未曾有の危機でも前を向いて進むスタートアップ企業 ~アジアの未来
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
先月5月21日に行われた第26回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)、仕事の都合でリアルタイム視聴はできませんでしたがようやくアーカイブを見ることができました。お目当てはインドのOYO創業者 リテシュ・アガルワル氏らが登壇したセッション「コロナ時代に地平を開くスタートアップ」。特にインドは感染第2波が強烈で、病院の酸素ボンベが足りなくなるなど大きな影響を受けています。そのような中で急成長をしているスタートアップの経営者は何を考え、どう動いたのか。本人の口から聞きたいなと思ったのです。
コロナ禍がOYOに与えたインパクトは強烈でした。コロナ前後(2020年1月と4月)を比較すると、粗利の66%が文字通り蒸発したとのことです。「2年位かけて急成長を果たしたのですが、それが一瞬で元に戻ったことになる」と語っていました。
これを受けて、即座に「危機管理モード」に入ったといいます。つまり、キャッシュ・コスト・ケアの3つに注力したとのことです。
ここで最初に語られたのが、ケアです。まず、従業員に対しては危機対応で燃え尽きないよう、週休3日としました。そして200人ほどから構成される従業員ボランティア組織をつくり、24時間365日健康相談ができる窓口を設置。病院の紹介やワクチン接種などのサポートを用意しました。
パートナーであるホテルオーナーにもサポートプログラムを展開。その中にはビデオ会議を通じてドクターからのメンタルヘルスに関するアドバイスを受けられるものなどもあるとのことです。
そして世の中に向けての活動として、全国紙にワクチン接種を啓蒙する広告掲載や前線で働く医療従事者向けにOYOの部屋を自己隔離施設として提供するといったこともしています。
このような対応の結果を経て経営が筋肉質になり粗利も改善。また、ワクチン接種率が概ね49%くらいを超えた地域では需要の回復が見られるとのことです。
Q&Aの中ではモデレーターの小柳さんからやや意地悪な質問も飛びました。
「OYO(ホテル業)というのは通常のインターネットサービスのようにオンライン100%でない分、コロナのようなパンデミックに対して脆弱ですよね?今回の件はビジネスモデルそのものへの危機とは捉えませんでしたか?」
リテシュ氏は「宿泊業が影響を受けやすいのはそうだ」と認めつつも、「中長期的には人は旅行がしたいのだ(ニーズはある)。そして、それはどのような形態になるのか(ユースケース)を深く理解しようと努めている」と回答していました。そして次の言葉はとても印象的でした。
「I'm very optimistic about the long term prospect.」
(中長期の見通しとしては、とても楽観的です。)
そしてプレゼンの中では「すでに日の出が見えている」とも表現していました。
危機に際しても動きの早さ、そして世の中の動向を見ながらその先にあるものを信じて「楽観的」といえるタフネス。まさにこれこそが、スタートアップ創業者が持つ強力な能力なのだなと痛感しました。
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※ タイトルおよび本文中の画像は、第26回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)DAY2-10 「コロナ時代に地平を開くスタートアップ」よりキャプチャーしたものです。