今年一年は早かったか
大晦日です。
「一年早かったなあ」という人も多いと思います。特に大人になってから、あるいは歳を取って、ますます早くなったなあ、というのはよく聞く話です。
「なぜ大人になると時間が早く過ぎるようになるのか」について、福岡伸一氏は『動的平衡:生命はなぜそこに宿るのか』で、生理的な説明を試みています。
福岡氏の説明は「私たちの新陳代謝速度が、加齢とともに確実に遅くなる」ことがその原因だというのです。「新陳代謝が歳と共に遅くなるから、相対的に周りの変化を早く感じるのか」ということでした。
これを読んで「なるほど」と思いました。実際、歳を取る毎に、一年が経つのを感じていたので、生理現象ならばしようがない、と半ば諦めていたのでした。
ところが、今年は状況が変わりました。実は、とても長かったのです。
なぜかと考えました。今年は、ともかく年初に予測できないことが沢山起きました。仕事上では、新しい事業組織の立ち上げで、先の見えない中を進まざるをえない状況でした。加えて、これまで行ったことのない国での講演が増え、さらに、家族の海外旅行でも、予約していた車が借りられないというハプニングが起きました。
全体には、やってみないと、その先が見えないことがとても多かった年でした。
これから得られた仮説は、やってみないとわからないような初体験の状況では、時間が長く感じるようなのです。そう考えると、大人になると時間が短く感じることは理解できます。大人になると、既に体験したしたことが増え、やってみないとわからないことが普通は減ります。その分、予測することが可能になります。だから時間が短く感じるのだと思うのです。子どもは逆に、毎日が新しい体験です。だから、一年が長く感じるのは自然です。
このような未知の状況では、どんなことを体験するでしょうか。上記の妻と渡米して予約したレンタカーが借りられなかった時、そこにあった最後の一台の車はピックアップトラックでした。このトラックで、これから予定している2500kmドライブ旅行を行うのか、という判断を迫られました。予定が狂ったので、どこか別のところで、予定していたセダンを探すことも考えたその時です。
「アメリカらしくていいじゃない。前から乗ってみたかったんだ。」妻の前向きな言葉でした。ピックアップトラックを借りることにしました。
乗ってみると、当然のことながら、車体は大きく、駐車しにくく、ガソリンをやたら食いました。でも、これぞアメリカのドライブという旅行を楽しめました。結果として、濃い時間を過ごし、それが最高の思い出にもなりました。
やったことのないことにとり組むと、必然的に想定外のことが起きます。その時に、迷わずこの時のように「丁度良かった。これをきっかけにXXしてみよう」といって前進すると、その先で、濃い時間が過ごせるのではないでしょうか。
その結果、一年が長くなるのかもしれません。もし皆さんが、一年を長く感じたいなら、やってみたことのないことに取り組み、想定外のことには、「丁度良かった。これをきっかけにXXしてみよう」といってみて下さい。
一年を振り返り、時間の早さと濃さをテーマに文章を書いたら、当初思ってもみない結論になりました。
でも「丁度良かった。これをきっかけに、そろそろ紅白を見よう」。
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