見出し画像

地域を持続可能にするブランドコミュニケーションとは?(アムステルダム篇)

欧州(オランダ・コペンハーゲン)を訪れると、観光戦略や都市のブランドコミュニケーションが大きく変わってきていると感じています。

BBCが「アムステルダム 悪質な観光客と戦う欧州の首都」と題した記事を2023年8月に出しています。

悪質な観光客来ないで、をストレートに打ち出す

アムステルダム市の観光戦略のテーマが変わってきているとのこと。

何が変わってきているのか?

・観光客と地元住民の双方に利益をもたらすこと
・クリエイティブで持続可能なアクティビティーを増やすこと

たくさん集客して喜んでもらうという発想から抜け出そうとしているとのこと。

この変化は、地域でマーケティング・ブランディングに関わる人は、理解しておけるとよいと感じています。

もう一つ面白いアムステルダムのブランドコミュニケーション「stay away campaign」をご紹介します。

アムステルダム市議会は今年、「ステイアウェイキャンペーン」の実施を発表した。特定の国の若い男性が「パブ・クロール・アムステルダム」、つまり「はしご酒 アムステルダム」などのワードで検索すると、ドラッグやアルコールのリスクを伝えるオンライン広告が表示されるものだ。

Forbes:オランダ異例の「オーバーツーリズム対策」 持続可能な観光のヒント

集客数=訪れる観光客数をKPIにおき、魅力をわかりやすく発信するコミュニケーションではなく、滞在体験の質を高め続けるための問題提起を含むコミュニケーションに変化しています。

「誰のどんな行動を歓迎するのか?」を明確にすることは、持続可能なブランドをつくる上で必須だと考えています。

サステナビリティを押し付けないホテル体験

続いてホテルの宿泊体験の変化についてです。

ホテルも持続可能であることは大前提となっています。
欧州は、サスティナブル認証を取得・高スコア獲得することは、選ばれるために重要なことと捉えられていることがわかります。

下記はオランダ本社のブッキング・ドットコムのサスティナブル認証について。

ブッキング・ドットコムでは「サステナブル・トラベル」プログラムを行っている。これは、ブッキング・ドットコムが定めたサステナブルへの取り組みに関する認証項目に宿泊施設が回答し、認証されると、ブッキング・ドットコム上でサステナブル・トラベルのバッジが付くというもの。

中略

現在、全世界では欧米を中心に57万3000以上の施設がサステナブル・トラベルのバッジを取得している。これに対し、日本国内の認証施設数は約6700で、しかもその多くはレベル1だ。

日経クロストレンド:コロナ後「3つの旅行トレンド」 ブッキング・ドットコムが調査

地球への配慮をしつつ、心地よい宿泊体験を両立する戦略・デザインの工夫が学びに溢れていました。

ホテルジャカルタ・アムステルダム

アムステルダムにある、ホテルジャカルタ。
アムステルダムのサスティナブルホテルの代表格として紹介されていたので、見学に行ってきました。

こんなロビーになっています。

・29種の熱帯植物が生い茂る庭園→室温の冷却作用を果たす
・地下には雨水を16万リットル貯められる貯水槽が設置されており、これが亜熱帯の植物の水分供給に利用
・各部屋や共有部分にはエアコンがなく、代わりに植物や通風、地中熱などを利用して室温を調節
・構造と仕上げの約9割は木材や竹などの再生可能な資源で構成

ホテルジャカルタ・アムステルダムの仕組み要約

裏側のエネルギー循環の仕組みはもちろん素晴らしいのですが、滞在体験として、自然と持続可能性(サステナビリティ)を考える体験設計になっていることがポイントだと感じました。

ソーシャルハブ・アムステルダム

The Social Hub Amsterdamは、ホテル、学生寮、そしてコワーキングスペースとして機能するユニークな複合施設です。
従来のホテルとは異なり、学生、観光客、ビジネスパーソン、フリーランス、多くの人にとっての居場所・コミュニティになることが掲げられています。

アムステルダムの学生やフリーランスなど、地元コミュニティの中にいる感覚を持てる新鮮な体験でした。

The Social Hub Amsterdamのブランドブックには、下記のような言葉が書かれています。

本当の持続可能性を実現するためには、「環境視点」と「人間視点」の両方に投資しなければならない。

サステナビリティページより引用

地球環境への配慮もしっかりしていて、シャワーを浴びたとき、なんだろこれ?と確認すると
ゆっくりシャワーを浴びてね、だけど地球環境のことも考えよう…
と水量と水温をモニタリングする機器がついていました。

デザインも可愛いので、嫌な気持ちはしませんでした。

水のデザイン

ちなみに、アムステルダムのホテルには、共通してオランダのメーカーEARTH WATERが設置されていました。

ホテルごとにデザインがカスタマイズされています。

アムステルダムの宿泊体験から感じたことのポイントをまとめると、

良いホテルの体験とは、日常生活の意識に働きかけ、未来や社会にとって良いアクションを増やすことが意図されている

ということです。

滞在する場に、日常の中でちょっとした良い行動を埋め込むデザインを入れ込むことが、優れたブランド体験につながると考えています。

サスティナビリティは追求するけど押し付けないコミュニケーションを大切にしたいですね。

地域の持続可能性とマーケティング

どのホテルも温室効果ガス(GHG)排出量を削減する、廃棄物をゼロにするなどは、国がしっかり基準を決めているため当たり前に取り組まれています。

日本でも、持続可能性に関する宣言を出したり数字を公開したりといった取り組みは出てきていますが、「顧客体験やコミュニケーション設計」の視点はアムステルダムから学べることは多いと感じています。

ポイントを2つ整理します。

1. その地域や場では「誰のどんな行動を歓迎するのか?」を示すこと
2. その地域や場での学びは「日常のどんな良い行動につながるのか?」を示すこと

地域を持続可能にするためのブランドコミュニケーション設計

この2つの視点は、地域のブランド戦略やコミュニケーション戦略を考える上で大切にできると良いと考えています。

日本・地域の観光戦略も、全ての人に対して良い体験を提供する(過剰なおもてなし)ではなく、未来や社会にとっても良い体験から逆算して戦略をつくっていきたいですね。

次回は、コペンハーゲン篇も書いていきます。

ここから先は

0字