レッドブル「くたばれ、正論」の背景にある戦略を読み解く
成人式のタイミングで出した広告が話題になっていたレッドブル。
くたばれ、正論
このコピーには、賛否両論が巻き起こりました。
広告の詳細を知りたい方は、ことばと広告さんのnote引用させて頂きますので、こちらをのぞいてみてください。
レッドブルがコミュニケーションが上手なブランドであることは、多くの人が認識されていると思います。
重要なのは、
レッドブルは『なぜコミュニケーションにこだわっているのか?』
・背景にどんな戦略があるのか
・レッドブルのコミュニケーションは具体的に何が上手なのか?
をもう一歩踏み込んで整理してみたいと思います。
レッドブルをストーリーとしての競争戦略の型で分解する
先日に要約記事を書いた「ストーリーとしての競争戦略」
紹介されている、良い戦略ストーリーを整理するフレームワークでレッドブルの優位性を整理してみます。
①クリティカル・コア=『一見非合理』な打ち手を考える
-異常なほどのマーケティングコミュニケーション投資
レッドブルは、他社からみたら、非合理に見えるほどコミュニケーション投資をする
続いて、SPとOCを読み解いていきます。
異常なほどのマーケティングコミュニケーション投資が、どんな優位性につながっているのでしょうか?
①SP=Strategic Positioning 他社と違ったことをする
②OC=Organizational Capabilitiy 他社と違ったものをもつ
②SP=Strategic Positioning 他社と違ったことをする
-ゲーム、音楽、スポーツなどの世界に入り込む
-栄養ドリンクの疲労回復→力を出すためのエナジードリンク💪
レッドブルはリボビタンDから影響を受けてつくられたことは有名な話ですが、リボDとは異なり『医薬品扱いにならない商品カテゴリー』をつくったのは、とても上手なアプローチ
パフォーマンスを上げるドリンクというポジションを築いたのは、レッドブルの戦略を読み解く上で重要ポイント
意味の転換
・before:疲労回復(リボビタンD)
・after:エネルギー獲得(レッドブル)
この意味の転換は、ストーリー、コンテンツに集中投資したことで図ることができたと考えられる。
③OC=Organizational Capabilitiy 他社と違ったものをもつ
SPを支えている裏側の組織構造がOCですね。
レッドブルはOC
-先行者メリットを生かして資本力勝負(オーナーが大富豪)
-170カ国12,000人のチーム
-未上場企業で自由に攻められる
マーケティング(コミュニケーション)チームの構造
・Red Bull music
・Red Bull TV
などの単位で分ける
シングルプロダクトであるため、1点集中でコミュニケーションに投資ができるのがレッドブルの強さです。ここが、コカコーラのような資本力をもつ大手にも勝てたポイントだと考えられます。
④コンセプト:人間の本性を捉えたコンセプトに集約する
レッドブルのコンセプト
=パフォーマンスを上げたい時に飲むドリンク
これが有名なフレーズにつながっています。
翼をさずける。
みんな、翼が欲しいわけですよね。
⑤WTPと持続的利益
WTP(Willing to pay)
顧客が支払いたいと考える金額
レッドブルが競合より値段が高くても、売れていた理由を整理します
①単一プロダクトにコミュニケーション投資を集中
②パフォーマンスを上げる「エナジードリンク」として想起獲得
③新しい意味「翼をさずける」をつくり出す
①+②+③
少し値段が高くても、人は、必要な時にレッドブルを手に取る。
→年間75億本を販売する(売上=客数×数量×単価)※2019年
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まとめると、レッドブルは、コミュニケーションの量と質をコントロールするノウハウと仕組みをもっており、ここが持続的成長をする上での鍵になることがわかります。
値下げにも『意味』をもたせるレッドブル
ここで、最近のレッドブルの広告コミュニケーションに戻りましょう。
先日にレッドブルの値下げ発表が話題になっていました。
価格変更は、どんなブランドであっても取り組まれることだと思いますが、レッドブルは、単なる値下げした事実を伝えるだけでは終わらない。
①サンプリングキャンペーン同時展開
↓
②「より多くの人へエナジーをさずける」というメッセージに変換
↓
③価格改訂に「ポジティブな」意味付けをする
下記の文章はニュースからの引用です。
値下げに合わせて、広告で意味(質)を持たせて、かつたくさんの人(量)にリーチすることが徹底されていることがわかります。
テーマは「より多くの人へエナジーを」。同社は、より多く人々にエナジーを届け、ユーザーにとって2021年が大きな飛躍のときになるよう注力するとしています。
そして今回の価格改定を記念して、TwitterとYouTubeライブにて、オンライン成人式イベント「Red Bull 成人祭」が1月11日に開催されます。こちらには、新成人の代表として女優の岡田結実さんをゲストに迎え、ヒップホップ・アーティストのAwichさん、クライミング/レッドブル・アスリートの原田海さんが登壇。これからの社会を背負って立つ存在である新成人を応援します。
さらに上記イベントに関連し、新成人たちに向けて、自分たちの信じる道を歩み、新しい社会を作ってほしいという思いを込めた新聞広告を、1月11日の読売新聞全国版朝刊に中面30段で掲出。こちらは「くたばれ正論」がキーメッセージとなっています。
引用元:ねとらぼ レッドブル、241円→190円に値下げへ 2月1日から「より多くの人へエナジーを」
まとめ
今回は、レッドブルの話題となった「くたばれ、正論」の広告の背景にある戦略を整理してきました。
レッドブルの戦略背景
①疲労回復→パフォーマンスアップ=エナジードリンクの市場をつくる
②コミュニケーションの投下量と質のコントロールが優位性の根底にあり
③価格変更であっても「翼をさずける」のコンセプトと接続
→価格ではなく、レッドブルのコンセプトに共感して購入する人を増やす
話題になった「くたばれ、正論」のメッセージがよかった、悪かったではなく、レッドブルが、なぜこのような仕掛けをしているのか?を考えられるとマーケティング思考を鍛えることにもつながります。
クリエイティブの裏側にある戦略をトレースする習慣をつくっていきましょう!