日本を元気にするために。
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日本を元気にするために。

伊藤羊一 Voicyパーソナリティ

こちらの記事を読みながら、いったい何が僕たちに欠けているのか、今更ながらではあるが、考えてみることにした。

この記事はこんな冒頭の表現に始まる。

1989年末に日経平均株価が3万8915円の史上最高値をつけて今年で33年。

僕は日経平均株価が市場最高値をつけた1989年の大納会から3ヶ月後、1990年4月に日本興業銀行、という銀行に入って社会人生活をスタートした。現在までの間に、興銀はなくなってしまったし、僕が働いている時間はほぼそのまんま、「失われた33年」になってしまった。

こちらのグラフ(P2)を見れば一目瞭然だが、それまで、敗戦からの復興や特需、バブル景気など50年間かけて、GDPでは1997年で、米国の半分くらいの規模で第2位であったものの、現在は米国、中国に次ぐ第3位、しかもトップ米国の1/4、第2位中国の1/3くらいと、トップ2国と大きく水を開けられてしまった。

かつ、成長率(P3)でみるとイギリス、イタリア、カナダ、フランス、ドイツ、韓国などにも大きく劣っている。世界における相対的地位は凄まじく後退しているということだ。

これは多くの人が認識していることだ。なぜ日本は成長しないのか、様々な分析もされている。ここで僕がそんなに新しくもなく、深くもない考察をして日本はこれだからやばいのだ!と叫んだところであまり付加価値はないかもしれない。

それでもやばい。やばすぎる。
だから、言わざるをえない。

明確に比較したことはないが、世界の中でも、日本社会にいる人たち(主に日本人)は勤勉な方なのだ、と思う。だからこそ、戦後の復興からの高度経済成長があったわけで。

ところが現状のこの体たらく。自分たちの世代では、このやばさを実感しないうちに死んでいくだろう。ただ、自分たちの子ども世代、孫世代になったときに、この停滞は実感を持って味わうことになる。

ここまでひどいとなると、明らかに原因があるはずだ。
個人的に、思うところを並べてみる。

1)【国】地盤沈下している
大前提として、1980年台終盤をピークに人口が減少し始めている。特に経済活動の中心を担う生産年齢人口の減少は、総人口の減少より激しい。こうした状況に陥っているのは、日本以外だと、韓国くらいだ(つまり、韓国が大きく成長していることを考えると、地盤沈下は言い訳にしかならない)。


2)【シニア世代】成功体験が忘れられない
こちらのP1、日本のGDPがどう推移したかのグラフを見ればわかりやすいが、バブル期前後(実際には数年ズレはあるが)で、大きく日本の成長カーブのトレンドは異なる。その境目が私(54歳)世代となる。私より先輩方(すなわち経済界の重鎮たち)世代では大きく成長し、それ以降は「失われた33年」。


成長してきたのは環境、状況のおかげではなく、自分たちが優れていたから、と考えがちで、抜本的に何かを変えようとしない。人間、年を取れば取るほど変化しづらい。だから、シニア・ミドル世代は「アンラーニング」が不可欠だし、もっと言えば世代交代をとっとと進めなければならない。

3)【人材】このままでいいと思ってチャレンジしない、鍛えない人が多い

最近、リスキリング、という言葉が流行っているが、そもそも、しっかりと鍛えて、成長して活躍しよう、と思うビジネスパーソンがどのくらいいるだろうか。大学受験はそこそこに暗記中心の勉強をする(社会の役に立たない)くらいで、その後、自己研鑽にどのくらい金と時間をかけるのか。なんとなく、ぬるま湯で安定しており、会社で一生懸命仕事をしていればなんとかなる、という社会人は多いのではなかろうか。

はたらくにあたり、より高いレイヤーで活躍したい、という意識がなく、「まあ、今の場所で安定して定年まで働けばいいや」などととうの昔に衰退した「終身雇用」という考え方が残っていると勘違いしているところがベースにあるように思う。しかし僕がいた興銀が属していた「長期信用銀行」はフィールドそのものが消滅した。「興銀が潰れる時は日本経済が潰れる時だ」などという言葉も何回も聞いたが、完全に誤りだった。ここは本当に、みな、目を覚ますべきだ。会社が潰れるかどうかは個別ケースなのでわからない。が、「今の会社にいれば安泰だ」などという世界は、もう存在しないのである。

