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DXで重要なことは、単なるデジタル化やIT投資ではない。自分の仕事や手続きの整理である(日本を強靭化するDX #1)

(1) デジタル・トランスフォーメーションという言葉が復活

 また、「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉の使用頻度が増えてきた。

 日本行政のデジタル化を進めようと、骨太の方針が出た。私の考えは、日本にはデジタル・トランスフォーメーション(DX)が、必須だと考えている。日本を強靭な国家にするには、日本人の知恵で、他国にない、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を進めるべきだろう。しかし、この骨太の方針は、本当にデジタル・トランスフォーメーションなのだろうか?

 くデジタル・トランスフォーメーションに必要なことは、IT投資ではなく、自分の仕事や手続きの整理である。このことを、もっと議論してよいだろう。

 この「1年で行政デジタル化 「失われた20年」繰り返す懸念」の写真でもわかるように、この会議はデジタル・トランスフォーメーション以前の会議の方法である。会議だって、デジタル・トランスフォーメーションで効果が最大化できる。つまり、会議のやり方を変えること。それも、会議にデジタル技術を導入して、会議の価値を高めること。それが、トランスフォーメーション(変体)である。

 今の業務をそのままにして、そこに「デジタルというスパイス」を加えても、業務の味が多少変わる程度で、新しいメニューにはならない。デジタル・トランスフォーメーションというのは、今までの業務を見直し、そこでにデジタルというスパイスの本質を理解して、料理に加えて、新しい料理にすることである。

 そして、日本には、デジタル・トランスフォーメーションが必要だ。理由は、日本の置かれている状況だ。「人材不足」、そして「知恵の時代」において、デジタル・トランスフォーメーションで、「人による」「高付加価値」な事業を行わないと、世界で戦えない。

 そこで、これから数回にわたって、デジタル・トランスフォーメーションについて、その「必要性」、そして「取り組み方」について、再度考えてみたい。

(2) 10年前にも似た景色が

 デジタル・トランスフォーメーションではなく、デジタル化という取り組みは、以前から日本では進んでいた。例えば、10年前には、日本はアメリカよりも、携帯電話をよく使っていた。そのことにより、私たちは、日本がデジタル先進国だと誤解してしまった。

 しかし実態は、携帯電話を持っているだけで、それを有効活用しているわけではない。今回のコロナ禍で、多くの会社がリモートワークを行っているが、そのリモートワーク、皆さんのスマートフォンで、多くのVideo会議が行えることを、どの程度の人が知っているだろうか?そして、実際に行った人はどの程度いるだろうか?

 またそのスマートフォンで、会社のメールや、会社の承認業務を行えている会社はどれだけあるだろうか。それらは、スマートフォンではなく、PCで行うことはと思っている人もいるだろうが、実は会社のパソコンとスマートフォン、コンピューター的に言えば、ほとんど違いがなく、むしろスマートフォンの方が、処理が早いこともある。

 このままだと、私たちは10年前に行った、間違いを再度行う。この記事は、10年前の記事である。この時に、「新IT戦略」と言っていたのである。間違いは繰り返してはいけない。

(3) 何が間違っていたのか?

 過去の間違いは、デジタル機器の導入が、重要なことで、デジタル・トランスフォーメーションへの道と思っていたところだろう。実際には、デジタル・トランスフォーメーションとは、第2次産業革命と同じくらいに、仕事・業務の方法の変革である。

 第2次産業革命では、工場での「大量」「安定」生産のために、モノづくりの方法を変えた。今回のデジタル・トランスフォーメーションは、知的生産活動の変革である。書類の審査、会議の進め方、事業の決済、このような業務法方法の変革である。

 つまり、コンピューターの導入や、テレワークの設備の導入は、デジタル・トランスフォーメーションではないのである。デジタル・トランスフォーメーションとは、コンピューターやテレワークの設備を活用した、ビジネス全体の最適化なのである。

(4) 「真の人間の仕事」と「デジタルで自動化する仕事」の整理が、デジタル・トランスフォーメーション

 まずは、デジタル・トランスフォーメーションを進めるにあたり、日々繰り返しの業務を洗い出してほしい。それらを、自動化する。そして、その空いた時間は、人にしかできない創造的な知的生産を行う。これが、デジタル・トランスフォーメーションである。

 会社のネットワークの回線を高速にする。会社のメールサーバーの容量を多くする。「とぎれとぎれ」で、いらいらするVideoの映像をスムーズにすることは、デジタル・トランスフォーメーションではない。

 少し、冷静に「真」のデジタル・トランスフォーメーションを考えてみたい。


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本間 充 マーケティングサイエンスラボ所長/アビームコンサルティング顧問
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