ECの新時代!ブランドは「○○戦」が求められる時代へ…
こんにちは!下着会社でブランドディレクターをしているこじみくです。今日は私のお仕事と深い関わりのある「ECビジネス」について、これからの動向をお話したいと思います。
25歳で「D2C」ブランドを立ち上げる
私が初めてECを仕事にしたのは2016年の25歳の時でした。自分が欲しいと思う下着を開発して販売してみたいという想いから、会社を辞めて未経験で下着ブランドを立ち上げたのです。広告費の予算もなかったため最初はSNSを通じて発信し、公式サイトでの販売を行っていました。
当時、このビジネスモデルは「D2C」と呼ばれ、「消費者に直接つながる」という意味のDirect to Consumerの略語として広まっていました。
アメリカのシリコンバレーを中心に始まったD2Cは、モールや広告に依存せず、SNSと公式サイトを軸にブランドとファンを直接つなぐ画期的な販売方法としてEC業界に大きな衝撃を与えました。
私はD2Cという言葉すらも知らずに起業し、SNSでひたむきに商品の発信を行った結果、年商約1億円まで公式サイトで売り上げを作ることができました。現在は、さらなるマーケティングの修行をするべく、ECモールでの販売を得意とする下着ブランドでブランドプロデューサーとして働いています。
ECの時代が確実に変わってきている!?
数年前まで脚光を浴びていたD2Cですが、ECの世界で働いていると現在は時代の流れが大きく変わっていることを肌で感じることが多いです。
私の個人の考えではD2Cモデルだけでは厳しい時代に突入しているのでは?と感じることもあるぐらいです。
少しECの歴史を振り返ると…
公式サイト→モール(Amazonや楽天)→単品通販モデル→D2C
と時代と共にビジネスモデルに変化がありました。
公式サイトはサイトを作っただけでは集客が難しく、そこに大規模なユーザーを集めた場所に出店できるAmazonや楽天で誕生しました。しかし、それも出店数が増えると埋もれてしまうため、ネット広告から集客を図り、利益率の高いアイテムを販売する単品通販モデルが誕生…そしてさらに広告に依存しないSNSを中心としたD2Cが誕生したわけです。
ただこのD2Cモデルもある理由から時代が変わろうとしていています。
時代は○○戦の時代へ
今の時代に求められるECの形、現在私たちが掲げているビジョン
それは「総力戦」です。もはやこれまでのECモデルの歴史を辿るような…一つだけの戦略に依存しない形が求められ、さらに早いペースでブランドを伸ばせると考えています。
例を挙げると、私が運営しているチャーメイクボディという下着ブランドはAmazon特化のブランドで半年前まで公式通販もない形態でした。SNSは運用しているものの最適化がとられておらず、Amazonでは競合も多い中で課題を抱えていました。そこで私がジョインをし、まずは公式サイト、次にSNSとブランディングの整備を行っていきました。
「そんなことが売上にすぐ影響するの?」と思われがちですが、その結果、公式サイトの売上は毎月右肩上がりに伸びていき、SNSの効果もあってAmazonの売上は過去最高の成果となりました。
つまり、複数のプラットフォームの最適化を図ることで相乗効果により短期間でも売上に大きく反映させることができるのです。
ヒントはSNS疲れ…多すぎる情報
D2Cの風向きが変わってきた理由の一つとしてSNSでの情報量が増えすぎているのも考えられます。以前は欲しいアイテムを調べるときに、SNSでリアルな生の声やブランドの発信に辿り着ける便利さがありましたが、とにかくSNS内でも情報が多くなり選択が難しいという状況になっています。
無印良品はこの「SNS疲れ」を逆手に取り、一定のクオリティとコストパフォーマンスで安心感のある化粧品を展開することで大きな成功を収めています。
化粧品もEC化が進む中で、店舗ビジネスの無印良品のコスメが売上を伸ばしているというのもD2Cの難しさを物語っているのでは?と感じました。
SNSを中心にした認知拡大ではどうしてもこの多すぎる情報量に立ち向かっていかないといけなくなるため、短期で成果を出す難しさがあります。
さらに、ネット広告の費用も競合が増えることで年々上がっていて、広告費をかけてもフォロワーや認知度を上げにくいという壁もあります。
ECモールの利点は?ポップアップをやる意味ある?
私たちのブランドはECモールが一番得意なので、そこでの利点を少しお話すすると、日本には「ECモールでしか買わない」という顧客層が一定数存在していることです。やはり公式サイトで注文登録までつなげるのは手間や信頼からの難しさがあり、特に50代以上はAmazonや楽天などのECモール専門でネットショッピングを楽しんでいる層も少なくありません。
そのため、D2C戦略を行う企業も出店は大きなメリットがあると思っています。さらにはキーワード流入からの購入も公式サイトに比べて一定の数字が見込めます。
最後にポップアップは私たちが今後挑戦したいことの一つですが、ネットに比べて数倍…数十倍の顧客体験ができるという意味で「最大のブランディング」だと思っています。
「シャネル」や「ルイヴィトン」など、ブランドをイメージした時にアイテムよりも「売り場」の映像が頭に浮かぶことはないでしょうか?
ネットで実現できる世界観は二次元だけですが、ポップアップの場合は空間や接客、コミュニケーションなど多角的にファンの方と接点を持つことができます。ファンの方と直接交流し、熱量を高めて、それがSNSの拡散につながり、ものづくりにもいい影響を及ぼす…このサイクルがあってさらにブランドを押し上げていくと思っています。
これからの時代に大事なのは総力戦の中から生まれる相乗効果と循環サイクル…情報過多の時代にいかに熱くユーザーと繋がれるかが鍵になってくるのかもしれません。
小島 未紅
1991年東京都出身。株式会社iiy執行役員。新卒で大手IT企業に入社。エンジニアとして働き3年目に下着ブランドの立ち上げを決意し、2016年に起業。運営ブランドBELLE MACARONは女性視点の心地よさとデザイン性をもつ「24hブラ」がSNSで共感を集め、最高日商2000万円を記録。ブランド体制などをきっかけに2024年にブランドクローズを迎え、現在は下着ブランド「CHARM MAKE BODY」のブランドディレクターに就任。