判断や意思決定は、準備が9割
コロナ禍は多くの人の日常に大きな変化をもたらしました。情報の非対称性が無くなっていき、変化が激しい社会において判断や意思決定の精度を高めていくことの重要性が大きくなっています。普段から私が経営者として判断する上で大切にしている事を雑感レベルですが、まとめてみたいと思います。
最悪を常に想定する、徹底的なリスク志向
私自身はリーダーとしては保守的な方だと思います。
意思決定の前提としてはいつも一番最悪なことを想定しいます。それが起こっても何とか生き残れるということを第一に考えて、経営しています。
経営者としてはかなりリスク思考だと思いますし、だから大胆ではないと思っています。
例えばコロナみたいなことが起こって売り上げが仮にゼロになって、それが何ヵ月続きましたみたいな想定をするわけです。ずっと売れないという状態になった時に、その時でもキャッシュがこのくらい出ていくから、まずコストの蛇口を最低限止めるには何のコストを削れるかの順番を決めておきます。次に銀行にいくらくらい借入しとけばこのくらいは持つななど、最悪のシナリオをめちゃくちゃ考える方なんです。
完全なリスク思考で、意思決定のベースにはそれがまずあります。
その上で、決断する時でいうと大事にしていることがあります。
それは必ず物事にはリット・デメリット両方あり、100%メリットだけのことはそうそう無いということです。
従って、51%以上メリットがあることをとるように決断します。
しかしその時に忘れていけないことは、51%メリットがあったとしても、逆にいえば49%はデメリットとあるということです。何を決断するにも、どんな判断や意思決定にも必ずデメリットになることがあるという視点は大切です。
その視点に立ったときに大切なことは、デメリットをいかにヘッジしておくか。Aという意思決定をしたときにBというデメリットが出た時に、そのBというデメリットをちゃんとケアしながらAを進めていくという考え方です。
常にリスク志向で、49%のデメリット側にも意識をもってヘッジすることで最悪のシナリオを回避できると思います。
撤退ラインは決めておく
次に客観的な指標をもつことを大切にしています。
Minimalの社外取締役の山口に事業を始める時にもらった最初のアドバイスが、「撤退ラインを決めておけ」と言うことでした。
これは今でも私の経営の指針の一つになっています。
意思決定する際に、自分の思い入れも強くなったり、時間やお金などを投資していけばいくほど、人は正常で冷静な判断が難しくなると思います。思い入れが強すぎてピボットのタイミングを逸してしまい、撤退するラインを超えしまい、取り返しのつかないことになって失敗する事例は世の中にたくさんあると思いますし、その気持ちがとてもよく理解できます。
だからこそ、何かを意思決定する際の、何もないうちに、冷静に見て、撤退する客観的なラインを指標として決めておくことが大切だと思います。
事業が一番わかりやすいかもしれません。
例えばある新規事業で、赤字が何年何ヶ月連続だったら、投資額や状況がどうなっていても、有無を言わさず撤退すると決めておく。たとえあと数ヶ月続けたらV字回復するかもしれなかったとしてもです。
要は何が大事かというと、冷静に自分たちの状態を見るということができなくなる時に、冷静に考えることができる指標を置いておくのはすごく大事と言うことです。
だから何をやるときにも、一番悪くなったときに、なるべくわかりやすい指標を自分の中に置いておいて、それを見て「ここまでいくとヤバいな」と思ったら振り子を変える。そこはすごく気をつけてやっています。
判断の精度は役割とは比例しない事を肝に銘じる
私は社長で、判断や意思決定をする立場なんですけど、絶対に勘違いしていけないのは、別に社長はただ役割や役職であって、社長になったから人間として能力が上がったり、判断の精度が高くなるわけではないと言うことです。
社長になることと、判断の精度は分けて考えないといけません。
だからこそ、準備は大切で判断するための客観的なファクトや想定シナリオをきちんと考えておくことが精度を上げます。精度の高い判断するための判断軸と優先順位をきちんと考えて決める事が大事です。
正直に、Minimalも私が意思決定していなかったら現時点でもっとスケールしてると思うことも多々あります(苦笑)
私の判断の精度が低いことだったり、スケールよりもものづくりの練度を優先するという判断軸だったことが起因しています。今思えばもしかしたらもっと簡単にスケールして今の規模よりも大きな企業になれてるはずなんじゃないかと思うこと、めちゃくちゃあります。もちろんその判断によって得たこともたくさんあるので後悔をしているわけではありませんが、過去に戻って今の私が判断したら、よリ精度を高く出来た事もあるかもしれません。
人からのアドバイスを積極的にもらえる環境を作る
