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早期退職とワークシェアリング

みずほファイナンシャルグループが、週休3~4日の導入を発表した。通常の週末2日に加えて平日に1~2日休みを増やすことができる制度だ。いわゆるワークシェアリングの一種と言えるものだろう。

これによって、当然給料は減額されるということだが、週休3日の場合で80%、週休4日の場合で60%程度の給料になるということであるから、平日が5日間であることを思えば働く日数に応じた減額ということであり、賞与や手当等への影響は分からないものの、労働日数の按分からすると妥当な金額ではないかと思う。

これまでは早期退職を導入する制度が非常に多かったが、こうしたワークシェアリングの考え方を取り入れることは、会社にとっては人材をつなぎとめつつ人件費を削減する目的を果たしうるし、また早期退職の退職金を一度に準備する必要がない分、会社の経営にとって大きなインパクトを与えずに済むというメリットもあるのかもしれない。

一方で、これが働く側にとってどのような意味があるかを考えると、私はこれは早期退職制度よりも、働く人にとって次のステップを段階的に踏みやすく、取り入れ方次第ではより活用しやすい制度になるのではないかと思っている。

早期退職した場合には、その時点で無職になり収入が途絶えることになる。積み増しされることが多いとはいえ、もらった退職金の中から次の仕事が決まるまでは食いつないでいくことになる。その不安感は非常に大きいし、また退職する働き手だけでなく、その家族にとっても、「無職になる」ことの精神的なネガティブインパクトは非常に大きいだろう。

これに対して、週休が1日ないし2日増える形のワークシェアリングであれば、給料は減額されるものの、働く人は社員の身分はそのままに、増えた休日の時間を使って、他の仕事をしても良いし、また次の仕事を始めるためのスキルアップなどに時間を使うこともできる。早期退職は次に向けた準備をしていなかった人には応募しにくい制度だが、ワークシェアリングなら、そうした準備をしていなかった人も、次のキャリアに向けた準備をすることに時間が使えるし、準備してきた人であれば、準備してきたことを実際に試す期間として使うことが出来る。これによって、すぐにではなくても、週休が1~2日増えた分の給料減を埋める新たな仕事を出来るようになれば、収入の道が複線化することにもなる。

もちろん、給与が減れば、老後の厚生年金が減額されることにも繋がっていくので、将来設計には十分な注意が必要ではあるだろう。このため安易な応募は禁物、というのはその通りだとは思う。

一方でこの記事のシミュレーションによれば、週休が1日なし2日増えたとしても、退職金は大きく変わるが年金額については、思ったほど大きな減額がないのだなと、私は感じた。

もちろん、個々に事情が違うので、自分で出来ない人はファイナンシャルプランナーに依頼するなどしてより正確な試算・予測をするべきだと思うが、年金の減額がさほど大きくないのであれば、退職金が目減りする分を、増えた休みを利用して始める「副業」で稼いで埋められるのであればさほど大きなマイナスにはならないだろうし、その「副業」が本業の定年以降も続けられるものであるなら、より長く働けて生涯賃金を増やすことにもなる可能性もあるだろう。将来的に減額が予想される今後の年金支給額を考えると、自力で長く稼げるすべを得ておくことは、長い人生の後半にとって大きな財産になる。

昨年までは早期退職一辺倒だった感のある企業の人件費削減の方策が、こうしたワークシェアリングにも広がってきていることで、より選択肢が増えていると見ることもできるだろう。早期退職しか選択肢がなかった自分の時のことを考えると、良い方向に変わってきていると思う。

働く側としては、いかにこうした制度をうまく使って、よりよく生き(延び)ていけるかということを考えなければいけないと思うし、その意味で選択肢が増えることは歓迎すべきことだ。もちろん、それをどう選んで活用するか・しないかは、個々の判断ではあるのだが。

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