技術系職種はダイバーシティで生産性の飛躍的向上が見込める

増やせ技術系女性社員

働き方の多様化が広まる中で、これまで男性が当然だと思われていたような職種での女性の活躍が増えている。タクシーやバスの運転手、運輸業に建設業など、現場で女性の職人を目にする機会も増えてきた。

まだまだ全体の割合で言えば一部なのだろうが、このような女性の活躍フィールドの拡大は進んでいる。日経新聞の記事では、九州電力が「脱・男社会」を目指して、技術系女性の比率を高める取り組みが紹介されている。

歴史的にみると、女性の社会進出は人手不足を背景として広まることが多い。
日本の歴史では、明治時代の急激な産業化が進むと同時に、近代産業技術を理解できる教養を持つ大量の労働者が必要となった。そこで白羽の矢が立ったのが、身分制度改革で行き場のなくなった士族の子女だった。全国から士族の娘たちを集めて伝習工女(技術指導者)として養成し、近代産業の専門技術を身に着けた彼女たちが郷里に帰って技能を伝えた。そうして技能が伝えられた郷里では、貧しい農家の子女が女工として雇用され、技術指導者として訓練を受けた士族の娘が活躍した。
世界的に女性の社会進出が進んだのは2度の世界大戦だ。欧州では世界大戦の結果、若く健康な男子が不足し、社会活動を維持するためのエッセンシャルワーカーを確保することが困難となった。そのため、女性の社会進出が広まることとなった。
現代の日本における女性の社会進出も歴史的な流れとしては類似している。人手不足のために雇用を確保するために、従来は男性の仕事だと思われていた職種での女性進出が増えている。

イクルーシブ・デザインで生産性を上げる

男性が主に担っていた職種で女性が活躍するには、業務プロセスの改革も求められることが多い。そもそも、男性が主に担っていた職種というのは、業務特性として物理的に身体能力が高い男性の方が好ましい現場が多い。例えば、酒屋では大瓶の瓶ビールのケースは約25kgの重量があり、サザエさんに出てくる三河屋のサブちゃんのように軽々と持つことができないと作業効率が悪くなる。このような現場では、25kgのビールケースを軽々と持てるフィジカルを持つ女性を探したり、女性社員に筋肉トレーニングを積ませるよりは、そもそも持つ必要がないように業務プロセスを改善した方が効率的だ。

このように多数派の論理でデザインされていたプロダクトやサービスを、マイノリティの視点からデザインし直すことを「インクルーシブ・デザイン」という。純粋な「インクルーシブ・デザイン」では、ハンディキャップを持った人に寄り添うように再デザインされた商品やサービスの開発で扱われることが多い。

「インクルーシブ・デザイン」の面白いところは、マイノリティに寄り添った結果、多数派にとっても好ましい生産性を高めるデザインに刷新されることがままあるということだ。日常で私たちが良く目にするのは、宅急便の段ボールを満載したタイヤ付きのケージなどだろう。男性社員ばかりのときは「重いな」と思いながらも、腕力で段ボールをいくつも重ねて持ち上げ、エレベーターを待つのも惜しいと階段を駆け上がっていた。しかし、女性社員を受け入れるのに配達先ごとに段ボールを収納するケージを用意することで、腕力に頼ることなく従来よりも多くの荷物を一気に配達することができるようになる。結果として、男女関係なく生産性が向上することにつながる。

男性が多い組織には、男らしさ(masculinity)や身体的な強靭さ(machoism)を美徳とする価値観を生み出すことがある。その結果として、本来は改善できる事象を見逃し、生産性の無駄を生むことにつながりかねない。女性だけではなく、外国人やハンディキャップを持った多様な従業員を雇うなかで、多数派ではない従業員が働きやすいように業務プロセスを改革することは、組織の生産性を高め、競争力の向上につながる可能性がある。
うまく活用することで、イノベーションを興す好機にもなり得るのだ。


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