判断の精度を高めるために大切だと思うことは、人からアドバイスをもらえる環境を作っておくことが大きいと思います。
前述の山口からのアドバイスもそうです。
私がもらったアドバイス例として、いろいろあります。
一つ目として、カカオ産地に年間4ヵ月行く事です。普通に考えると経営者が電波も通じない赤道直下の国に年4ヶ月も行くというなかなか判断はできません。
しかし、これは丸山珈琲代表の丸山健太郎さんのアドバイスでした。丸山さんがスペシャルティーコーヒーの世界で見てきた20年間の学びからのアドバイスで、スペシャルティーコーヒーが世界で進化し、市場が広がったときに、その変化は産地側から変わっていくっていうところに答えがあったという経験から、「山下君も産地に行った方がいいよ」というアドバイスを頂きました。そこから私は本気で産地に行くという判断をしています。
二つ目は、コロナが起こった直後です。この時もある経営者の方に、これはもう未曽有の形になるから早めに、今までとは違う形でリスクヘッジをしたほうが良いというアドバイスを頂いて、そのおかげでいち早くリスクに備える体制つくりに舵を切ることができました。
最終的には色んな人のアドバイスを聞きながら自分の頭で決めることだと思います。しかし、最終的な判断の精度を上げるために、アドバイスを頂ける環境をきちんと作っておけるかというのは大きい。
性格的な部分もあると思います。私はお調子者ですぐ失敗すると言うことをたくさんしてきたので、自分が能力が高く無いことを自覚しています。だから色んな人の話を聞いた方がいいなというタイプと言うことも大きいと思います。
私は知り合いが多い方ではないですが、ありがたいことに、それぞれの分野に分けて、定期的にアドバイスをもらえる方がいたりします。やっぱりそれぞれの分野にすごく深い情報を持っている人たちとつながり、尊敬し、そういう人たちの経験則を聞けるという環境があるとないとでは、意思決定や判断においての精度が大分変わってくると思います。メンターを持ちなさいと言われるのはそういうことなのかと思います。
そういう意味で、機会があれば自分とは違う感性や知識をもっている方たちで、物事を突き詰めている人たちの話を聞くというのは、すごく大切にしています。
メモをとる習慣をつける
アドバイスがもらえる環境が出来た後は、何気ない会話をメモすることもとても大切だと思います。
先日、僕が尊敬する二人の経営者の方々とそれぞれお話する機会がありました。そういう方々と話をしていると、何気ない会話にぽろっと出てくる言葉が、あとで困ったときや判断を迫られたときにとても活きる事がすごく多いのです。その時は何も考えず聞いていたことがあるシチュエーションの時にドンピシャのアドバイスになります。
何か少しでもピンときたことは必ずメモしておき、定期的に見返すようにしています。
例えば先日のメモを見返すと、「敵なき者は味方なし」と教えてもらいました。意味としては「嫌われることを気にするな」「敵がいない奴は味方がいないんだ」と言うことです。それが私の判断軸として合う・合わないというのは最終的にきちんとジャッジすればいいんですけど、なぜそうおっしゃったのかという理由たエピソードみたいなものがあって、それも含めてメモしています。そうするといつかの時にそういう言葉ってふと降りてくるんですよね。面白いのがたくさんあります。
コロナ禍の状況で色々もらったアドバイスの例を挙げると、「コロナだから敢えてこれまでのやり方を変えないようにしている」はとても印象に残っています。
「コロナでも今まで考えきってやりきってきたことが通用するかを見るというのが大事。なぜなら、コロナ禍と言うことは関係なく『これしかない』という手をうち続けているはずだから、変える必要は無い」と仰っていました。
すごいですよね。残念ながら私はコロナ禍でたくさんの変えるという意思決定をしたな、と思いながらお聞きしていました(笑)。
やっぱり何十年も経営してきている人達って、超えてきているものの経験値が違うし、同じ物事があっても見方が違います。だからそういう人達の話は全部勉強になります。
覧古考新
覧古考新という言葉を大切にしています。
*覧古考新:古くから学んで、今の自分の状況や現代の状況・問題に当てはめて、自分の頭で考え直してみるという意味。
判断の精度を上げるときに、必ず世の中に類似事例があったりしますし、これまで経験したことから抽象化すると学べることがよくあります。経験者からのアドバイスもその一種だと思います。
覧古考新して、自分の中に判断の引き出しをたくさん貯めておくことが普段からできると、決定するときにそんなに迷わなくなっていくと思います。でもこれは程度の問題で、私は毎回判断する際にとても迷っているのですが、昔に比べたら迷う程度が少し下がったかなと思います。
