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映画館でアニメ体験:都市移動型アニメ映画祭という興行モデル=ドイツ

ドイツのハンブルクで1月26日、アニメ映画祭「AkibaPass Festival(アキバパス・フェスティバル)」がスタートしました。2月10日までドイツ、オーストリアの11都市を巡回します。この映画祭は、シネコンの複数のスクリーンを貸し切り状態にして一日中、最新のアニメ映画が楽しめるという単日開催の上映イベントです。

「アキバパス・フェスティバル」は年に一度、毎年この時期に開催されています。前身のイベントから数えて今年で5回目の開催となり、ドイツ語圏のアニメファンにも広く受け入れられている様子がうかがえます。

上記のリンクからタイムスケジュールが確認できます。今年上映されるのは「ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow」や「劇場版 のんのんびより ばけーしょん」など12タイトルで、2スクリーンを朝から深夜までフル稼働させる充実のプログラムとなっています。さらにこのアニメ映画祭は毎年、作品の関係者を日本から招待しており、ドイツのアニメファンも注目のイベントとなっています。今年はハンブルクと翌日のベルリン会場に声優の梶裕貴さんが来場し、現地の盛り上がりをツイッターで伝えています。

「アキバパス・フェスティバル」では新作のアニメ映画タイトルを一度に映画館で楽しめるというコンセプトが好評のようです。このようなビジネスモデルを実施可能にする背景を探ってみたいと思います。

この映画祭の主催はペパーミントアニメというドイツ企業です。日本ではまったく知られていない会社だと思いますが、アニプレックスなら聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。日本国内の複数のアニメスタジオを束ねる大手アニメ製作会社ですね。このペパーミントアニメは日本のアニプレックスと現地企業が2015年に合弁で設立した会社となります。

ペパーミントアニメは、アニプレックスが権利を保有するアニメ作品のドイツ語版を製作し、ドイツ語圏に向けてブルーレイを製作、販売しています。つまりアニメ映画祭での上映タイトルの充実は、単なるローカル版製作にとどまらない日本企業との緊密な連携が功を奏していると見ることができそうです。

少し状況を整理してみます。

1) ペパーミントアニメにとってはアニメ映画祭で作品を上映することにより、ブルーレイなどの物理メディアの販売促進に貢献してそう。

2)日本企業にとってもドイツ市場の攻略に向けて、映画祭というフォーマットを利用し一度にたくさんのファンに作品を見てもらう機会を提供する、というのはマーケティング手法としてかなり魅力的。

3)付け加えるなら、映画館のスクリーンを貸し切り状態で使用することにより、近年停滞するドイツの映画館産業にも貢献してそう。

このように、映画館を利用したアニメ映画祭というコンセプトは、2重3重のWinWin関係を構築していると見ることができそうです。

突然ですがCOMEMOは「気づき」をシェアするメディアですので、今回のKatahoの「気づき」を。

ドイツに限らず日本国外における日本製のアニメやマンガ、ゲーム、ボーカロイド(初音ミク)の人気は、ネットの口コミなどを介して自然に発生するもの「だけ」ではないと考えています。アニメ映画祭など成功のカギを握るのは、現地での「流通」があるかどうかだと改めて思いました。

アニメ映画祭で作品を有料で見てもらい、その後、作品を買ってもらう。そうして、日本のアニメ産業に資金が還流し産業が回っていくのではないでしょうか。ドイツにおける日本企業と現地企業の取り組みは、今後も注目していきたいと思いました。いかがでしょう?

おまけ:アニメ映画祭「アキバパス・フェスティバル」は、最終日の2月10日のウィーン会場までドイツ語圏の各都市を巡回します。以下に開催都市スケジュールのリンクを貼っておきます。ご興味ご関心のある方はぜひこの機会に会場の様子を見にいってみてください。;-) 


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