フリーランスの「中長期的なキャリアプラン」を語る場所が今すぐにでも必要な理由
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フリーランスの「中長期的なキャリアプラン」を語る場所が今すぐにでも必要な理由

別所隆弘

(1)フリーランス爆増時代

2021年は、フリーランスで働く人の総数が1670万人になったそうです。以下の日経の記事によると、2020年比で57%以上増。つまり600万人以上増加しているわけで、端的に「爆増」と言える増加率です。

僕は自分の法人の代表であると同時に、フリーランスのフォトグラファーとしても働いているので、多分この1670万人の中の一人に含まれているはずです。そして写真仲間たちの多くもまた、この1670万人の中に含まれていることでしょう。

さて、このような状況下において、思いを馳せるのは未来のことです。いつだって、基本的には一人で生きている僕のような人間は、未来のことをある程度予測しながら動く癖みたいなものがついています。「未来」が「現実」になったときにあたふたしていても、既にもうおおよその機会は使い切られていて、そこから何かを始めようとしても手遅れである場合が多いからです。多少のリスクがあったとしても、未踏の領域について思いを馳せて生きるしかないわけですね。

そんなロンリーウルフな生活をしていると、一番気になるのは将来のお金の話。それをこの前、ちょっとだけ具体的に記事にしたのが、これでした。

資産形成というのは割とシンプルかつ残酷な側面があって、「複利のパワーを味方につける」というのが、ほぼ結論みたいなものなんです。だからどんなに少額でも良いので、若い人は早めに資産形成した方がいいよ、というのがこの前の記事の根幹でした。

(2)入口と出口はある、でも「途中」がない

さて、個人のお金のことを考えた後は、今度は「集団としての我々フリーランスの未来」について、ちょっと思いを馳せたくなりました。最初に書いた通り、今やズンズンとフリーランスの人たちが増えているんですが、問題は、この「現在」の流れが続いた後のそれほど遠くない未来に、どんなふうに我々フリーランスのキャリアパスが描かれるのか、中長期的な話がほとんど語られていないってことなんです。

そう、フリーランスが最近凄まじい勢いで増え、FIREムーブメントが示す通り、雇用や労働の形態がますます流動化してます… というのが、2020年代冒頭の日本の労働環境の変化だとすると、その中核は30後半から50代後半くらい、つまり「まだ引退していない人たち」の話です。しかもこの流れは、せいぜい数年前から始まったに過ぎません。

そのような状況の中で、今フリーランスの中核を担う人たちが60を迎え、いよいよこれから「本格的に引退する」っていう時期が来るまでの、今から約5年後から20年後のストーリーは、未だほとんど語られていないんです。

もちろん、お金についてはある程度の予測が可能ですし、みんな真剣に考えるので、毎日のように関連記事が出ています。例えばこんな感じで。

これらの記事から、比較的「お金」のストーリーは、既にもう十分で始めていることがわかるんです。つまりみんな「一抜けた!」の後の「出口」に関しては、すっごく真剣に考えて、色々話をしています。

でも繰り返しますが、問題はこの「出口」に至るまでの中長期的なライフプランやキャリアプランが、いまだにほとんど語られていないってことなんです。「今後フリーランスというのは、こういうふうなキャリアアップをするだろう」と、明確な見通しやナラティブが見えない。もちろん、僕も持ってないです。

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(3)「フリーランスのキャリア」というナラティブを形成する場の必要性

原因はもちろん極めてシンプルです。日本で積極的にフリーランスを選んだ人たちが、まだほとんど引退まで至っていないから語ろうにも語れない、これが原因です。その経験を語れる「世代」がまだほとんど存在していないのですから、「世代のナラティブ」を形成し得ないんです。

もちろん全くゼロというわけではありません。日経COMEMOは、特にフリーランスの立場から記事を発表している人も多いので、彼らの記事はとても参考になります。

とはいえ、まだまだやはり「フリーランスのキャリア/ライフ/ファイナンシャルプラン」のナラティブは、ほぼ未分化とも言える状況でしょう。明確なロールモデルもありません。というより、これまでの年功序列型のロールモデルとは違った、認識論的に違う「キャリアのナラティブ」を考えるべき時期が、そろそろ迫ってきている気がしています。

こうした状況にも関わらず、今日本国内のフリーランスは1670万人いらっしゃるんです。つまりね、依拠すべきナラティブもないまま、僕らはフリーランス時代を生き始めているんです。1670万人の中長期的なキャリアプランとライフプランが、いまだ語られていないし、語れる人もほとんどいないこの状況、これに気づいた時、実はちょっとゾッとしました。相当楽観的な人間でもない限り、自分の未来が五里霧中であるという現在を、不安もなしに過ごせる人って少ないと思うんです。少なくとも、僕はちょっと不安です。

という状況において、今後一体何ができるのか、何が必要なのかということを想像した時、頭に思い浮かんだのは

フリーランスのためのライフプラン・キャリアプラン・ファイナンシャルプランの物語/ナラティブを作る場所や集団

が、早晩出てくるだろうなということなんです。この状況をそのまま置いておかれることはないんです、人間の本性からして。世代的な不安があれば、それを解消するためのナラティブやストーリーが必ず分厚く展開します。絶対に。

これまでの例で言えば、例えばリクルート社は「新入社員や転職者たちの物語」を作ってきました。他にもリクルート社は、例えばスタディサプリを見ても、時代に即応した「世代の物語」を、社会に流通させることが極めてうまい会社です。でも基本的にはリクルートや、その他の「世代の物語」を作ってきた企業が、その物語を接続する先は、社会のマジョリティ側であると言えます。一部上場企業や一流大学への就職/入学の物語が、社会を鼓舞する「モデルケース」として流通していき、社会全体がその華やかなモデルケースを目指して発展していくような、そういうナラティブを形成していきます。

ですが、我々フリーランスが作り出す物語は、おそらくは「上」を目指すのではなく、各人を中心として緩やかに横に広がる網の目のような水平方向の物語であるはずです。それは明快な上昇のストーリーを持ち得ず、むしろ共感であったり、楽しさであったり、やりがいであったりといった、数字ではあまり表しきれない価値観を包含したライフプランのあり方が、我々のナラティブになる。

それが「集団の物語」としてまだまだ機能し得ていない現状が、まさに今なんです。そしてこの「フリーランスの始まり」と「キャリアの終わり」以外の、中長期的なストーリーを展開するための場と集団は、今後の日本の経済にとっては、おそらくかなり重要かつ喫緊の必要が出てくるものと予想しています。なぜなら、もはや旧態依然とした年功序列の労働システムは崩壊する未来しかありませんし、年金や社会保障システムの整備も遅れています。

そう、この巨大な「労働改革」とも言える奔流の中には、これからの日本が立ち向かわなければならない問題が、圧縮された形で全て内在しているんです。だからこそ、フリーランスのナラティブが集積し、機能し始める時が来れば、日本の根幹が少しずつ、本当に「新しい時代」へと転換していくはずなんです。

というわけで、どこかの野心的なスタートアップの会社の皆さん、「フリーランスの中長期的なキャリアプラン」を語り、流通させ、「集団の物語」を作るような、そんな場所を作ってくれませんか。絶対に未来に大きな場所を作ることになるはずです。

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別所隆弘

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別所隆弘
フォトグラファー, 文学研究者。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。 Twitterはこちら https://twitter.com/TakahiroBessho