4)【土壌】チャレンジが潰されやすい
「どうせ無理」と人のチャレンジを潰す傾向は、日本では目立つ。ものすごくざっくりした言い方で恐縮だが、やっぱりこのYouTube動画にあるようなことって、よく目にするし、耳にする。それを上司がやったり、親がやったりする。

新しいものが潰されやすい環境は、こうした統計でも見て取れる。

もちろん2012年くらいから、多くのスタートアップが生まれ、成長し、日本経済の中で相応のインパクトを生んでいるし、以前と比べると起業のしやすさは格段に改善したと言われるが、まだまだ、大学教育界に身を投じて観察してみると、「チャレンジしようぜ!」という空気は「ほとんどない」というのが実感である。結果、新しいものがそもそも生まれづらい。

僕が学部長として2021年4月にスタートした「武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)」では、教員や学生がみな、学生のチャレンジを茶化さない。「どうせ無理」と言わない。この日本社会の「どうせ無理症候群」を撲滅しようという働きかけなのだが、これまでの1年弱で、簡単に撲滅できることを実感している。「どうせ無理」と言わず、「いいねいいね!」と言うだけだ。

5)【組織】議論で、決められない、捨てられない
そんな中、「この状況はまずい!どうにかせねば」と発破をかけ、抜本的な変革をしようとする会社も多いだろう。しかし現実は、日本人は「議論が苦手」で決められないのである。スキルとしてのディスカッションの作法を知らない、ということもあるが、そもそもルールの中で参加メンバーの中で、フラットに意見をたたかわせることが苦手である。それより、社内のポジションを気にしがちだ。

これを読んでいる人の中でも、「偉い人に忖度して、しっかりとした議論にならなかった会議」の記憶はないだろうか。そうなると、いい結論が生まれるはずもない。が、結構そこかしこで見られる光景だと考える。

そもそも、マネジメント職は「機能」でしかないことを認識すべきである。「上司」「上役」などと呼ぶから、マネージャーは「えらい人」であり、言うことを聞かねばならない、と勘違いしている人が猛烈に多い。それは全く違うのだ。正しい認識をして、フラットな議論の土壌を作ろう。


6)【会社】戦略思考がない。
議論が盛り上がらないのは、他にも理由がある。日本の会社、組織はしっかりとした骨組み、構想、ストーリー、戦略がないことが多い。日本人は圧倒的に苦手なのだ、と思う。ビジネスアーキテクチャーとも言われる部分だ。ここを会社、組織として明確に持っていなければ、議論も、何にしたがって行えばよいかわからない。

日本企業は、いいものを安く作れば売れる、という時代に成功した。だが、今は違う。プラットフォームをつくることが必要だ。既存ビジネスをディスラプトすることが必要だ。顧客の本当の価値を追求するプロダクツをつくることが必要だ。

それを一時点の断面で捉えるのではなく、ストーリーで考えて、かつ、統合されたビジネスの構造全体で捉える必要がある(これを広義の「戦略思考」と呼ぶ)。これが圧倒的に苦手なのだ。

日本にAppleやGoogleが生まれないのはなぜか、とよく言われるが、ここが欠如しているのだろう。

7)【全部】こういう国にしたい、というビジョン/夢/志がない
で、なぜ戦略思考が欠けているかは、スキルとしての戦略思考で俯瞰することも大事だが、何より僕らに必要なのは、この国をこういう国にしたい、というビジョン/夢/志なのではなかろうか。

会社の仲間や、学校の同級生と、「日本をこうしたい」「会社をこうしたい」といつも語っているだろうか。「政治の話はあまりしない〜」とか「未来の夢のような話より、現実をしっかり踏み固めることが大事」とかしていないだろうか。そしてそもそも、将来に対してポジティブだろうか。

ここが全てのスタートであるような気がする。

稚拙ながらも、こう一気に書いてみることで、日本の抱える課題は深刻だが、どうにかなるような気がしてきた。

特に3)から7)は、僕が今取り組んでいる大学教育、社会人教育で変えられることだということに気づいた。だから僕は、教育でこの問題を深掘りし、変えていくチャレンジをしよう、と改めて思った。

頑張ろう。

(photo by Aflo)

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伊藤羊一 Voicyパーソナリティ
Zアカデミア学長(Zホールディングス)/武蔵野大学アントプレナーシップ学部長(武蔵野EMC,2021年4月開設)/株式会社ウェイウェイ代表。著書53万部超の「1分で話せ」(2もあり)「0秒で動け」「1行書くだけ日記」「ブレイクセルフ」「FREE FLAT FUN」など。