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やはりお荷物となるのでは?南欧のリスク

ドイツ、フランスの譲歩もあり、南欧にはポジティブな結果となった欧州復興基金が、このところ、金融市場で欧州リスクを軽減化させてきた。しかし、実態を見ると、南欧リスクは依然大きく、懸念が残る。イタリアを例にとる。

イタリアは財政刺激策として、2020年の推定GDPの約5%程度の支出を実行している。これはフランスやスペインと同程度だが、ドイツの半分と総合的効果としては微妙。そこへ、追加で250億ユーロの刺激策が提示されたところである。

キャッシュレス化に向けた取り組みの推進などにも費用計上し、前向きな対策も取っているが、やはり、その手前で打撃が大きくなり過ぎた企業や家計に資金が回るのか、という問題がなお残っていることに注意が必要になる。たとえば、7月13日から18週間(11月14日まで)の一時帰休制度が利用できることになっているが、不十分かもしれない不安はすでに二つある。第一に、ドイツやフランスのそれが24か月の延長となっているのに対し、イタリアの一時帰休制度は18週間と短いこと。第二に、収益が大幅に減少したことを証明できる企業が対象と、限定的な適用となること、である。

様々な対策があるうちに経済の回復がしっかりとすればよいのだが、18週間やそこらで経済回復の底入れがあるとは到底思えない。実質GDPは2020年前半で17%程度と大きく落ち込んだことから、回復は多少なりともしてこようが、新型ウイルスの第二波、第三波により再びの悪化も見ておくべきシナリオである今、楽観的過ぎる見方は危険に見える。そうなるとイタリアは追加的な景気刺激策が必要になる可能性が大きい。復興基金からの770億ユーロの助成金はもとより、融資も受けながら、経済立て直しの策が必要となる。

多くの救済金を出しても立ち直れなかった国が出て来た場合に、EUとしての連携が負担となり、不満につながるリスクは更に大きくなってしまうであろう。現状のイタリアを含めた南欧の様子を見ていると、大々的に打ち出すことが出来たEU復興基金を維持するための各国の苦労が今から見え隠れしている気がしてならない。

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