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女性たちの命綱「Mask19」 世界中で激増するDVとその対策、フランスの事例まとめ


新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、国連事務総長アントニオ・グテーレスがある声明を出しました。

僕はてっきり「コロナの予防を徹底するように」的なメッセージかと思ったのですが、違いました。

平和というのは戦争がないという意味ではない。新型コロナウイルスのためにロックダウンしている都市で暮らす多くの女性が、本来最も安心なはずの場所で暴力に直面している。それは彼女たち自身の家である。

今日、私は全世界の家庭内の平和を訴えたい。

私は全ての政府に新型コロナウイルス対策と同様に、まず女性の安全を確保することを要請する。(拙訳)


調べてみると、新型コロナウイルスが世界中に拡大し各国政府が都市封鎖を行って以降、女性に対するDV(家庭内暴力)が激増していたことがわかりました。


因果関係は極めてシンプルで、DV被害者が外に出る機会を失ってしまったためです。

加えて、外に出れないストレスや経済的に不安定になることでDV加害者がより攻撃的になっていることも指摘されています。



では、実際にどれくらいDV被害が増加したのか。

まだ世界中の各都市では都市封鎖を開始して数ヶ月に満たないところもあり統計データがきっちり揃っていませんが、速報的にメディアで報じられつつあります。

その内容を一部抜粋してまとめました。比較単位がバラバラですが、参考にはなるはずです。

(参照元記事を最後にリストアップしています)


新型コロナウイルスの震源地となった武漢では、都市封鎖された2月の警察へのDVの通報が3倍(前年同時期47件 → 162件)

パリでは都市封鎖が始まってからの3週間で警察へのDV通報が前月比で36%増加。フランス全体では32%増

デンマークでは緊急事態宣言の直後の1週間で、DV被害者用シェルターへの問合せが約2倍に

ベルギーでもDV相談窓口への問合せが3倍

インドでは移動制限がかけられて直後の1週間、DV件数が通常時の2倍

南アフリカでは、都市封鎖直後の1週間で2,300件のDV通報がありました。

ブラジルでは国営のDVシェルターの利用率が40%~50%跳ね上がり、

キプロスでは虐待被害ホットラインへの問合せが30%増えました。



さらにいうと

フランスでは都市封鎖以降にDVが原因ですでに2名の女性が亡くなっており

スペインでは1名がやはりDVで亡くなっています。

そしてイタリアでは27歳の女性が亡くなりました。もうすぐ医師資格を得られるところだったそうです。彼氏のDVによるものでした。

英国BBCが下記の記事で報じています。



冒頭のツイートでグテーレス国連事務総長が「平和というのは戦争がないという意味ではない」と表現したのは的確としかいいようがありません。

日本でも「Stay Home」が合言葉になっていますが、それがDV被害を受けている女性や子どもたちにとって何を意味するのか、真剣に考える必要があります。

被害者にしてみれば、それは地獄です。



そして、いよいよ日本でも4月7日に政府より緊急事態宣言が出されました。

TVや新聞、ネットなどの各種メディアでは多くの人が経済対策について議論しています。

「自粛と補償はセット」というキーワードがよく聞こえてくるようになりました。


しかし、ここまでにあげた各国の事例をみれば、それだけでは国民の命と安全を守れないことは明らかです。


日本社会は世界各国と比較して女性や子どもに優しいから緊急事態宣言を出してもDVは増えません、なんてことは極めて残念ながらまずないでしょう。

実際、すでに虐待増加の兆候が現れています。


「自粛と補償、そしてDV対策はセット」であるべきだと思います。


では、このような環境ではどんなDV対策ができるのでしょうか。


今回は、フランスの取組みをご紹介します。

フランスは、普段から深刻なDV被害に悩んでいました(約20万人の女性が暴力的なパートナーと同居しているといわれています)。

そして今回の都市封鎖でも初手が遅れ甚大なDV被害を出してしまいました。

しかし、現在政府はこの状況を巻き返すべく世界各国の事例を積極的に取り入れて矢継ぎ早に対策をうっています。

「これは日本でもやれるでしょ!」というものをピックアップしてみました。



女性たちを守る暗号「Mask19」

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今回の都市封鎖でDVが深刻化しているのは、DV被害者が加害者から離れることができなくなってしまったからです。

