見出し画像

心理的安全性を高める為にリーダーが知っておくべきこと

ここしばらくビジネスの世界においても「心理的安全性」という言葉を聞く機会は増えました。

漠然と「心理的安全性が高い組織は良さそうだ」と感じる人は多いと思いますが、なぜ組織づくりにおいて心理的安全性と向き合う必要があるのか、心理的安全性を高めるにリーダーはどう動くべきなのかなどについて、今回は考えていきたいと思います。

心理的安全性って何?

そもそも心理的安全性って何なのでしょうか。

心理的安全性は組織行動学の学者エドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語であり、下記のように定義されています。

チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと
石井遼介著「心理的安全性のつくりかた」

チームメンバー同士の関係性によって「このチーム内では、メンバーの発言や指摘によって人間関係が悪化することはないという安心感が共有されている」ことが重要なポイントであると言います。

そしてエドモンソンは心理的安全性について下記のように書いています。

対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境であること。それが心理的安全性だと、私は考えている。意義ある考えや疑問や懸念に関して率直に話しても大丈夫だと思える経験と言ってもいい。心理的安全性は、職場の仲間が互いに信頼・尊敬し合い、率直に話ができると(義務からだとしても)思える場合に存在するのである。
エイミー・C・エドモンドソン; 村瀬俊朗. 恐れのない組織――
「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

心理的安全性が高いチームであれば、分からないことを質問したり、何かのアイデアを提案しても拒絶されることはないと思えるので、思いついたアイデアや考えをミーティングの場などで発言することができるのです。

心理的安全性を高める成功循環モデル

「成功循環モデル」by ダニエル・キム

心理的安全性の高め方を考える上でダニエル・キム教授が提唱している成功循環モデルを紹介させていただきます。
成功循環モデルは心理的安全性が高い状態をつくるためにとても大切な考え方です。

心理的安全性は、下記4つの循環で高まっていきます
①まず関係の質を高めることからスタートします。関係の質は対話から始め、素直に対話するところから始めます。その中で信頼関係が高まっていくのです。そうして生まれた関係の質が高い状態では、"思考の質"が高まります。
②思考の質が高いと当然良い気づき、前向きな考えが出てくるため、"行動の質"が高まります。
③行動の質が高くなると、自律的に積極的に動ける状況になり、問題が起きても助け合いが生まれる為、成果が出やすくなり"結果の質"が上がります。
④結果が出る状況では成果の実感が持つことが出来、チーム内の関係値が更に高まり関係の質がさらに高くなるのです。

こうして好循環、グッドサイクルが周り始め心理的安全性の高い状態が作られるのです。

心理的安全性が上がらない組織とは?

成功循環モデルのグッドサイクルについて説明しましたが、逆に心理的安全性が上がにくい組織はどのような考え方をしているのかを見てみましょう。

「成功循環モデル」by ダニエル・キム

先ほどのグッドサイクルは、関係の質を高めるところからスタートしましたが、このサイクルを右に1つ回転させて、結果の質から始めると結果が全く別のものになります。

心理的安全性が低い環境は、下記4つの循環で低くなっていきます。
①まず結果の質を求めることからスタートします。ビジネスにおいてすぐに結果が出ないことは多々あります。なかなか成果が上がらない状況が続くと、成果が上がらないことでチーム内で責任の押し付けや対立が生まれ、"関係の質"が低くなります。
②なかなか結果が出ず関係の質が低い状況になると、失敗を回避しようという思考になり、何か課題に気づいてもアイデアや意見を出しにくく、思考の質が低い状況になります。
③思考の質が低い状況では、受け身であるため、消極的な行動を取りやすくなり、"行動の質"が下がってしまいます。
④行動の質が低い状況では、チームの協力体制も取りづらく、結果も出づらくなってしまいます。その結果、成果が上がらない状況が続き、結果の質が下がります。

こうして、どんどん結果の質が下がってしまう悪循環が生まれてしまうのです。このような状況下では心理的安全性は高まらず、チームへの帰属意識も生まれづらくパフォーマンスも出ません。

心理的安全性と業績基準の関係性

引用:エイミー・C・エドモンドソン; 村瀬俊朗. 恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

エドモンドソンの著書「恐れのない組織」で、心理的安全性と業績基準の関係性についての関係性について下記の4事象で述べられています。

① 心理的安全性と業績基準が共に低い場合:無気力ゾーン
② 心理的安全性は高いが業績基準が低い場合:快適ゾーン(コンフォートゾーン)
③ 心理的安全性は低いが業績基準が高い場合:不安ゾーン
④ 心理的安全性と業績基準が共に高い場合:学習ゾーン

