「広告ってやった方がいいの?」と聞かれたので、パワポでちゃんと説明してみた話。(前編)
僕は広告会社で働いている。職種はプランナーだ。
ただ、この日経COMEMOでは、恋愛観や結婚観、家族観を中心に、世の中の固定観念に対する問いかけを発信することが多い。
広告の話を書くことは、ほとんどない。
そんな僕が今回はめずらしく、本職の広告について書いてみる。
というのも、先日とある中小企業の社長さんとプライベートで飲んでいた時、こんな会話になった。
「うちって、広告とかやった方がいいのかな?小島さん、本職じゃん。教えてよ。」
なるほど困った。
実は広告会社にいても「広告はやった方がいいのか」という話になることは少ない。
特に僕は職種柄「広告をやる」となってからチームに入ることが多いので、「そもそも広告をやるべきか」というお題に向き合ったことはなかった。
これはいい機会かもしれない。
「意外と考えたことがなかったので、パワポでまとめてみますね」
そう告げて、飲み会は終わった。
2週間後、60枚ほどのパワポを携えて再び社長に会った。
今日はそんな話。
■なんとなく使っている4つのことば
相手の社長は50代。男性。
実直な商売をされている方で、ネットや広告には明るくない。
そんな彼に広告(特にデジタル広告)をどう説明するか。
まずは言葉の整理から。
こんなスライドを提示してみた。
社長相手になんて失礼な質問だろうと思ったが、彼の答えは「マーケティング」
即レスだった。
人によって捉え方は違うが、僕も同じ考え方だ。
マーケティング活動を上位概念として、その下にいわゆる4P。
その中の1つの「P」であるプロモーションの中に広告がある、と捉えている。
プレゼンの際、特にカタカナ語が頻出の場合は注意だ。なるべく早く、こうした言葉の認識揃えをする必要がある。同じ言葉でも、全然違う意味で捉えたまま進んでいるケースが多い。
さて、整理すべき言葉はもう1つあった。プレゼンはこう続く。
それが最後の1つ。PRだ。
広告をやるべきか悩んでいる社長に「こんな本もあります」と紹介してみた。
これで4つの言葉の整理が完了。
話をするための役者が出そろった。
■広告と広報と、広告枠と非広告枠。
スライドは続く。
ここでまたクイズを出した。
さて、どんな言葉が当てはまるでしょう?
ちなみに私のプレゼンには、よくクイズが出てくる。
プレゼンと言うと、一方的に話してしまいがち。だが本当は会話に近い方がいい。
人は「聞いている」時間が続くと「話したい」というスイッチが入る。これを無視して続けると「聞かされている」スイッチも入る。こうなってしまうと結局、プレゼン全体が嫌な時間に変わってしまう。もちろんいい話に展開することもない。
「もっと聞きたい!」と惹きこむプレゼンをできる人なんて滅多にいない。私もそうではない。だから、ちょくちょくクイズを挟む。
少しでも発散できれば、ただのプレゼンが生産的な会話に近づくからだ。
さて、そんなクイズの正解はこちら、
と言いたいが「正解」なんて言うのはおこがましい。「僕はこう捉えています」程度でスライドをめくった。
至ってシンプルだが、念のため具体例で補足する。
新聞ならこう。
テレビならこういうことだ。
さて、次はクイズではなく質問を投げかけてみる。
社長の答えは「非広告枠にある情報」。多くの人が同じ答えだと思う。
「広告はいいことしか言わない。それより記事として、番組として紹介された情報の方が信頼できる」とのことだった。
そう。だからこそ、メディアには価値がある。
誰だって、新聞記事やテレビ番組内の「非広告枠」で自社の商品を扱ってほしい。だがそう簡単にはいかない。
そんな厳しい目で選ばれた情報が集まっているから、みんながメディアを見る。みんなが見るメディアになると、それがマスメディアになる。
だからマスメディアにお金を払って、広告枠でもいいから自社の広告を載せてもらう。これが広告のビジネスの基本だ。
しかしこの10年で、そんな広告ビジネスは少し変わってきた。
■非広告枠の主体を変えたソーシャルメディア
次のクイズは、こんなスライド。
答えはもちろん「ソーシャルメディア」。SNSをあまりやらない社長でも、すんなり言葉が出てきた。
広告はもう古い。これからはSNSの時代だ。
「そんなことがよく言われますけど、これって間違った言われ方なんです」
僕は続けた。
だって、SNSにも広告はあるから。
広告ビジネスは変わっていない。変わったのは、こういうことだ。
人は広告枠にある情報より、非広告枠にある情報を求める。
これは変わっていない。
非広告枠にある情報の主体が、メディアから身近な人に変わったのだ。
■プロモーションは四つ巴へ
ここまでで、用意したスライドは約半分。
実際は15分程度で話したことを、読み物にしたら既に2,000字になってしまった。
そこで今日はここまでを前編として、後編では「広告ってやった方がいいの?」の本質に迫る。
マスメディアにも広告枠と非広告枠がある。
ソーシャルメディアにも広告枠と非広告枠がある。
「うちも広告とかした方がいいの?」と悩む社長に、後半はこんな質問をぶつけてみた。
後半へ続く。
サポートいただけたらグリーンラベルを買います。飲むと筆が進みます。