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ミスマッチが広がる労働市場。官民の協力でリスキリング(学び直し)を進めよう

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

長引くコロナ禍の中で、影響を受ける業種も広がってきています。足元の求人数を見ると、業種により明暗が別れていることが見てとれます。

3月の有効求人数は全体で約201万人と前年同月比10%減った。このうち「販売の職業」は約19万人と同20%、「サービスの職業」は約47万人と同16%それぞれ大幅に減少した。

一方、医療や情報通信、建築などの「専門的・技術的職業」は約45万人と同6%減にとどまった。コロナ禍前から人手不足が深刻だった「建設・採掘の職業」は約12万人で同17%増えた。

総務省の労働力調査によれば、2020年の転職者数は319万人だった。転職者は増加傾向で19年は351万人と比較可能な02年以降で過去最多だったが、コロナ禍で労働移動が停滞した。

政府はこの緊急事態に対応するため雇用調整助成金を大幅に拡充し、失業者が出るのを防いできました。しかし繰り返される緊急事態宣言に象徴されるように、短期的に解決する望みは薄いでしょう。財源にも限りがある中で、労働市場の調整機能を健全に働かせると共に、ニーズの高い分野に人材移動を促すことが急務です。

移動先として有望なのが情報通信分野です。コロナ以前から人材不足が叫ばれており、IT人材は2030年には最大で79万人不足すると経済産業省が試算しています。在宅勤務や押印不要の契約ツールなど、社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進める上でも必要不可欠な人材です。

カギとなるのが、リスキリング(学び直し)を実現する職業訓練です。自治体が民間に委託するコースの中にはウェブデザイナーなど人気職種を目指す講座もありますが、修了者の就職率は半分程度となっています。

新型コロナウイルス禍で失業者が増える中、公的な職業訓練への期待が高まっている。経済的支援を受けながら再就職に結びつく専門知識や技術を無料で習得できるためだ。だが受講生からは「倍率が高すぎる」「就職につながらない」などの声が漏れる。取材からは訓練と企業ニーズのミスマッチや受講希望者への支援不足といった課題が浮かんだ。

よりマッチングを良くするためには、個人の意識改革も必要です。パーソル総合研究所のアジア太平洋地域の14カ国・地域を対象とした19年の調査で、勤務外で学習や自己啓発を行っていない就業者の割合を見ると、日本は46%と約2人に1人でした。14カ国・地域の平均13%より大幅に高く、職業訓練の余地は大きいでしょう。

具体的にどのような職種が将来有望なのか、またそのために必要なスキルはなんなのかを明らかにするには、実際の企業の求人が集まっている民間のデータを活用することが効果的です。世界で7億5600万人以上のメンバーが利用し、1500万件以上の求人が掲載されているLinkedIn(リンクトイン)では様々なデータを分析した「エコノミックグラフレポート」を発行しています。

すでに公開情報として各国政府や州にも提供されており、より企業のニーズに合う職業訓練プログラムの開発等に生かされています。今後はこれをさらに推し進め、オンラインでの学習プログラムとスキルを証明するための試験、そして求人応募と面接までをセットにした「スキルズパス」という取り組みを開発しています。これにより過去の学歴や経歴ではなく、今あるスキル・能力をベースに採用を可能にし、より多くの方々に機会を提供できる見込みです。

日本においても官民が協力して実践的なリスキリングプログラムを開発し、ミスマッチを減らしていく取り組みが求められるのではないでしょうか。

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タイトル画像提供:mayucolor / PIXTA(ピクスタ)

※ 情報開示:筆者はLinkedInの日本法人に勤務しております。記事の内容は個人の見解であり、会社の公式見解ではございません。

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