閉塞感打破とマッチング技術

出会いのない日々は、いずれ閉塞感をもたらします。マッチング技術が、病気から人の命を救う事例があります。閉塞感による心のダメージからは、どのように抜け出せるのでしょうか。

出会い系アプリ技術がコロナ患者のために

インドで、出会い系アプリが血漿を仲介という記事がありました。

出会い系アプリ「トゥルリーマドリー」を運営するクレッシュレ・テクノロジーズは、血漿の提供が可能な新型コロナの回復者と、これを必要とする人をマッチングするサービスを4月下旬に始めた。新型コロナ感染者に回復者の血漿を投与すると重症化を防ぐことができるとされる。同社サイトでは900人以上のドナーと6,000人超の希望者がリスト化されており、登録をすれば条件の合う人と連絡を取り合えるようになっている。

この記事を読んで、次の本を思い出しました。

『Who Gets What マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学』(アルビン・F・ロス著 櫻井祐子訳 日本経済新聞出版社)

2016年出版と5年前の本ですが、改めて読むべき本かもしれないと思いました。この本は、マッチメイキングがさまざまな領域で求められているということが書かれています。その中に、腎臓移植に関するものがありました。

臓器移植とマッチング

自分のパートナーが、腎臓機能に障害があり、透析を続けなければ生活できないとして。腎臓移植ができれば、健康になれるとしたら。自分の、ふたつある腎臓のうち、そのひとつをパートナーにあげることを望む人もいることでしょう。しかし、臓器移植は免疫の適合性によって移植が可能かどうかが決まります。もし、自分とパートナーが合わなければ、どれほど当人が臓器提供を望んだとしても、移植は叶わないのです。

そんなパートナーが2組いたとします。カップルAとカップルB。カップルAの患者と、カップルBのドナー希望者が適合し、カップルBの患者とカップルAのドナー希望者が適合したとします。この場合、相互のドナー希望者の臓器を、相互の患者に移植することで、二人の患者の移植が成立します。それぞれ単体のカップルでは成立しなかった臓器移植ですが、2組のカップルがマッチングすることで、2人の患者が助かります。

さすがに、こうした相互適合は、そうそう見つかるわけではありません。しかし、この組み合わせをチェーンのように繋げられたら。たとえば、カップルA、B、Cがいたとして。カップルAのドナーからカップルBの患者へ、カップルBのドナーからカップルCの患者へ、カップルCのドナーからカップルAの患者へ、と数珠繋ぎに腎臓移植がつながったとしたら。この組み合わせを、コンピューティングで実現する。

出会いの抑制

遅々として進まぬワクチン接種により、長引く緊急事態宣言とまん延防止等充填措置。この感染症対策は、さまざまな出会いの機会を抑制しています。

みえる、わかる、できる、かわる。センサー、解析、介入、世界変化。そのループを生み出すための、異質ながらも志を同じくする人やプロジェクト同志の出会いを誘発するイベント「カンブリアナイト」も、感染症対策によって実施が困難になっている出会いの機会です。異なる人々との出会いが、さまざまな新世界の可能性を広げる。その出会いを、どう生み出せばよいのか。

ユダヤ教の口伝律法『タルムード』のなかに、こんな物語がある。万物の創造主は天地を創造されたあと、いったい何をなさるのですかと、誰かがラビ(ユダヤ教の宗教指導者)に尋ねる。ラビはこう答える、「縁結び(マッチメイキング)を続けているのだ」と。物語では続けてマッチメイキングーーこの場合は円満な結婚ーーをとりもつことがいかに重要であり、かつ難しいかが語られる。それは「紅海を割るのと同じくらい難しい」のだという。(『Who Gets What』より)
マッチングとは、私たちが人生のなかで、自分が選ぶだけでなく、自分も相手に選ばれなければ得られない多くのものを手に入れる方法を指す経済学用語だ。(『Who Gets What』より)

すれ違うような出会いが本当に難しい状況です。こうした状況の中で、いかにして予想外の出会いの機会を作り立すことができるのか。その出会いをきっかけに、関係性をどのようにして育んでいくことができるのか。そこに、技術は、どう活かすことができるのか。

閉塞感に繋がらない日々のためにも、マージナルな環境をどのように作っていくか。自分の外側の世界と触れる機会を、どのように作っていくか。今夜は、本に、その出会いを求めてみたいと思います。

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