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気候変動に関する情報開示を求める株主提案はどこまで認められるのか

そろそろ株主総会シーズンですね。先週大阪で講演した際にお会いした企業経営者の方たちは、総会シーズンがG20と重なって調整に苦慮されたと仰っていましたが、そんな会話が飛び交う季節になりました。

さて、最近ESG投資が活発化し、多様な手法の中でも、株主が企業と対話し影響力を行使する中で長期的な成長を促していく(エンゲージメントと言われます)ことが積極的に推奨されています。株主総会というのはそういう意味でとても良い機会であるわけです。株主が議題・議案の提案をする権利(株主提案権)を行使して、企業にESG的視点の取り入れを促していくといことも多く見られるようになりました。

ただ、ESGのE(環境)の本丸と言われる気候変動問題については、問題がグローバルであり、超長期的、その上科学的な不確実性もまだ相当高く、影響や適応のコストがどれほどかの想定にも相当大きな幅があります。そうなれば当然のことながら、どのような政策が採られるかの不確実性はかなり高いわけです。気候変動のような社会課題を経営戦略上どう位置づけるかといった視点は重要ですが、それを促す株主総会決議の適切性は判断が難しい。企業からすると「そういわれましても・・・」となってしまうのもうなづける部分も多いですよね。

そもそも株主提案権を絶対的なものとしてしまうと、どんな提案でも取り上げざるを得ず、株主総会という貴重な機会の時間を無駄にすることにもなりかねません。以前野村ホールディングスさんは、「野村ホールディングス改め野菜ホールディングスにせよ」、「オフィス内の便器を全て和式とせよ」と言ったものを含む約100個の提案を受けたことがあるそうですが・・・私が担当者だったらどんな対応をしただろうと考えてしまいました(笑)。これも「株主提案権の行使」ですからねぇ。

アメリカでは、株主提案を排除できる要件が定められていて、事前に「この提案は排除できるという要件に該当するか」についてSEC(米国証券取引委員会)に問い合わせして見解を得ることができるようになっています。最近オイルメジャーやAppleなども株主提案の妥当性をSECに問い合わせることが多くなり、そこで示された見解を丹念に見ることで気候変動に関する情報開示はどこまでが認められるのかを考えてみました。

企業経営の中に気候変動対策という価値観を取り入れるべきというのは当然ですが、「べき論」というか概念で話すにとどまっている人が多いのも事実だと思っています。このグローバル、かつ超長期的、かつ不確実性の高い課題について、投資家と企業がどういうコミュニケーションをとっていくかについて、もう少し議論を深めていきたいですね。



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