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車好きの独り言。

50年以上も昔から、エンジンを搭載する高性能車は、車好きにとっては憧れの存在だ。エンジンの奏でる音、回転数を合わせながらのシフトチェンジ、コーナーを駆け抜ける際の重心移動。F1を頂点としたモータースポーツ、走りをテーマにした漫画やアニメも、少し前までは絶大な人気を博していた。私自身も、学生の頃には、週末になると峠に行って、運転の腕前を上げるべく、一日中走り回ったものだ。最近では、サーキットに場所を変えて、本格的に運転技術を磨こうと頑張っていた。残念ながらコロナ禍によりその挑戦は一時休止に追い込まれた。

このまま電気自動車、自動運転の世界が来て、車を操る楽しみが無くなってしまうのかと、半ば諦めかけていたところ、今年の3月、欧州で2035年にエンジン車の新車販売を禁じる方針が転換された。もちろん、脱炭素を諦めたわけではないので、ガソリンや軽油はNGだ。エンジン車の利用は、再生可能エネルギー由来のグリーン水素と回収したCO2からつくる合成燃料を利用する場合に限られる。ポルシェなどが主張してきた合成燃料がようやく認められた形だ。これで、自動車のサプライチェーンの再構築にも少し時間的な余裕を生み出すことができる。航空機や船舶の業界でも、この合成燃料に注目が集まっていたことも、この方針転換の後押しになったのだと感じている。

いずれにせよ、このままエンジン車が無くなってしまうのかと、嘆いていたので、合成燃料の一報は正直とても嬉しかった。まだまだコスト面での課題は大きいが、どんなエンジンフィールになるのか、どのくらいのパワーが出るのか、今から楽しみでしょうがない。一つ気になるのは、合成燃料がこれまで販売されてきた車で利用できるようになるかだ。何かしらのレトロフィットで利用できるようにしてもらえたらとても嬉しい。性能はおそらく低下するだろうが、これまで愛着を持って乗ってきた車を、地球に優しい形で使い続けられたら何と素晴らしいだろうか。

一方で、トヨタが模索している新たな電気自動車の姿は、なかなか興味深い。エンストもする電気自動車だ。エンジン車と同様に、ちゃんとアクセル、ブレーキ、クラッチの3つのペダルがついているという。クラッチのつながる感触もマニュアル車そのものらしい。坂道発進ではエンスト体験までも可能という。動作メカニズムを考えればフェイクなのは間違いないが、ぜひ心を真っ白にして、体験したい代物だ。この車はエンジン音まで再現してドライバーに届けてくれるので、完成度の高いドライビングが期待できる。プログラムの変更だけで、あらゆる車種の再現も可能だ。乗り換えも自在というわけだ。

さらに発展すれば、ガソリン車の運転で記録した各種デジタルデータを、電気自動車での運転に重ね合わせる。プロドライバーの運転も記録して活用できるだろう。電気自動車を動くシミュレーターとして活用することで、新たな体験を生み出せるに違いない。車好きの楽しみに留まらず、デジタルネイティブの新たな娯楽としても活用できるかもしれない。

車好きにとってもう一つ気になるのが、水素エンジン車だ。水素は燃やしてもCO2を排出しないので脱炭素を実現できるのだが、技術は未成熟だ。液体水素を燃料にするためにはシステム全体に、マイナス253度の環境下で、耐久性を持たせなければならない。気体水素の場合は航続距離で分が悪い。いずせにせよ、トヨタは耐久レースなどで着々と技術開発を進めている。どのタイミングで実用化できるかは未知数だが、ガソリン車のワクワクの多くを引き継げるような気がしている。

脱炭素を進めて、地球に優しい社会は作りたい。でも、車を自在に操る喜びや、どこにでも自由に行ける喜びは追求したい。メーカーには、二律背反ではなく、高次元での両立を目指して、ぜひ頑張ってもらいたい。選択肢も多様であって欲しい。私自身も、メーカーの想いを受け止めながら、利用者としての責任を果たしていこうと思っている。

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