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正直、ペルソナを設定する意味が未だにわからない。

マーケティングの仕事をして、もう17年経つ。

しかし今だに自分のことを「マーケティングができる人」と思うことができない。そのくらいマーケティングは難しいし、奥が深いし、「正直、やってみないとわからない」ことも多い。

そんなマーケティングの仕事で、ずっと引っかかっていることがある。

それが「ペルソナ」だ。

マーケティングの世界では頻出ワードであるこの「ペルソナ」。
簡単にいえば「商品やサービスのユーザー像」のこと。

似たような表現で「ターゲット」もあるが、このターゲットの解像度を上げたのが「ペルソナ」になる。

ちなみにターゲットという表現に対して、最近は「軍事用語を使うべきではない」という指摘もある。

さて、そんなペルソナだが、マーケティングの世界ではやたらと細かく設定する

・どんな家族構成の人か
・どんな仕事をしている人か
・どのエリアに住んでいる人か
・どんな雑誌を読んでいる人か
・世帯年収はいくらの人か
・趣味は何の人か

などなど。

時には「このペルソナを高橋さんとします」など、仮名までつけて設定することもある。

こうしてペルソナを完成させ「今回のキャンペーンで狙いたいのはペルソナで言うと、高橋さん(仮)のタイプですね」といった使い方をする。

ペルソナをつくれば、ユーザー像がハッキリする。
ペルソナをつくれば、チームで共通認識が持てる。

これらがマーケティングでペルソナを設定するメリットと言われている

が、


僕はずっとモヤモヤしている。

その理由をつらつらと書いてみた。

今日はそんな話。

■0.01%の違和感

ペルソナにモヤモヤする理由は大きく2つあって、そのうちの1つは

そんな人、いないじゃん


ということ。

「20代の男性、とかじゃリアリティが湧かない」という気持ちはわかる。

だからと言って架空の人物を設定してしまったら、もっとリアリティが湧かない。

ペルソナで設定されるのはいつも「いそうだけど、実在しない人」だ。

もちろん、きちんと調査をすれば、ペルソナとの合致率99.9%みたいな人は見つかるかもしれない。でもそんな人を見つけるのは大変だし、見つかっても調査に応じてくれるかはわからない。

だったら、一旦架空の「高橋さん」を生み出そう、というのがペルソナだが、実際に「ペルソナの高橋さん」と全く同じ人物は、おそらく存在しない。

例えばスペックは同じでも名前が「高橋さん」ではない人は、高橋さんではない。

僕はこの0.01%のズレが、マーケティングにとって重要でないかと思っている。

みんなが「こういう人いるよねー」とは思うのに、実際には存在しない。

マーケッターたちの脳内にしか存在しない架空の人物(ペルソナ)を思い浮かべて、放たれた施策には果たしてリアリティはあるだろうか。

だったら、ペルソナとは多少違っても、実際に知っている◯◯さんを思い浮かべて放つ施策の方が勝算がある気がする。

事実を0.01%でも捻じ曲げてしまったら、マーケティングもズレが生じ始める。

■最後は結局マスメディア

ペルソナにモヤモヤする理由の2つ目は

で、どうやってセグメントするの?


ということ。

具体的には、ペルソナでかなり細かく設定された人物像にアプローチするには何のメディアを使えばいいのか?

と言う問題だ。

例えば、先ほどのペルソナ高橋さんを

・静岡県出身で
・3人兄弟の長男で
・フリーのデザイナーで
・吉祥寺に住んでいて
・POPEYEを読んでいて
・年収500万円で
・趣味はサウナの人

という設定をしたとして、この高橋さんにアプローチするための最適なメディアは何だろう。

おそらくペルソナと紐付け可能な広告メディアはPOPEYEの雑誌広告か、吉祥寺駅の駅広告だろう。

ただ、実際はPOPEYE以外の雑誌にも広告を出すし、駅だって吉祥寺に絞るわけではない。

施策を実施するタイミングになると、あれだけ細かく設定した「ペルソナの高橋」さんは急に「高橋さん的な人」へと拡大解釈されていく。

こういうやりとりを見てしまうと、

「だったらあそこまで細かく設定する意味はあったのだろうか?」
とか
「最初からメディア単位でペルソナを考えればよかったのでは?」

などと思ってしまう。

顧客の目線になって考えよう、という本質で始まったペルソナなのに、結局最後はマス(メディア)の発想になってしまうし、ならざるを得ない点にモヤモヤしている。

以上が、僕が17年間マーケティングの仕事をしても解消しないペルソナに関するモヤモヤだ。

こんな初歩でつまづいている時点で、やはり僕は「マーケティングができる人」ではないのだと思う。


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小島 雄一郎
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