消費増税負担を上回る負担減も、短期的には非現実的
確かに総務省の統計によれば、携帯通信料の価格は低下傾向にありますが、携帯通信料が家計支出に占める割合は拡大しています。
実際、消費支出に占める移動通信通話使用料の割合は世帯主の年齢階層が若いほど高く、18歳未満人員比率の比較的高い年収450~1000万円世帯で移動通信通話料金割合が平均を上回ります。
このため、移動通信通話料金が引き下げられれば、若年層や子育て世帯への恩恵がより大きくなりますが、移動通信端末の利用率が低い高齢者層への恩恵は少なそうです。
なお、総務省の家計消費状況調査に基づけば、仮に移動通信通話料金が4割安くなると、国民一人当たり2万円強の負担軽減につながりますから、家計全体では2.6兆円程度の負担軽減になることが示唆されます。
一方、次回の消費税率2%引き上げは家計全体で2.2兆円程度の負担にとどまると試算されますから、一律4割値下げとなると、家計部門には消費増税の負担増を上回る恩恵がありますが、その分、通信会社の売り上げが減少しますから、現実的に短期間で四割引き下げることは非現実的といえるでしょう。
携帯料金引き下げ策は、家計支援策として議論を進めるというよりも、移動通信事業者の競争環境の整備を通じて、いかに料金引き下げを図るかという観点で議論を進めるべきといえそうです。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34514530T20C18A8EA2000/