BOEのしくじり?
BOEは従前より、金利上昇への転換を図るとすれば一番早いと言われていた。だからといって、金利を上げるには、経済指標によるサポートなども必要であるし、タイミングが難しかったことは言うまでもない。もっとも、足元では11月分のCPIは5.1%と10年来の水準まで上昇しているなど、インフレと安定成長を示す経済指標が増えていた。
12月のBOE金融政策委員会MPCでは、大方の予想に反し、銀行金利を15bp引上げ、0.25%とすることを決定した。「オミクロンの蔓延により利上げを先送りするメリットもある」とタカ派のソーンダース氏が発言していたことから、今回の利上げは見送られるのがコンセンサスだった。オミクロンが更に蔓延すれば、一層の物価上昇にもつながりかねない中であり、かつ、むしろ前月にも金利を上げることは可能であったことを考えると、オミクロンの懸念が高まる今月に金利上昇に転じる理由は乏しかった。しかも、FRBの決断の後に追随したようで、BOEとしては“しくじり”とまで言ったら言い過ぎだろうが、聊か気持ちがよくないのではないか、とも思う。
実際、イギリスにおけるオミクロン株への感染動向はなかなか厳しい。重篤化のリスクはそう高くないながら、12月15日現在のコロナ新規感染者数は78,610人とパンデミック開始以来最高となっている。もっとも、ブースターの接種の促進を強調しているボリス・ジョンソン首相は景気回復の足取りがしっかりしている間に、ブースター接種を早めに多くの国民に徹底しようとしている。追加の規制よりブースター接種のカバー率上昇でなんとか乗り切ろうとしている、というわけだ。現在は12歳以上人口の43%がすでに接種を完了したばかりだが、接種率の上昇と景況感とのバランスを取ることを狙っている最中なのである。
こうした微妙な問題を残しながら、いち早く金利上昇に移ったBOE。この後、金利上昇によって、景気がどれ程スクイーズされるか、などに注目だ。インフレ気味の中での景況感維持とオミクロン株の封じ込め、加えて金利上昇からの影響をうまくコントロールしていけるか。他国へのインプリケーションとしても観察が必要だ。