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女性の社外取締役が急増している理由。社外取締役制度の真の狙いは

皆さん、こんにちは。今回は「社外取締役」について書かせていただきます。

コーポレートガバナンス・コードの改訂により、各企業にとって「企業の中核人材における多様性の確保」が重要課題になっています。

女性取締役の登用に二の足を踏んでいる企業が多い中、今増えているのが女性の「社外取締役」の起用です。

主要企業で女性取締役が増え続けている東京証券取引所1部上場企業では1740人と1年前から29%増え、10年連続で過去最多を更新した。国内外の投資家が取締役会に女性や外国人などダイバーシティー(多様性)を求めるようになったのを受け、2社に1社が社外出身の女性を起用している。ただ取締役全体に占める比率は8.8%となお低く、2~4割の欧米勢の背中は遠い
ガバナンス助言会社のプロネッド(東京・港)が7月1日時点で東証1部上場の2186社を集計した。女性の社外取締役は前年同期に比べ30%増の1458人、社内出身の取締役は22%増の282人だった。
女性社外取締役を起用する企業の割合は9ポイントアップの53%となり、10年前に調査を始めてから初めて過半を超えた。2人以上の女性社外取締役がいる企業は20年の1.5倍の262社に増えた。
女性社外取締役が最も多いのはソニーグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、プロトコーポレーションの3社で各4人。3人で積水ハウス、井村屋グループなど41社が続いた。
一方、生え抜きの女性取締役の起用は低調だ。女性の社内取締役がいる企業の割合は1ポイント増の11%にとどまった。1986年の男女雇用機会均等法施行から35年になるが、多くの企業で社内の女性人材が少ない悩みを抱えているとみられる。
女性の経営人材が限られるなか、育成のために各社は知恵を絞る。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は今年、生え抜きの工藤禎子氏をメガバンク初となる女性社内取締役に選任した。1987年入行で3年前からトヨタ自動車の社外取締役に招かれ、外で取締役としての研さんを積んだ。
SMFGは「女性総合職のフロントランナーである同氏の起用は取締役会メンバーの多様性確保の観点から有意義」と説明。工藤氏も「取締役として多様な目をもって貢献したい」と話す。パナソニックの女性幹部がマツダの社外取締役に就いている例もある。
プロネッドの酒井功社長は「役員一歩手前の女性幹部が外に武者修行に出るのは、経営の視野を広げる上で有効」と指摘する。
多様性が企業業績の向上につながるかどうかは、因果関係が必ずしも実証されていないが、機関投資家に大きな影響力をもつ議決権行使助言会社が女性取締役のいない企業のトップ選任に反対推奨を始めている。
コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)も多様性が持続的な成長の推進力になりえるとする。ESG(環境・社会・企業統治)の観点からも、上場企業は女性登用を迫られている

女性の社外取締役で数合わせしている感は否めませんが、社内の人材育成不足が浮き彫りになっている中、今後、各企業でどのように取り組んでいけば良いのか、ポイントを考えてみます。

■なぜ、女性の社外取締役が増えているのか

今年6月の株主総会で新役員体制を発表する企業が増えました。

引用した記事の通り、特に目立つのは「女性取締役」の比率ですが、主に社外取締役に女性を起用しているケースがほとんどです。

理由は明白で、社内で取締役を育てるよりも、手間も時間もかけずに女性比率を上げられるから

短期間で女性取締役比率を上げるには、この方法が有効であることは間違いありませんが、ただ同時に、この状態がいつまでも続いていいわけでは決してないと思います。

コーポレートガバナンス・コードの「取締役会の3分の1以上を独立した社外取締役で構成する」という点と、女性活躍推進法が施行されて「女性管理職30%を目指す」という点を両方解決できる選択肢の一つが“女性の社外取締役”なのですが、この「数合わせ」の考え方から脱却しない限り、本来の目的の「経営の多様性」は到底実現しないと言えるでしょう

