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週休3日に舵を切る欧州、日本は?

民間企業でも好印象な週休3日制

欧州では、近年、週4日勤務(週休3日)という新しい働き方に向けて実証実験が行われている。英国では去年6月に大学を中心に試験導入して好感触を得て、去年の下半期から6か月間、企業でも試験投入した。その結果、参加した企業のうち9割以上が、週4日勤務を継続したいと回答している。

英国だけではなく、スペイン、フランス、ベルギー、アイスランドでも週4日勤務の試験導入は行われている。その反応は概ね好評だ。

欧州で取り組まれている週4日制は、原則として給与は変わらないように調整されている。そうはいっても、国によって細かい違いはある。スペインの様に総労働時間が短くなりながらも給与が変わらないようにする国もあれば、ベルギーのように総労働時間を維持しながら週4日制を目指すなど、各国は試行錯誤している段階だ。

週4日制には「仕事に人を就ける」働き方が求められる

日本でも週4日制の議論は、政府と企業の双方でなされている。特に、知的労働が増え、労働時間の長さが生産性に直結しなくなってきた現代のビジネス環境において、休みを自分のペースに合わせて自由に取ることは重要な検討事項になっている。
子育てや介護による突然のトラブル、女性の月経、心身の病気や不調への配慮など、これまでは無理をして働くことが多かった。その結果、公私ともに悪影響を出しながら働くことが、生産性のために本当に正しいのかは疑わしいところがあった。特に、世界的に雇用の多様化が進む中で、働き方の柔軟性をより高める方法として週4日制が出るのは自然の流れだ。
それでは、日本も欧州のように週4日制を導入できるかと言うと、残念ながら難易度は欧州よりも高いだろう。それを阻むのが、日本独自の働き方である「人に仕事を就ける」という考え方だ。
欧州では、基本的に「仕事に人を就ける」やり方が原則だ。人材を雇用するときに、そのポジションの仕事内容(職務)を決めて、その仕事を遂行する能力を持った人材を採用する。採用された人材は、雇用時に約束された仕事内容を遂行できれば責任を果たしたことになる。近年では、職務にも柔軟性を持たせて、自分ひとりで完結する内容よりもチームワークが重視されるように変化しているが、自分の仕事の責任範囲が明確なことがポイントだ。
一方、日本の場合は、「人に仕事を就ける」ために仕事の責任範囲が曖昧だ。そのため、同じ職位にあっても、人によって業務範囲も責任範囲も異なってくる。そのため、「業務時間いっぱいを使って何でもやって欲しい」になりやすい。
週4日制で週5日制と同じ生産性を出すということは、それだけ勤務時間中の働き方を効率良くする必要がある。「仕事に人を就ける」欧州では、個人のやるべき責任範囲が決まっているので効率化すると単純に労働時間を短縮できる。しかし、「人に仕事を就ける」日本では、責任範囲が曖昧なので効率化すると業務量が増えるだけで労働時間の短縮に繋がりにくい。できる人に仕事が集中するためだ。加えて、仕事が特定の個人に集中することから業務の属人化も強まる。属人化が強まると担当者が休むと業務が滞るため、結局休めなくなる。
つまり、「人に仕事を就ける」日本では、これまで業務を効率化しても個人の負担が減ることに繋がりにくい。これが無理やり週4日制になると、残業がなくなったときと同じ混乱が起きるだろう。「成果を変えずに、勤務日を減らせ」と言われるだけで、現場が疲弊する。

そもそも論として、欧州でもスイスのように週4日制に懐疑的な国はある。米国も週4日制には乗り気ではない。働き方の柔軟性を高める取り組みとして、週4日制は検討する価値のある施策だ。反面、生産性を維持したまま勤務日を減らすという方法には課題がまだまだ多い。週4日制を進めるのであれば、官民問わずにトライ&エラーを繰り返しながら、日本の文化に合った形での実装方法を模索すべきだ。

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