毎朝「ベットから飛び起きる理由」はあるか?
ikigaiとは毎朝ベットから飛び起きる理由
年末年始のお休みは楽しいものですが、年明けの仕事はじめは憂鬱なものです。今からそんなこと思い出させるなって? そうですよね、すみません。でももし、皆さんの仕事が、「毎朝ベットから飛び起きる理由」になるとしたら。仕事はじめも、きっと「もういくつ寝ると」と指折り数えるイベントになることでしょう。
仕事が「毎朝ベットから飛び起きる理由」だって? そんなことは、仕事への従業員の熱意を示す「エンゲージメント」がイタリアと並んで世界最低レベルのこの日本ではありえないことだろう。そう考える人も多いのではないでしょうか。しかし、この言葉、私がikigaiという言葉を調べているときに、その日本発のコンセプトを一言で表現すると、ということで出会った英語の表現なのです。
「生きがい」ならぬ”ikigai”という言葉に私が始めて出会ったのは、イタリアに住むイギリス人の友人と、ZOOMで読書の話をしていたときのことです。日本でベストセラーになった英語の本は沢山あるけど、英語圏でベストセラーになった日本語の本ないよね。そんな私の問いかけに対して、友人はこう答えました。
「マリエ・コンドウのやつがあるよね。でもそれは2番目だ。一番売れたのは、うーん、作者の名前が思い出せない。。。でも“ikigai“っていうやつだ。知ってるでしょ?」
好きなことで、得意なことで、必要とされ、見返りが得られる事
もちろん「生きがい」という言葉は知っていましたが、そういうタイトルの本は聞いた事がありませんでした。しかも日本人の書いた「生きがい」の本が世界的なベストセラーになっているなんて、出版事情にも海外事情にもわりと関心の高い私でも初耳でした。
「へー、それは聞いたことがないな。調べてみるよ」という事で、その話題はそこで終わりにしました。
ZOOMでの近況報告会を終えると、すぐにその”ikigai”という本をインターネットで調べてみました。それは確かに世界的ベストセラーになっているようでした。しかし、書いているのは日本人ではなく、日本文化に明るい外国人のようです。
The Japanese Secret to a Long and Happy Life (日本人が幸せで長生きである秘密)という副題が付けられたその本は、エクトル・ガルシア氏と、フランセスク・ミラージェス氏という二人のスペイン人の共著でした。ガルシア氏はオタク系のカルチャーから、ミラージェス氏はワビサビなどの伝統文化から日本に興味を持ち、この「生きがい」とう概念に共通の関心を覚えたようです。
両氏は大量の文献を読み漁り、沖縄の離島に滞在してフィールド調査を行い、この「生きがい」という概念を言語化しました。好きなことで、得意なことで、必要とされ、見返りが得られる事。これが「生きがい」だと。
「生きがい」という言葉は、日本ではほとんど年配の方にしか使われませんよね。孫の世話をするのが生きがいだ、とか。でも、よくよく考えてみると、確かにそうしたお年寄りの「生きがい」もこの定義に当てはまります。好きなことで、得意なことで、必要とされ、見返りが得られる事。この場合、見返りは孫からの愛情や子供からの感謝でしょう。
学生や若い社会人、働き盛りの世代がそんな何かを見つけられれば、それは確かに「毎朝ベットから飛び起きる理由」になるのかもしれません。好きなことで、得意なことで、必要とされ、見返りが得られる事。それを見つけるのは、決して簡単なことではないでしょう。
しかし、「命をかけてでもやり遂げたいこと」や、「毎日毎晩没頭してしまうほどとにかく好きなこと」を見つけるよりは、幾分手がかりがあるのではないでしょうか。仕事にやりがいを見つけるのが難しい、と感じるとき、私たちは無意識にそうした極端なレベルで好きなこと、没頭できることを仕事に求めてはいないでしょうか。
だとすれば、日本の「エンゲージメントの低さ」は、本来日本人が持っていた、バランスのとれた「生きがい」に目線を移すことで取り戻せるのかもしれません。好きなことで、得意なことで、必要とされ、見返りが得られる事。毎朝ベットから飛び起きる理由をつくってくれる、そんな仕事は何なのか?年末年始の時間を使って、私も考えてみたいと思います。
参考文献: