ディープフェイクの普及が進む中国。顔データ入りIDは10円以下で売買され悪用が心配
日本のニュースをチェックしていたら、ディープフェイクを使って動画をアップした人が逮捕されたという事件があったことを知りました。
正直「何を今さら...」という感じがしました。海外でもこの手の動画は溢れているように思います。このニュースが話題だったからか、一年以上前に投稿した「中国のディープフェイクアプリZAOの騒動」についてのnoteの閲覧数が急上昇していました。
画像処理や人工知能技術の発展で、中国ではディープフェイク動画アプリは普及するステージにあります。今やスマホでスワイプするだけで誰でも顔を入れ替えた動画を簡単に作れる時代、先日Weiboでこんな投稿が注目を集めました↓
「 #顔データ入りのID情報が1枚あたり0 .5元(たった10円以下)で売られています#」
(動画ではなくても)写真さえあれば、人工知能技術を使って写真を分析し、うなずきや、首振り、瞬き、会話の動作のシミュレーションを行い精巧な動画を作成することが可能。そして非常に安価で売買されていると報道されています。
この安い値段で売買された情報が加工され悪用されたらやばいことになる可能性があります。悪質な動画が投稿される問題や詐欺行為への利用が指摘され盛んに議論されています。
「北京互联网法院(北京インターネット裁判所)」のデータによると、2018年9月9日から2020年8月31日までの間に、インターネットを利用した人格権侵害の紛争が合計6,284件もあり、そのうちネット上での肖像権侵害に関わるものは4,109件で約65.4%を占めているとのこと。 ネットでの肖像権の侵害がどんどん増加してきているのです。
政府機関も問題視していて、「侵害証拠のタイムリーな収集と保存に注力する」旨を発表しています。でも実際には多くの場合で、タイムリーに発見し対応することは非常に困難と言われています。手軽に作成できるうえに、アップされた動画がネット上で次々コピーとシェアされていくので当然ですね。
(↑それでも中国のオンライン裁判システムは他国よりずっと発展していると思います)
また個人的にこれより怖いのは詐欺への利用の可能性についてです。最近では多くの金融機関で顔認証ログインやフェイススワイプ決済などのサービスが使われています。精巧なディープフェイク動画であればこれらの仕組みを突破できてしまうのかとても不安です。
さらに、情報の管理も心配です。去年、深センの顔認証の企業から250万人分以上のIDカード情報や顔認証画像、GPS位置情報などのデータ流出事件が発生したことは話題となりました。欧州の企業や韓国企業からも顔認証情報などの大規模な情報漏洩事件が度々起きていますよね。
先日北京で行われた討論会でもこの問題が議論されました。その中で印象的なものが
“人脸数据一旦泄露,就是终身泄露”
意味は「顔のデータは一度の流出が一生モノだよ」ということ。たしかに連絡先やPWは変更が可能ですが顔や生体データは変えられない。
便利なサービスを利用するにはある程度の個人情報を登録するのは仕方がないのですが、今後もAIによるフェイク技術はどんどん進歩して悪用も増えていくでしょう。中国はもちろん、日本の対応にも注目しています。
(参考資料)
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