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中間層の年収で結婚できないなら生涯未婚は5割以上になる


よくメディアが雑に使う平均値というものがある。日本人の平均年収はいくらとか、平均未婚率はどうだとかいうやつだ。

しかし、平均値にはあまり意味はない。
真ん中が盛り上がって、左右対称性のある正規分布(ベルのような形をしていることからベルカーブという)であればいいのだが、どちらかに偏って歪な形になると平均値とは「誰のものでもない幻の数字」となる。

一番わかりやすいのは貯蓄額平均値で、日本人の勤労世帯の貯蓄額平均は1700万円とかいわれてるが、それは一部の富裕層がメッチャ金融資産保有しているからであって、最頻値は100万円以下。中央値にしたって1000万円程度。みんながみんな1700万円の貯蓄があるわけではない。

これと同じことが既婚世帯の年収などにも表れている。平均年収でいわれると結構高い金額になる。
児童のいる世帯の平均年収は2014年あたりを機にあがっている。しかし、これはそもそも児童のいる世帯の数が激減しているからあがっているのである。むしろ、ここから読み取れるのは、ある程度の年収がなければ結婚して子どもを持つことができなくなっているということだ。

言い換えると、かつて結婚して家族となることができた中間層がそれを実現できなくなっていることである。

それを示すために都道府県別の未婚男性の年収中央値を算出し、あわせて、その中央値年収における未婚率というものを計算。それが2012年と2022年どどう増減しているかを確認した記事を書いた。

ぜひじっくりとお読みいただきたい。
どこの県がどうだとかいう話よりも、全体として見えてくる流れを感知してもらいたい。

※一部読解力のない人が30代全体の未婚率がどーたらこーたらと書いてるのがいたが、全体の未婚率じゃないよ。各県のそれぞれの中央値年収の未婚率ね。

結論からいえば、男性の年収の中央値があがらないところほど未婚率が上昇している。つまり、以前のように中央値で結婚できなくなればなるほど未婚化が進むということだ。
加えて、未婚率が高いところは男性の未既婚年収格差が大きくなっている。既婚の年収があがったのではない。未婚と比べて大きく差のある年収の男しか結婚できなくなっていることを意味する。

ある意味これは結婚カースト化の道でもある。身分や職業ではなく、「稼ぐ金」による階級制である。

格差や不平等を解消しようという動きを否定するものではないが、なんでもかんでも各論すべての平等化を目指したって無理。
特に、結婚なんてものは、そもそも「互いの足らざる部分を補い合う」ものであって、双方同程度同能力で同量の義務を負うのであれば結婚する必要もない。どうぞ一人でたくましく生きればいい。

ジェンダーギャップ指数なんたらに大騒ぎする界隈が結果的に少子化を推進している。

その意味で、かつてプチ炎上した三重県の某市長が言っていたことは間違っていない。当然、全体としてこれを目指すものではないが、それを望む若者は少なからずいる(全体の3割くらい)という視点もないと困る。0か100かではない。バランスが重要だ。

記事にも書いた通り、女性の8割が「自分より高い年収の相手を望む」し、実際結婚している男女の7割は妻の上方婚。その是非はともかく、自分より年収の低い男と結婚するくらいなら、独身のまま自由に時間と金を使った方がマシと女性も結果として非婚化する。

男性がその中央値で結婚できない割合が50%を超えているということは、生涯未婚も50%以上になる可能性があるということ。まあ、実際、男の生涯無子率もすでに4割で10年後には5割になるので、あながち間違いではない。


低年収ばかり取りざたされるが問題はそこじゃない。
そもそも皆婚時代でも無職や低年収は結婚できなかった。要するに、経済的上位層と下位層の未婚率は昔から変化ないが、人口の多い中間層だけが結婚できなくなっているがゆえの全体の婚姻減であり未婚化なのである。

つまり、中間層男性の経済的復活がなければ、1ミリも出生増にはならない。結婚も出産も消費の時代なので。

相変わらず、頑なに「婚姻減は経済問題ではない」と言い続けるのがいて閉口するが、いつまで昭和気分でいるんだか。

歴史的な経緯から見れば少子化とは中間層の衰退であり、1970年代後半から始まっている。バブル崩壊→氷河期→リーマン→消費増税→コロナ→物価高と割を食うのは中間層だが、特に苦しむのは若者の中間層(慶應とか五大商社内定組などの上級若者は別)。中間層の消費意欲の減退が少子化として表出する。つまりは、少子化とは経済問題以外の何者でもない。

こういうニュースも最近よく見かける。

上級国民だけが結婚して子どもを持ち、中流以下はそのお世話をすることでいいという思想性も見え隠れするが、それで一番困るのは、少数派として大人になった時のその人らの子どもたちだと思うよ。中間層なき社会でどうやって生きていけるの?

とにかく中間層がつぶれれば、国は滅亡する。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。