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iPhone 12で話題の5Gは、スマホ時代「終わりの始まり」の号砲である

佐々木俊尚

5Gについに対応したiPhone 12が発表され、日本のメディアでも本格的に5Gが盛り上がってきているようです。いまの4Gの速度が最大1Gbps程度だったのに対し、5Gは最大20Gbps。「5Gなら、2時間の映画が3秒でダウンロードできる!」と高速・大容量がアピールされています。

5Gのギガ無制限キャンペーンははいつまで続くのか?

とはいえ、iPhone 12ではそこまでの期待はできないでしょう。そもそも、非常に高速なミリ波の周波数帯に対応したのは米国版だけで、日本で発売されるiPhone 12はsub6と呼ばれる周波数帯にのみ対応。

また、いくら高速・大容量になったと言っても、5Gの通信料金が高止まりしたままで、さらには通信量の上限(いわゆる「ギガ不足」問題)が設定されてしまえば、高画質の映画をばんばんダウンロードできるようにはなりません。いまのところ携帯キャリアは、5G普及の狙いもあって「ギガ無制限」を打ち出しているようですが、これらは果たしていつまで続くのでしょうか。5Gが普及して利用者が増えてしまうと、「ギガ無制限」は維持できなくなり、いまの4Gのように通信制限が行われる可能性があると思います。

スマートフォンに5Gが日本で本格的に普及するためには、このギガ不足問題が解消され、手ごろな価格でギガ使い放題になる必要があります。それに加えてもうひとつ大事なのは、キラーアプリ/キラーコンテンツの登場。2時間の映画が3秒でダウンロードできると言っても、人間が映画を観るのには3秒ではなく2時間かかります。人びとがスマホに使える時間は、しょせんは有限なのです。

5Gのキラーアプリは存在しない。いつかは登場するだろうが、しかし‥

以下の記事にあるように、「ただ、映画やゲームなどを短時間でダウンロードできるだけなく、5Gならではの使い道を消費者に示せるかもカギを握る」ということなのです。

もちろん、どこかの国のどこかの企業が、圧倒的に新しい5G向けのキラーアプリを作り出し、それが世界的に大ヒットするという可能性はじゅうぶんにあるでしょう。しかし私は、そのような可能性があるとしたらその時のプラットフォームはスマートフォンなのではなく、VR(仮想現実)AR(拡張現実)MR(混合現実)のような空間テクノロジーを使ったデバイスか、あるいはApple Watchのような身体に装着するウェアラブルデバイスの進化型ではないかと予測しています。

キラーアプリのプラットフォームはAR/VRに変わる

なぜなら現行のスマホは、しょせんはてのひらのサイズの小型モニタに画面を表示し、ユーザー側はタッチスクリーンで反応を返すという平面的なユーザーエクスペリエンスしか持っていないからです。それに対して空間テクノロジーは立体的であり、目の前に広がっている物理空間をもデバイスの中に取り込むことができます。

この記事は非常に同意できる内容なのですが、書かれている「画面の向こうの人と同じ時間を共有し、生のリアクションがあるというリアルタイム性が熱量につながっている」というのはまさにスマホではなく、次世代の空間テクノロジーのデバイスにこそ期待される役割でしょう。

いっぽうウェアラブルデバイスは、スマホには存在しなかった身体性を持っています。IoT(モノのインターネット)では道路や建物などアナログな物理空間の存在をインターネットに接続させますが、ウェアラブルデバイスはアナログな人体をセンサを使ってインターネットにつなぐIoTの一種です。これがさらに進化すれば、身体にデバイスを埋め込むインプラントデバイスに発展します。これが人体の視覚機能に展開されれば、空間テクノロジーと連携する未来も見えてくるでしょう。

5Gは「高速・大容量」に加えて、「低遅延」「大量接続」という特徴もあります。これらはスマホにはあまりメリットはなく、自動運転車のような瞬時の判断を求められる通信機器や、IoTのように物理空間の無数の物体と接続する際に力を発揮するのです。つまりは私たちが生きているこの立体的な物理空間に通信ネットワークを張り巡らせるためのテクノロジーとして、5Gは大きな意味を持っているのです。

これらの要素を考えれば、5Gをフル活用できるのはスマホではない。スマホ上で5Gの圧倒的なキラーアプリが登場する可能性を私は否定するわけではありませんが、5Gの持っているポテンシャルを考えれば、その舞台はスマホではなく、空間テクノロジーやウェアラブルデバイス、そして物理空間という方向にあると考えるのが、妥当だと考えます。

5Gはその先の未来に向けて、2020年のいま発進しつつあると捉えたほうが良いでしょう。その意味で5Gのスタートは、スマートフォンという時代をつくった電子デバイスの「終わりのはじまり」の号砲と言えるのです。


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佐々木俊尚
作家・ジャーナリスト。近代の終焉と情報通信テクノロジーの進化が社会をどう変容させるのかをライフワークとしています。