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音楽を現実の構造物へと翻訳する 〜AUDIO ARCHITECHTURE展

© phreaky

休日は日常から離れたインプットを求めて、美術館やライブなどに出かけることが多い。普段忙しく仕事をしているとどうしても終始仕事のことをどこかで考えている状況になるのだが、アート等に触れ体内にある素の感情を揺り動かすと少し中長期のことを考えられるようになる気がする。3連休の最後であったため、行きたかった企画展に出かけてみた。

http://www.2121designsight.jp/program/audio_architecture/index.html

コーネリアスの小山田圭吾と聞くと、ある特定の層がピクッと反応する気がするが、私もその中に含まれる。彼が音楽の構造に着目して書き下ろした新曲『AUDIO ARCHITECTURE』を、各分野の気鋭の作家たちが解釈(翻訳)。それを映像作品として展示したのがこの企画展である。

「ARCHITECTURE」(アーキテクチャ)ー つまり構造物とは、様々なパーツの組み合わせによって全体が構成されるものを指す。建築を英語にするとarchitectureなのは、わかりやすい例であろう。一方音楽とは、音色や音域、音量、リズムといった様々な要素によって緻密にデザインされた構造物(アーキテクチャ)でありながらも、聞き手による多様な解釈可能性にあふれている。

© phreaky

この展示会ではどの場所でも同じ音楽が同期して流れている。そして、9つの映像作品が自律的に作動し続けながらも、そのすべてがひとつの音楽に呼応して様々な変化を魅せる。音楽と、音楽により構成された構造物(アーキテクチャ)に包まれながら、自らの五感をもってその世界に浸ることができる。

© phreaky

映像作品を眺めていると、ふと不思議な感覚がやってきた。文字通り「ずっと同じ曲」がかかっているにも関わらず、ところどころで「違う曲」に聞こえてくるのだ。それぞれの作家の音楽構成の解釈の違いが映像に反映され、私の脳内でミックスされたときに「違う音」を奏でるらしい。

視覚と聴覚というのはつながりがあり、これらを変換することで視覚障碍者の歩行をサポートするような研究もなされている。身近な例で言えば、コウモリやイルカが自ら発した超音波の反響音を検知して、障害物や獲物の位置を正確に捉えることができる能力もこれに該当するだろう。

http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/news/technology/1237sight.html

最近増えている体験型アート展の中ではかなり意欲的な挑戦だと感じた。10月14日まで開催しているので、みなさんもこの不思議な世界を体験してみてはいかがだろうか。

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会場: 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2 (東京ミッドタウン内)

展覧会ディレクター: 中村勇吾

音楽: 小山田圭吾(Cornelius)

会場構成: 片山正通(Wonderwall)

参加作家: 稲垣哲朗、梅田宏明、大西景太、折笠 良、辻川幸一郎(GLASSLOFT)×バスキュール×北千住デザイン、勅使河原一雅、水尻自子、UCNV、ユーフラテス(石川将也)+阿部 舜

※ 当展示会はフラッシュを使用しない写真撮影と、15秒未満の動画撮影が許可されている。当記事掲載の写真は筆者撮影。

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