新しい環境に適応する能力だとすれば、それを結晶性知能にするためには「経験すること」が何より大事であると言えます。つまり、20代では新しいことをやり経験を積み、30代を迎えるにあたって転職を経験して新しい環境に適応することが理にかなっているとも言えます。45歳までに「転職経験がない」ことが、キャリア形成について大きなリスクになり得るというのは知っておいたほうがよいでしょう。
かくいう筆者も、23歳から1つの会社に17年あまり勤め、40を迎えるにあたり奮起して慣れた日系企業から外資系企業に転職しました。仕事のやり方も言語さえも変化し、おろおろしながらもなんとか1年以上生きのびています。今は多様性のある環境で、とても楽しく充実した仕事をしています。振り返ってみれば、あのとき決断してよかったなと思いますし、意外となんとかなるもんだなーと思います。
著名な経営コンサルタントである大前研一さんは、その著書『大前研一洞察力の原点』において、以下の指摘をしています。
人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を考える。
2番目は住む場所を変える。
3番目は付き合う人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
もっとも無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。
変化が早く不確かな時代、いかに「変化に適応した経験を積むか」というのは、キャリア形成において大きなテーマであると思います。
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タイトル画像提供: xiangtao / PIXTA(ピクスタ)