働き方改革の前に止めるべきは「社員の管理」
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
日経の連載企画「データの世紀」と連動した以下の企画。最近は働き方改革の一貫として、職場でのAI利活用が盛んだと聞きます。
日本企業の間で、人工知能(AI)で従業員の業務用メールを解析し、談合や汚職などの不正を早期発見するシステムを導入する動きが広がっている。不正を示唆する単語や文章を自動的に感知でき、人間がいちいちチェックするよりも効率的だ。ただ従業員のプライバシー侵害のおそれを指摘する声もあり、導入時には従業員への十分な説明などが求められそうだ。
業務PCでのWeb閲覧やメールなど、基本的にはログが取られているものという認識はあるでしょうか? コピーをする複合機にもログ機能があり、コピーやFAXをしたデータというのは一定期間内部に溜められています。近年ではコンプライアンス強化のため、主に大企業では当たり前に導入されているものだと思います。
万が一のためにログを取っておくのは許容できたとして、自身の生体情報をモニターされるのはどうでしょうか?
東急不動産ホールディングスと東急不動産は9月30日、東京・渋谷の新築オフィスビル「渋谷ソラスタ」で8月に稼働した新本社オフィスの報道陣向け内覧会を開催した。最新のIT(情報技術)を駆使したスマートオフィスを標榜。10月1日から顧客企業向けの内覧も受け付けて、自社のオフィス物件を売り込むためのショールームとしても活用する方針だ。
今回の実証実験で新本社の従業員は頭部に脳波測定キットを着用し、測定データを基に「ストレス度」「集中度」「興味度」「快適度」「わくわく度」の5つの指標を可視化する。
新本社はフリーアドレスデスクを採用し、デスクのレイアウトを柔軟に変更できるのが特徴だ。ストレス度などの指標を見ながらレイアウトを変更したり、リラックス効果のある植栽を追加したりして勤務環境の改善を図る。
上記の実証実験では担当部署内で許諾を得た社員に対して行っているとのことですが、やりたいことと測定方法がいまいち合っていないのかなと思います(植栽によるリラックス効果は、簡易的な脳波測定キットでは計測できない等々)。得られるデータの精度も気になりますし、その分析方法と利用用途についても議論があるでしょう。例えば、ストレス度が有意に高く、集中度・興味度・わくわく度のいずれもが有意に低い社員が発見されたとして、それを知って会社はどうするのか? 配置転換をするのか、人事とは無関係なのかなど、ことさら丁寧な説明が必要になるでしょう。
また、残業削減の一貫として、社内に監視ドローンを飛ばすようなソリューションもあります。
NTT東日本とビルメンテナンス事業の大成は7日、ドローン(小型無人機)を使って夜間のオフィスを巡回するサービスを2018年4月に始めると発表した。屋内型のドローンがオフィスの画像を撮影し、管理担当者に撮影した映像を送信する。オフィスにいる社員の残業を抑えるよう知らせたり、見回りの警備員を減らしたりできる。
全体的な方向感として、なぜ「社員を管理・監視」する方向にいくのでしょうか。それは、会社が社員を信用していない「性悪説」で動いているからに他なりません。その背景には、日本の厳しい解雇規制やリスクをゼロにしたい文化があると考えています。性善説にして問題が起きたらどうするのか?といった具合です。欧米の場合、単にクビにすればよいですし、少数の問題行動を起こす社員のために大多数の社員を抑えつけるようなことは考えられません。生産性の総和が明らかに下がりますので。このあたりの考え方の違いが、労働生産性に直結しているのではないかと思います。
では、欧米型の代表格として、マイクロソフト製品でのAI機能をみてみましょう。
https://products.office.com/ja-jp/business/myanalytics-personal-analytics
「見える化」と「より良い働き方のアドバイス」により、その人自身の行動を促すことがメインとなっています。AIアシスタントの Cortana を Outlook と連携している場合、メールのやり取りを分析してリマインダーを送ってくれます(おそらく英語のみ対応)。たとえば、メールで仕事仲間に「I will send you that report by Friday.」と送っていた場合は、前日に「Heads-up」というメールがやってきます。「前にレポート送るって言ってるけど、大丈夫?」という感じです。
メールを解析しているという意味では先に紹介した「不正検知」とやっていることは同じなのですが、自分の仕事を助けてくれる機能であれば大歓迎ですよね。
これからも様々な新技術が働き方をアップデートしてくれるものと思います。ぜひ、考え方自体も性悪説から性善説へとアップデートし、だれもが生産性を高められるような方向にいってほしいと願っています。
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タイトル画像提供:Melpomene / PIXTA(ピクスタ)
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