「多様な働き方」を進めているのに、働き方改革で残業が「一律禁止」になるモヤモヤについて。
11月末で、つまり今日で、17年間勤めた電通を退社する。
その日にこんなテーマで日経COMEMOを書くのはどうなんだろう、と思いながら締切日でもあるので筆を取った(noteを立ち上げた)。
明日からは社外取締役とフリーランスになるので、雇用されるキャリアは一旦これで終わり。
誰も管理してくれない、誰も守ってくれないキャリアに変わる。
逆の言い方をすれば、誰にも管理されないし、むしろ誰かを守る側のキャリアに変わる。
始業終業の報告をする義務がなくなり、残業申請する義務がなくなり、22時までに仕事を終える義務がなくなる。
思えば電通でのキャリア後半戦は、こうした義務感との戦いだった。
「結果さえ出していれば自由」
なんて雰囲気はなくなり、どんな仕事でも、どんな社員でも、例外なく、厳しく、等しく、管理対象となった。
(もちろん以前からも管理対象ではあったのだが)
それはもちろん、社会からの要請もあるが、何より社員の健康のためで、経営は本気で労働環境改革に向き合っていたと思う。
「変わらない」なんて書かれることもあるが、私から見たら入社時とはまるで別の会社だ。
おかげで私は健康な身体で、会社を去ることができる(健康診断の結果が少し下がったのは自己責任だとして)。
企業の働き方改革。
それを進めるのが社会からの要請だが、その「やり方」について最後に少しだけ私見を書いておきたいと思った。
今日はそんな話。
■働き方の多様性と尊重
働き方改革の視点として重要視されている1つに、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)がある。
近年は(私がこれから社外取締役として参画する)中小企業にも、その波が押し寄せている。
男性でも、育休を取ること。
女性でも、管理職になること。
性別による機会格差の是正はもちろんのこと、副業や時差出勤、多拠点生活やアルムナイ(退職者)採用など、多様な働き方を認めることもまた、社会からの要請の1つだ。
D&Iの視点を踏まえた働き方改革とは、
・一人一人が多様性(自分との違い)を受け入れ、
・お互いに尊重することによって
・個人の力が最大限発揮できる会社に変わること
それが本質だと思う。
ただ僕がキャリアの後半戦で感じた働き方改革は、それとは少し違った。
例外なく、厳しく、等しく、管理する。
すべては社員の健康のため。
そこに多様性は(ほぼ)なかった。
■均質化による改革でしか、変われないこともある
本当はわかっている。
「そのくらい極端にやらないと変われない」
それが理由であり、それが正しいと思う。
達成すべき目的は「変わること」で、「正しく変わること」は努力目標に過ぎなかった。
社会からの要請もまた「電通(のような会社)が変わること」が最優先事項だったように感じる。
世の中全体としては「働き方の多様化」を要請していたが、当時の報道を見ると「ただし電通は除く」という注釈が付いていたように感じた(個人の見解です)。
そして今、当時の電通と同じように多くの企業が「社会からの要請」で変革を求められている。
企業をドラスティックに変えるには、大鉈を振るう必要がある。その時は、例外や多様性なんて言ってられない。
ただ、企業の変革には次のステップがある。
変わり方を、変えること。
いつまでも大鉈を振るっているわけにはいかない。聖域なき改革は初手に過ぎない。
多様化と均質化。
この2つを繰り返しながら、企業も人も進化していくのだと思う。大切なことは「変わり続ける」ことだ。
私もまた、そのために電通を去る。
だからというわけではないが、電通の改革もまた均質化の次へ移行する頃合いな気がしている(個人の見解です)。
サポートいただけたらグリーンラベルを買います。飲むと筆が進みます。