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良質な睡眠を求める旅「スリープツーリズム」に熱視線 「無形のラグジュアリー」で差別化なるか

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

旅の目的は、と問われてなにが思い浮かぶでしょうか?世界遺産や歴史に触れる、グルメを追い求める、大自然に触れる等々、人によって様々な目的があるかと思います。個人的には大まかな予定だけ立てて、ボーッと過ごすような旅のスタイルが好きですが、初めて訪れる場所であればまず郷土資料館を訪れることにしています。街の成り立ちを知ることで、史跡やグルメなどの点の情報が線となって理解できることが多いからです。

そんな旅の目的に新たな潮流が生まれています。世界的に深刻化している「睡眠障害」を背景に拡がる、良質な睡眠を求める旅「スリープツーリズム」です。

良質な睡眠を求めて旅をする「スリープツーリズム」が世界的に注目されている。

スリープツーリズムとは、良質な睡眠を得るための旅行。プランは不眠症や寝つきが悪いなどの睡眠障害に悩む人や疲れている人に向けたものとなる。寝具や空調、室温といった睡眠環境はもちろん、適度な運動や食事、リラックスするためのヨガなどのアクティビティーが含まれる。

世界的に深刻化している睡眠障害を背景に市場は拡大。海外の調査会社によると、全世界の市場規模は6400億ドル(約96兆円)との試算もある。市場は宿泊施設に加え、マッサージやヨガといったサービス業、睡眠に特化したクリニックなどに広がっており、今後も拡大が予想されている。

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私のモットーのひとつに「良い仕事は良い睡眠から」というものがあり、以前こんな記事も書きました。今の時代は、24時間働けますか?よりも、毎日8時間寝られますか?をキャッチフレーズにしたほうが良いのではないかと思います。

旅先では不思議と深い睡眠がとれたという経験を持つ人も多いのではないでしょうか。わたしも旅に出ると「せっかくだからちょっと夜ふかししてみようかな」と思っているのですが、むしろいつもより1時間くらい早く寝落ちしてしまうことがしばしば。

日本には古来より「湯治」という文化があり、まさに病気を治すために長期間にわたり温泉地で静養する方法が広く浸透しています。全国には戦国時代に武将達に「隠し湯」として愛された歴史を持つ温泉地が数多く残っています。上杉謙信と武田信玄といった有名武将も負傷した兵の回復を図るために各地に隠し湯を持っていたと言われています。両者の勢力の間に位置していた野沢温泉はいつ戦火を浴びてもおかしくない場所でしたが、戦争中でも多くの利用者が野沢温泉を利用していたと言われています。湯治の重要性が広まっていたことがわかるエピソードですね。

湯治を現代のウエルネスリゾートとしてアップデートし、他の体験と共に新たな魅力を打ち出す観光地も出てきました。

睡眠や食事、ルフロと呼ばれる現代の湯治に力をいれたウエルネスリゾートをうたい、40〜50代を中心に女性の利用者が7割を占める。「小田原はいつも通り過ぎていたが、地元食材の料理もおいしくまた来たい」とリピーターも多いという。

小田原はこれまで、箱根や富士山を目指すインバウンドの「ゴールデンルート」上にありながら、呼び込みが十分にできていないことが課題となっていた。小田原市観光協会は江之浦測候所を活用しつつ、インバウンド向けの座禅や能楽体験などを提供する高付加価値化したツアーの実証実験を進めている。定番の小田原城でも忍者体験のツアーを企画し評判も上々だという。

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小田原と言えば近代の実業家が隠居生活を送った地として、大正~昭和初期には政治・経済の社交場として注目を集めていた時代もあります。「小田原三茶人」と呼ばれる三井財閥の益田孝(鈍翁)、三越百貨店社長などを歴任した野崎廣太(幻庵)、電力界の大御所松永安左ヱ門(耳庵)が小田原の地に茶室を構え、日々茶会を催していました。これが政治家や実業家の社交場として大変に栄えたそうで、「小田原詣で」とも言われていたそうです。

コロナ禍を克服して新たな旅のスタイルも生まれてきました。インバウンドのみならず、多様なスタイルと目的地が生まれるとますます旅の魅力が増してきますね。


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タイトル画像提供:8x10 / PIXTA(ピクスタ)


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