当然、取締役には相応のスキルが求められるわけで、女性であれば誰でもいいわけではありません。「適任者がいない」という声はどの企業からも聞こえてきそうですが、前例主義を断ち切り、今から社内人材育成に力を入れても全く遅くはないはずです。誰をどのように抜擢し、育て、どのように経験を積んでもらうのか。

今こそ各企業の努力が問われていると思います。


■社外取締役の多様化

社外取締役を務める人材は、どんどん多様化しています。

・経営のエキスパートが就任するケース
・何らかの専門領域でキャリアを積んだ人が就任するケース
・他の企業で勤務しながら、副業として就任するケース
・ミドル・シニア層のセカンドキャリアとして就任するケース
・起業家のパラレルキャリアとして就任するケース

多様化し始めているのは、圧倒的に社外取締役が不足しているからに他なりません。プライム市場への移行においては、独立した社外取締役を取締役全体の3分の1以上選任しなければいけませんが、現在、約1000人近くが不足するのではないかと予測されているようです。

従来は、親会社の元重役、弁護士、公認会計士や税理士、ベンチャーキャピタルからの出向者などを社外取締役に招致するケースが多く、社内で昇進して取締役に就任する常勤取締役とは、役割や性質が全く異なっていました
しかし今後は、より多くの社外取締役を必要する企業が増えていくため、上記に記載したように、多様な人材が社外取締役として活躍するようになると思います。


■社外取締役を起用するメリット

改めて、社外取締役を登用するメリットを以下の通り記載します。

・コーポレート・ガバナンスの徹底に役立つ
・経営の透明性や公正性が向上する
・経営層の視点を多様化させられる
・経営層の視点に専門性を持たせられる
・社外からの有益な知見を得ることができる
・経営層の相互監視を促進できる

など、ガバナンス向上の観点からもメリットは大きいです。

もしデメリットがあるとするならば、取締役会における議論の活性化が期待できる一方で、それを自社の経営に実際に活かしていかなければならないため、意見を吸い上げ、それを取り纏めて是々非々で判断し、経営に反映させることが必要不可欠になる点でしょうか。(一連の流れには技量もリーダーシップも必要です。)様々な視点で意見をもらっても、結局それを活かそうとしなければ意味がないのです。
また、時には、経営者にとっては耳の痛い指摘もあるかもしれませんが、それらにしっかりと耳を傾け、受け止める必要も出てきます。

■社外取締役の役割とその変化

取締役会の位置づけも年々変化しています。

※以下、引用。
以前は、社内取締役を中心に専ら業務執行の意思決定を行うマネジメント・ボード型という形態でした。それが、社外取締役を導入し、その知見をもとに指南をこうアドバイザリー・ボード型を経て社外取締役の監督機能が期待されるモニタリング・ボード型への移行が進んでいます。

各企業にはそれぞれの歴史や文化や風土があり、それによって発展してきた経緯を考えれば、一概にマネジメント・ボード型の経営体制が問題だと思いませんし、モニタリング・ボード型がすぐに欧米のように日本でもマッチするかも分かりません。

ただ、独立した社外取締役が監督機能として入り、様々な視点や指摘を入れていただくことで、間違いなく今まで以上に透明性高く公正で、かつ多面的な検討を経た、経営の意思決定につながると思います。

今後の日本企業が変化・発展していく過程において、投資家の信任を得るためにも外部の視点を入れ、社内のしがらみにとらわれず専門性を持ち、時には厳しい指摘も行っていく社外取締役の役割は、ますます重要になっていくと思います。



話を元に戻しますが、これまで述べてきた通り、社外取締役の役割は非常に大きく、ただ女性を入れればいいわけでも、ただ著名人を招致すればいいわけでもありません。

性別や属性、社会的な地位や名声、または個人的な人脈の範囲で選出するのではなく、「企業価値向上に貢献してくれる人材かどうか」で選ぶ必要があります

個人的には、企業における重要なポジションへの女性登用を是非とも進めていきたい考えは強いですが、本来の目的通りの社外取締役制度の機能のさせ方で、日本企業の持続的発展が図られることを期待します。


#日経COMEMO #NIKKEI

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