経済成長か、環境保全か〜②PG&Eのケースを知ってほしい理由
経済成長か環境保全か、という問題は、地球規模で考えれば環境保全にウェイトをかけるべき時が来ているということは明白ですが、国ごとに損得が発生し、実際に生活水準に違いがある以上、経済成長を諦め環境保全に邁進する選択が必ずしも正しいわけではなく、調整が難しいことは前回述べた通りです。
でも、経済成長と環境保全は、決して相対する発想ではないということに思いを至るべきかもしれないのです。TCFDという言葉を聞いたことがあるかもしれません。なんじゃそりゃ?かもしれませんので少し説明します。
TCFDというのは2016年にFSB金融安定理事会によって設立された気候変動関連財務情報開示タスクフォースで、財務に影響のありうる気候関連情報のディスクロージャーのことを指します。
すべての企業は、気候変動を理解し、3Rを意識した経営をしていかないといけないことはこれまでも述べてきました。その流れの中、気候変動が自らのビジネスのプロセスにどう影響するかを考えることが重要になっています。PG&Eという企業は、米カリフォルニア州の電力会社でした。1905年に設立されカリフォルニア州の電力を供給しているのですが、2000年の電力危機と、2018年の大型山火事を受けて、破産申請に至っている会社でもあります。
特に2018年の山火事ですが、乾燥した地域に多くの木がある状況下、送電線が古くなれば、山火事が起こることは想像できないことではありませんでした。山火事になることを予見しておいたなら、スプリンクラーの設置や送電線設備の更新などをやっておくべきだったのかもしれません。
「タラレバ」は適当ではないかもしれませんが、仮にPG&EがTCFDに基づき、山火事になりうるケースを想定していたなら。もしかしたら、山火事による被害額は少なくとも破綻申請しないで済んだかもしれません。事業を続ける上でどういう被害が起こりうるか。この想像力をいかにとらえるかが大事だということを理解する上で、PG&Eのケースは覚えておく必要があるということなのです(続)。