予測不能という新たな日常

 コロナウイルスは、この世界が予測不能であることを目の当たりにさせた。しかし、世界はもともと予測不能なのであり、このウイルスで始まった訳ではない。

 予測不能ということは「平時」という概念はもともとなかったということである。我々の判断の仕方は、平時という現実離れした前提から離れなくてはならない。

 従来、判断に頼りにしてきたのは、過去の実績やデータである。
 過去の実績やデータを使って、その判断や選択の成否の見込みを客観的に評価し、最も成功しそうな選択肢を選ぶのが良い判断と考えられてきた。
 今でも多くの企業人は、この方法を悪いことと思っている人はいないと思う。

 しかし、これは明らかに間違った判断なのである。
 よく考えてほしい。「予測不能である」というのは
 「未来は過去の延長線上にない」ということである。
 だから、未来に向けた判断を、過去のデータや実績を元に行ったら、
 必ず間違うのである。間違うことが保証された道ということである。

 それではどうすればよいのか。
 我々は、予測不能な時代に「変化に敏感」でなくてはならない。
 変化への感度を上げるには、過去の延長線上にないことが、
 どこに起きているかを体系的に見つけ、それを考慮した行動を行う必要がある。

 しかし、変化がおきた当初は、その事象のデータは必然的に少ない。
 上記のように過去の実績やデータを使って判断すると、変化を無視してしまうのである。
 
 統計学では、統計有意を問題にする。
 データが少なくて偶然かもしれない結果には信用するな、というのである。しかし、上記のように、変化が起きた初期には、常にデータが少なく、
 偶然との違いを明確にすることはできない。
 だから、統計学を使うと、必然的に、変化に鈍感になってしまうのである。現状の統計学の枠組みは、予測不能な世界の現実を無視したものともいえるのである。

 統計有意になる前に、行動を起こすのが大事なのである。
 確実なことが分かってから行動するのでは遅いのである。
 そのためには、過去の延長上にないことをデータやAIを使って常に見つけることである。
 過去の延長になく、しかも、もし本当なら、影響が甚大なことは特に大事である。そのようなことが見出されたら、優先的に資源を割り当てて、
 データを取得し、実験をし、分析を行うことである。

 実はこれは、単なる定性的な考察ではなく、
 データを使った大量の実験で有効性が検証されたアプローチなのである。
 これをコンパクトにまとめると下記のようになる:

 1. 過去のデータを用いて過去の延長ではどうなるかを予測する(Predict)。
 2. 過去の延長と現実との乖離を特定する(Perceive)。
 3. 乖離が起きている対象に対し優先的に行動を起こす(Prioritize)。

 この3P(Predict/Perceive/Prioritize)こそが、予測不能なこの世界に
 的確な判断を行う原則なのである。

 そして、この3Pの仕組みはまだどこにもないのである。
 当然、今後、この3Pの仕組みを社会のあらゆる機能に確立する必要がある。感染症への対策を初め、あらゆる判断に役立つはずである。


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