家の中での生活どころか外出時までDV加害者につきまとわれ、助けを求めるタイミングがまったくないという事例が多くのメディアで報じられています。

これに対してスペインで始まり、フランスでもいち早く広がったのが「Mask19」の取組です。


都市封鎖をされている状況でも人々は日用品や医療品を購入する為なら外出できます。

そこで、フランスでは薬局にいる薬剤師さんが虐待通報の窓口になりました。

そこに行って「Mask19をください」というと、それがヘルプの合図となるのです(Mask19 = 19番のマスク、くらいの意味合いでしょうか。新型コロナウイルスを意味するCovid-19にかけているのだと思います)。

これならDV加害者と一緒でも通報したことはバレません。


薬剤師は女性の名前と連絡先、住所を聞きます。

そして女性たちが帰った後に、警察に通報するのです。


この取組は他にもドイツ、イタリア、ノルウェー、アルゼンチンに広がっています。


ざっとネットをチェックしたところでは、こちらの記事が比較的詳しく書いてくれています。フランス語ができればもっと色々わかったと思うのですが…



電話と合わせてテキストでの通報を可能に

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記事冒頭で各国のDV被害を記載するのに「虐待被害ホットラインへの問合せ件数が〇〇%増加した」という例もあげました。

しかし、場合によっては電話相談は都市封鎖後激減しています。

フランスやイタリア、そしてスペインがそれに該当します。

理由は、DV加害者が被害者を完全に監視下に置いてしまうからです。日中はトイレまでつきまとわれるという報告もあります。電話をする隙がないのです。

しかし、それでもDV通報がフランスはじめ各国で増加したのはSMS(ショートメッセージ)を使った通報ができるからです。

フランスでは緊急対応として114にテキストメッセージを送れるようにしています。

これならネット回線につながっていなくても電話回線さえあればメッセージが送れますし、テキストの内容も「help」くらいでOKになっています。

そこから対策チームが送信元を調査して駆けつけてくれるのです。

フランスでは現在、114に毎日約170通の助けを求めるテキストメッセージが届いています(前年対比で3倍近い通数)。



逃げられる場所を確保して

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最後に、被害者の物理的な避難場所を確保する必要があります。


逃げる場所がないからです。


これまで述べてきたように、多くの国ではDV被害の急増で普段から運営されているDVシェルターは定員がいっぱいになってしまっています。

そこでフランス政府はDV被害者のためにホテルの部屋を20,000泊分確保することを発表しました。



もちろん、これだけのことをするのには投資も必要です。

フランス政府はDV対策に100万ユーロ(約1.2億円)の追加投資を決定しています。

日本政府は108兆円に及ぶ経済対策を実施する予定とのことですが、どうか、国民の生命と安全に資する使い道を真剣に考えていただきたいです。


本当に残念ながら、これから日本でもDV被害が急増するのはほぼ確実です。

その一方で、すでに世界各国はDV被害を抑えるために様々な施策に取り組んでおり、その結果も出始めています。


これを参考にしない手はないはずです。


「自粛と補償、そしてDV対策はセット」です。絶対に。



4/17追記

素晴らしいサービスを発見して感動してます。

新型コロナウィルスの感染拡大によって外出自粛を余儀なくされる日々。しかし、家が全ての人にとって安全な場所であるとはかぎりません。ウィルスだけではなく、あなたの安全を脅かす全てのものから、あなたを守るホテル「ホテルシェルター」が生まれます。


まさにこれやん、って感じでした。

こうして実際にアクション起こす人、本当に尊敬してしまう。

自分も今の自分の立場でやれることをやろう…!


このサービスをローンチした龍崎翔子さんのnoteもありました。

必見です。



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前田晃平
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