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海外の実態、質と量でとらえるヒント=ドイツのアニメファンの場合=質・編

ドイツのオタクライフを描いた本「オタク・ストーリーズ」がドイツのベストセラーになりました。

後編となる本投稿では、ドイツのアニメファンを例に「質」にフォーカスして海外の実態をリサーチする方法について考えます。(前半はこちら

質と量に関しては、それぞれ定性調査、定量調査と呼ばれ、マーケティングの基本となるリサーチとされています。4月といえば新社会人の季節です。マーケティングやリサーチについて初めて学ぶひとは例えば以下の連載記事を読んでみてはいかがでしょう。

さて、冒頭のドイツで発売された「オタク・ストーリーズ」というベストセラーに戻ります。

まずはこの本を取り上げる理由について。リサーチの質的側面といえば「掘り下げ」で、特定の人物にロングインタビューを実施し分析する場合も往々にしてあると思います。

この本は、ドイツのオタク系ユーチューバー、Kuronoさんが自身のオタクカルチャーについて経験したこと、考えたことを綴った27本のエッセイから構成される本です。(以下は書店大手Thaliaのオンラインショップからのスクリーンショット)

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自身のオタクライフについて書いたエッセイ集がロングインタビュー同様の価値はあると考えます。ただし、理由はそれだけではありません。この本の注目度です。

ドイツの書店業界紙の報道によると、「オタク・ストーリーズ」はドイツの雑誌大手『シュピーゲル』が発表するベストセラー・ランキングで初週11位にラインクインしました。こういった大きな統計に現れてくるほどの書籍は、内容も注目に値すると考えます。質を検討するのに十分な資料なのではないでしょうか。

筆者も一冊取り寄せてみたのですが、正直に言うと最後まで読んでいません。ただ、読んだ部分だけでもすでに興味深いです。少し紹介してみましょう。

彼は『エルフェンリート』を見てアニメにハマり、友人に『コードギアス』を見せられて、さらにアニメファンを求めてイベントに参加し、一方で、学校ではマイノリティとして肩身の狭い思いをし、家では親に子供向けの番組を卒業しろと諭され、、、

という調子で日本人として共感できる部分もありますが、差異に気付くこともあるでしょう。

各国のオタク事情については、現地の人によるこのような「報告」は外部の人にはわからない部分が往々にしてあると思います。アメリカやフランスなどでは現地の人によるオタクをテーマにした本はすでにあると思いますが、ドイツ発となるとこの本が貴重な例かもしれません。

探せば世界には現地の人が現地語で書いた彼らの「オタクストーリー」があるのかもしれません。こういった書籍は、彼らの心に刺さる作品は何だったのか等々、受容の形態を知る手がかりになることでしょう。

以上、前後編の2回に分けてリサーチに関連して書いてみました。ファン動向の調査はビジネスだけでなく、社会学や文化学などの学術分野でも重要な対象です。何かしらのヒントになれば幸いです。

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タイトル画像はnoteの「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。

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