テレワークを契機として広く柔軟な労働時間制度を
現在厚労省で行われている労働基準関係法制研究会の中で、テレワークをする日に限り1日単位でフレックスタイム制を活用可能とする仕組みが検討されているようです。
元々テレワークとフレックスタイム制は親和性が高い
元々テレワークは、働き方改革実行計画の中の「柔軟な働き方がしやすい環境整備」の中に位置づけられていたとおり、働き方の柔軟性を高め、子育てや介護等の事情を抱える人にも働きやすい働き方として推進が図られてきました。
ただ、テレワークそれ自体は、働く場所が自宅やサテライトオフィス等になるという「場所」の変更でしかありません。
これだけでも、通勤の時間を削減できるというメリットがありますが、より「柔軟な働き方」として機能させるには、別途「柔軟な働き方」ができる労働時間制度を組み合わせる必要があります。
テレワークガイドラインでは、フレックスタイム制の活用や事業場外みなし労働時間制の活用が選択肢と挙げられていました。
こうした「テレワーク+働く裁量」という観点をより強化する方向は、テレワークの推進との関係でよい方向と思われます。
テレワーク対象者だけの優遇でよいか
他方で、コロナ禍が収束し、最近ではテレワークに消極的な企業が目立ってきています。大きな理由は、社内コミュニケーションの欠如による生産性の低下を危惧してのことだと思われます。
これはこれで今後書くとして、企業がテレワークに否定的な理由の別のものとしてよく耳にするのは「テレワークをしていない人とのバランス」です。
つまり、「テレワークをしている人だけ、自宅でゆったり仕事ができてずるい!」という声です。
これについては、本来テレワークは仕事の場所が自宅などになるだけで、家でゆっくり仕事をしているわけではないのですが、実際にはそのような認識になっていることは否定しがたいところがあります。
こうした認識を前提にすると、あまりにテレワーク対象者に下駄を履かせすぎると、それはそれで不均衡が拡大してしまうという問題があります。
厚労省の検討案
改めて厚労省の研究会の報告書たたき台を見てみると、テレワークとの関係で検討されているのは、①コアタイムを拡張しコアデイを導入し、テレワーク日と通常勤務日が混在する場合にもフレックスタイム制を導入できるようにすること、②テレワーク時に利用可能なみなし労働時間制度の2案が検討されているようです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001330213.pdf
よく見てみると、①については、「テレワークの場合に限らず、導入すべき」と記載されており、テレワークに限らず一般的に適用できるようになるかもしれません(その意味では、冒頭に引用した新聞記事はややミスリーディングかもしれません)。
テレワークを契機とした労時間制度の見直しを
これまで述べてきたとおり、「テレワークのためだけの」労働時間制というのは、テレワーク対象者とそうでない従業員との差を広げてしまいます。
そもそも「テレワーク」というのは、簡単にいえば、PC等を用いて自宅等で仕事をするというものであり、本来それ以上でも以下でもないはずです。
そう考えると、「テレワークのための労働時間制度」というのは、本来テレワークではない従業員にとっても働き方の柔軟性を高めるメリットがあるはずです。
したがって、今回のように、テレワークを「契機」として、広く従業員に適用できる柔軟な労働時間制度を見直してくことも重要であると思われます。