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大事なのは私たち一人ひとりの、未来への想像力なんだろうな。

 先日、テレワークの実施が頭打ち、ということで、正社員の実施率は27.5%に止まる、という記事が出ていた。

 最近、テレワーク、という言葉をあまり耳にしなくなり、様々な場所で聞いてみると、確かに「なんとなくオフィス出社に戻した」会社が多いことを感じる。

 Zホールディングスでずっとテレワークを行なっている私からすると、コロナウィルスの感染拡大防止の観点でも、そして業務効率の観点でも、テレワークは重要な働き方としてもっと積極的に皆取り入れればいいのにな、と無邪気に思うわけだが、例えばTwitterなどでそういうつぶやきを見ると、大抵、その返信等「テレワークできない人もいるのに」という声が上がる。

 それはもちろんその通り。エッセンシャルワーカーの方、現場で何かする必要があるお仕事の方など、テレワークしようがない方がいらっしゃるのは本当にその通りだ。「テレワーク推進派」はそんなことは百も承知で、そのうえで、
 「テレワークを物理的にすることが可能な仕事をしている人は、どんどんテレワークを取り入れた方がいい」と言う。

 テレワークの恩恵を受けまくっている私自身も、「全てテレワークにすればいいのに」とは思わない。コロナウィルスの感染拡大が収まったら、時々は、チームメンバーと対面で顔を合わせたりするのがよい。

 例えば、成果を分かち合ってハイタッチしたい時。あとは、新しいメンバーを仲間に迎え入れた時。でも、日常の仕事においては、テレワークで問題ない。そこは良し悪しあると思うが、ということはつまり、
「テレワークが効果を発揮するものはテレワークで、対面の方が効果を発揮するものは対面で」
という形で、業務によって両方使うと生産性が上がる、ということなのだと思う。
どうすればいいか、は詳しくはこちらを参照いただければと思う。

 結局、「対面とテレワーク、使い分ければ最強よ!」と思うのだが、決めつけるわけではないが、「テレワークできるのに、コミュニケーションが円滑でないから」というような感じでテレワークを進めない(対面にこだわる)のは、「慣れてないやり方になれるのがいやだから、やりたくない」ということが大きいのだろうな、と思う次第だ。

 さらに言えば、テレワークを活用すれば、通勤時間や移動時間が短縮できるから、生産性向上に間違いなくプラスになるわけだが、そもそも日本のビジネスパーソンは、「生産性向上」ということに、興味がないんだろうなと。そうしなくても食っていけるガラパゴスの中に生息しているからなんとかやっていけるということだ。

 結局、この要請を対面にて行なっているわけで、それ自体が、「進めたい」と思っている側も真剣に考えていないんだろうな、と感じるし、受ける経団連会長も「じゃあweb会議でやりましょう」ということにしなかったのは、テレワーク、オンラインワークのメリットを感じていないからなのだろう。

 ビジネスの世界ではこういう「変化からの忌避」が目立つなぁ、と考えていたら、そうではなかった。診療の世界もこんな状況だった。

日本医師会のコメントを見ると

誤診で訴えられる可能性や診療動画が流出するといったリスクも指摘する。医師からは「手間がかかる」「画面越しでは得られる情報が少ない」といった声が聞かれる。

とのことで、まあこれを読むと、まさに「テレワークを進めようとしない」人の言葉と同じではないか。

 「やりたくない」し、「やることによる生産性向上」などに興味はないのだ。このコロナ感染拡大による自宅待機が激増している状況なのに。

 ただ、テレワークにしても、オンライン診療についても、進めたくない人がこう言うのは、わからんではない。個別の立場からすれば、浸透するのに手間もかかるし、想定外のことが起きる可能性はあるし(新しいことなので当然)、そして「完璧な方法」などなく、オンラインによるデメリットもあるだろう。

 それはやりながら改善していくものだし、まずは、使い分け、なのだ。

 結局、これが進まないのは「やりたくない」のだと思う。または「興味がない」のだろう。個別のビジネスパーソンや医師が、新しい仕組みを導入することで、若干の最初の不便さを感じるなら、やらない方向、変えない方向に動く。それが人間だ。それで例えば給料が下がるとか、評価が下がるということでなければ、面倒んでない方向に進む。

 だから、より上位レイヤーで考えるべきだ。「困らない」のであれば、進める必要はない。でも本当に困らないのか。生産性が上がらず、これができたら確実にメリットが生まれただろうのにそれを享受できないことで、困るのは誰か。

 テレワークでいえば会社であり、国だ。オンライン診療であれば、国だ。そして国、というのは言い換えれば、首相が、政府が、ということではない。結局、最終的には国民だ。つまり私たちだ。

 テレワークも活用せず生産性を上げず、他国企業との競争に負けて貧しい国になる、ということでもいいのだろうか。オンライン診療も取り入れず、自宅で受けられる医療も受けず、ということでもいいのだろうか。

 私たちは、長期的に見て、本当にそんな状況でいいのだろうか。長期的なことはわしゃ知らん、ということでいいのだろうか。結局、私たちは、個別では不便さを感じ進めたくない。しかし全体としてはどうか。そういう状況に直面している。それが今、問われている。

 この国の未来は、こういうことでいいのか?それが私たちひとりひとりに問われている。

 困らないならやらないでいい。それは、将来を想像したうえでそうなのか。めちゃめちゃシンプルに言えば、こういうことなんだと思う。

(photo by aflo)

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