これからの働き方、すなわち情報を制する方法

これからの働き方という話題では、
◆キャリア:終身雇用、転職、起業など
◆雇用形態:正社員、契約社員、派遣社員、フリーランスなど
◆時間:フレックス、裁量労働、時短、産休・育休など
◆場所:オフィスで固定席、フリーアドレス、リモートワーク、在宅勤務など
といったあたりがテーマになることが多い。

今日は、一つ新しい切り口を提案したい。「情報の流れ」だ。

情報とは何か。広辞苑を見てみよう。

①ある事柄についてのしらせ。
②判断を下したり行動を起こしたりするために必要な、種々の媒体を介しての知識。
③システムが働くための指令や信号。

私たちは、仕事で必ず、情報をなんらか受け取り、作ったり加工し、伝えることをしている。事務職やプロフェッショナルに限らず、多くの仕事で少なからず情報を扱っている。働くことは、情報のやりとりに他ならない。顧客のニーズを聞き、チーム内で意見を交換し、組織内で承認を得る。こうした情報の流れが変われば、働き方は変わるだろう。

例えば、これまでの社会は全体に「ヒエラルキー」構造になっていた。官庁が上で民間が下。大企業が上で中小企業が下。組織内では入社年次が古いほうが上、若い方が下。男が上、女が下(少なくとも表向きは)。ついでに言えば、家庭でも親が上で子が下だった。もう一つの特徴は、これまでの典型的な「日本のカイシャ」は終身雇用を中心としていて、長年に渡り同じメンバーと文脈を共有してきたことだ。地域でも同様に、長年に渡り同じメンバーが強固な関係を作ってきた。そんな社会と組織では「所属」「肩書き」が大事だった。そして、こうした社会や組織では、情報は「決まった経路」を「上から下へ」流れてくる。経路は、必ずしもオフィシャルなラインとは限らない。でも経路が決まっているので、影響力を持つには、有力な経路の上流を押さえてそこに情報を流す(伝達する)ことが大切だった。

これと対比されるこれからの社会は、かつてのヒエラルキーが緩んでいく。かつては「友達のような親子関係」は褒められたものではないという感覚だったが、今は全く違和感ない。男女関係もそうだろう。個人の感覚と比べると、組織内や社会の変化は緩やかだが、着実にフラットになりつつある。また、伝統ある大組織でも中途退職、中途採用は珍しくなくなった。さらに、どの企業でも未来を切り開くのは新規事業だが、かつては新規事業は社内開発が中心だったものが、今はオープンイノベーションやM&Aなど外部との連携が重要になってきている。こんな社会と組織では、所属だけでなく個人の特徴を分かりやすく伝える「タグ」も大事になってくる。

かつての社会も組織も、トーナメント戦の図のようなイメージだったのが、これからの社会や組織は、ネットワーク型のイメージだ。

そして、このようなこれからの社会や組織では、情報はそのネットワークの中を自在に流れる。自分たちにとって大事な情報がどこに流れているかは、決まっていない。さらに厄介なことに、自分たちには大事な情報が、誰かの頭の中にあって、まだ「情報」として取り出されていないことも良くある。だから、これからの社会と組織においては、ネットワークの中を自分が動き回り、タグをヒントに人と出会い、相手の話を良く聴いて引き出すことが、大切になる。そうやってネットワークから自分たちに必要な情報を「すくいとる」力(聴く力)が、これからの働き方の鍵だ。

このように、社会の構造と組織のあり方が変わり、情報の流れ方が変われば、効果的な働き方も変わる。例えばランチタイムの過ごし方一つとっても、これまでの社会・組織の感覚では、社内の決まった人たちと毎日決まった時間にお昼を食べていた。文脈を共有し、決まった情報経路の確認をし合うのが大事だからだ。これからの社会・組織では、ランチは社外の人と共にして、ネットワークをメンテナンスし、話を聴かせてもらう方が、効果的な働き方になる。

まとめると、働くこととは情報を扱うこと。社会と組織の変化と共に、情報の流れ方が変化している。だから、
◆「情報経路の上流をおさえる」よりも、「ネットワークの中を動き回る」。
◆情報を「流す」よりも、「引き出す」。
◆「伝える」よりも、「聴く」。
これらがやりやすくなるような仕組みやマインドが、これからの働き方の新モデルだ。


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