無気力ゾーンでは、メンバーは仕事に集中しておらず保身に必死になる傾向があると言います。
快適ゾーンでは、メンバーは気持ちよく仕事をしており対等な立場で遠慮なく話も出来ます。ただし、新たなチャレンジ、困難な仕事に立ち向かうことはなくイノベーションが生まれにくい傾向にあると言います。
不安ゾーンでは、メンバーは考えを伝えることにビクビクし、仕事の質と職場の安全性の両方に害が出てしまう状況となり、良いパフォーマンスを生み出せません。そしてこれは多くの職場で見られる状況だと言います。
学習ゾーンでは、メンバー同士が協力し、お互いから学び、複雑で革新的な仕事をやり遂げることができると言います。メンバーが積極的に学習しながら進んでいく組織では、高いパフォーマンスを上げられるのです。

組織のリーダーは、この心理的安全性と業績基準の関係性をしっかりと把握し、チームがどのゾーンにいるのかを常に意識し、いかに学習ゾーンにいる状況にしていくかを考え動いていく必要があるのです。

リーダーの役割

では心理的安全性を高めるにはどうすれば良いのでしょうか?先ほど関係の質を高めるところから始めることで心理的安全性を高める成功循環モデルについて説明しましたが、その他の重要な要素として、リーダーの役割があります。エドモンドソンが述べていますが、組織のリーダーは心理的安全性の土台をつくり、チームメンバーが率直に意見を言わずにはいられない方法で参加を求めます。そして、メンバーが取るリスクに対し、リーダーが生産的に対応することが不可欠です。

この①土台をつくる ②参加を求める ③生産的に対応する というお互いに関連する3つの行動が心理的安全性を生み出すのです。

3つの行動の詳細に関しては、是非「恐れのない組織」(エドモンドソン著 )を読んでいただくことをお勧めしますが、こちらでは、心理的安全性を高めるためにリーダーに求められるエドモンドソンによるフレームワークを紹介させていただきます。

引用:エイミー・C・エドモンドソン; 村瀬俊朗. 恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

この中で特に大切だと感じているのは、リーダーが完璧でないことを認めることです。完璧な人なんていません。でも仕事においては、完璧であろうとするリーダーが多いことも事実です。しかし、完璧な(ていである)リーダーの元にいるチームメンバーは、完璧でない自分に自信が持てず、不安や意見、アイデアを出しづらくなります。リーダーはまず完璧でないことを認め、チームに共有することが心理的安全性の高いチームをつくる上で大切なのです。


まとめ

心理的安全性が高い組織をつくっていくことは簡単なことではありません。ビジネスの状況も刻一刻と変化していき、組織も新たなメンバーが増えるなどチームも変化していきます。そのような中で、メンバーが心理的安全性を感じる状態を確保し続けることが大切です。

私のチームでは先日、第1四半期の振り返りと第2四半期の取り組みをメンバーそれぞれがシェアするセッションを開催しました。その中で、新しくチームに入ったメンバーが自身が抱えている不安をシェアする場面がありました。その不安に対して他のチームメンバー各々が自分自身の経験も踏まえて、意見、アイデアを述べていきました。結果、不安を吐露したメンバーも暗中模索の状況から光が見えたと言っていました。

新しく入ったメンバーでも恐れずに抱えている問題をシェアし、それに対し、他メンバーが意見、アイデアを自由に述べていく状況は、関係の質が高くないと実現しません。まだまだ途上ではありますが、チームの心理的安全性が高まっていることを実感する機会でした。

日頃から自身の意見を述べる機会をしっかり設け、リーダーがしっかりとファシリテーションしてメンバーの意見を引き出す努力を続けることで、チームの心理的安全性が高まります。その為に、リーダーがしっかりと意識し、学び続け、先に述べた ①土台をつくる ②参加を求める ③生産的に対応する という3つの行動を続けていくことが大切なのです。

心理的安全性に関連するオススメの本

最後に心理的安全性について学ぶ上で多くの学び、気づきを得られるオススメの本がありますので紹介させていただきます。よろしければ是非手に取っていただければと思います。




いいなと思ったら応援しよう!