過去に判断や意思決定したことで、良かった・悪かったというのを検証して、未来のために改善してくのが大事だと思います。
三角形の二辺は一辺より短い
前職の言葉で「三角形の二辺は一辺より短い」という言葉があります。
どう考えても三角形の二辺は一辺より長いのですが、これはもの例えです。
意味の解説をします。
例えばA地点からB地点に行きたいとします。最短距離は直線を行く事です。多くの人はA地点からB地点に行こうとしたときに、この直線の最短距離を探すわけです。そして、だいたいが100%安全な道が見つかるまで同じ場所から動かなくなるわけです。恐らくB地点に行こうと考えてすぐに「こっちの方向だ」だと60%くらいの精度でわかると思います。でも失敗が怖いので、その精度を70%、80%、90%にするという、微差を詰めて失敗しないということにものすごく時間を使っています。
でも実は60%の段階で、とりあえず判断や意思決定して歩き出してみた結果としてC地点に着いたとします。C地点で「実はズレてた」とわかって、修正をした方が結果としてB地点に早く着く事が判断や意思決定の場合良くあります。
つまり、最短ルート(三角形の一辺)の正解を探してずっと動かないよりも、60%くらいで動いてみて、動いた結果ずれを修正した方(三角形の二辺)が方が到達点に着くのが早くなるという意味の言葉です。
リスク志向が大事だと言いましたが、リスクを恐れて動かないと判断が遅れ失敗の確率が高まる事が多々あります。
たしかに判断や意思決定の精度を100%にしたいですが、100%正解が分かる意思決定ができるのであれば、世の中全員が成功者になってるわけです。おわかりの通り、残念ながらそんなことはめったにありません。
走りながら考え判断する、考えながら走り判断を修正するということが大事だと思います。
補足ですが、60%まで考えることは絶対に大事です。そこを疎かにして何も考えずに動いて、目的地と逆に行っちゃったら遠回りになります。だから60%までは考えて、方向を見定めることはすごく重要だと思います。
そして考えてたら、一旦動いてみて、動いた結果分かったことからまた次の道を探すことが大事です。私は意思決定をするときに、考えてリスクをヘッジした上で、「このリスクをヘッジしておけばよほど大事にはならないはずだ」とわかった上で、まずは動いてみます。
例えばEC販売を強化すると意思決定して、まずは動いてみましょうとなった時に、単純にいえば広告をやりましょうという話になります。でも動いてみて分析してみると、F1顧客の水漏れが激しいという事が分かって、広告でバンバン新規集客する前にF1からF2への転換率から先に直そうという話になるかもしれません。
例えばデジタルマーケしてものを売ろうとなった時に、実は物流がめちゃくちゃ大事です。在庫の見える化ができてないからまずはシステムを入れたほうが良いじゃんという話になったりします。全体像を描いて全部精緻にこういう順番でやりましょうという事もできたかもしれないですけど、まあとりあえずこっちの方向だねと動いてみた結果、この順番でやったほうが良いという事がわかって最終的にマップが整理される。最初に頭で考えていた時間より、動いてみたほうが早かったという話は自社の例でもよくあります。
最後の1割は感性を信じる
判断や意思決定で大切にしている事として、矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、9割まではきちんと論理を積み上げた上で、残りの1割はその奥にある感性を大事にして最後の意思決定するということです。
最後は自分の直感や感性を信じることです。
判断の準備のために左脳で論理的に考えるのはとても大切な事です。
本末転倒な事を言っているように聞こえるかもしれませんが、論理的に考えて左という結論が出てるんだけど、そこまで考えても「でもなんとなく右なんじゃないか」と思うことがあったりします。
それは直感というか感性というか。
左脳で考えて誰もがイエスと言えることのさらに奥に、でも「実はこっちではないか」という最後の感性とか、直感みたいなものを意思決定するときには大切にしています。
論理の奥に潜む感性を最後は信じる、という余白を持って判断をしています。
以上が私が判断をするために日頃から習慣づけていることです。
偉そうに書きましたが、やはりいつも判断するときは怖いですし、迷ってばかりです。どんな事でも100%迷わず判断できるという自分をイメージすることはできませんが、後悔の無い判断をきちんとできるようにこれからも精進していきたいと思います。
Minimalの商品・SNS
そんな私の経営者としての判断の積み重ねの結果が今のMinimalです(笑)
母の日は今年は会えない方も多いかと思います。是非感謝の気持ちを億って下さい。
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