「奇異の目」への違和感
温暖化関連の報道では一般的な論調ながら、違和感を禁じ得ません。
まず「日本は存在感を示せず」と日本のメディアの方は頻繁に書くのですが、存在感があるのは米国・中国など大排出国。EU諸国などはアピール上手ということはありますが、世界の温室効果ガス排出量の3%である日本がそれほどの存在感を示せると思うほうが自意識過剰な気がします。パリ協定の仕組みは日本の産業界がやってきた自主的削減への取り組みとそっくりな構造なんだよ、と説明すると注目して下さる方は実はとても多いですが、そういうことをうまく伝えられていないというのはその通りで大変残念です。取材の時などにぜひそうした投げかけもしてみてほしいもの。
今回のCOPにあわせて英国やカナダがリードして立ち上げられた脱石炭火力の連合に日本が加わっていないことへの批判も書かれていますが、ドイツも入っていませんし、中国、インドなど含めてアジアからはゼロです。建設中のものも含めて、世界の石炭火力発電の97%くらいを保有している国は加盟していない、ということ。脱炭素化、脱化石燃料の潮流を否定する訳では決してありませんが、より現実的な解決法を議論するためにも、単純な日本否定論とは一線を画して伝えるべきではないかと思います。
ちなみに、電源構成における石炭(含む褐炭)の比率という点では、日本よりドイツの方が大きいし、昨日ドイツ環境省のサイドイベントに登壇していたドイツ環境省のDirector Generalは「ドイツは脱原子力と脱石炭を同時に進めようとしており、かなりチャレンジング。脱石炭については雇用の問題もあり非常に政治的に難しい議論になっている」とコメントしてくれました。(難しいからやらないのではなく、難しいけどやるというところは、日本は見習っても良いのではと思います。日本は確実にできると思うことだけ言いたがる節があるので)。
もう一つちなみにですが、このアライアンスの発起人的立場の英国は確かに石炭火力を卒業しつつあります。ただ、代わりにバイオマス等の活用だけでなく、原子力の導入も進めているという話は書かれていませんね。
このアライアンスに日本が参加して、高効率石炭火力の輸出をやめてそれで世界が脱石炭になるのでしょうか?そうはならずに、中国が石炭火力技術を世界に提供するだけでしょう。
そもそもエネルギー政策は各国の事情を反映した3Eのバランスの下で考えられるもので、「あなたの国は変だ」ということが変です。
ただ、結論には同意で、脱炭素化、脱化石燃料の潮流は急速に強まりつつあります。パリ協定に対する自主的取り組みの知見提供や技術開発・普及でその潮流をリードするくらいの強さがなければ、確かに日本は立ち遅れてしまうでしょう。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23658370Y7A111C1000000/
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