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コロナが突き崩した日本型雇用。ジョブ型雇用の大波がやってくる

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

本日の朝刊に掲載された記事が衝撃的でした。日本を代表する企業の1つであり、単体3万人超、連結30万人弱が勤務する日立がジョブ型雇用へと大きく舵を切るというニュースです。

世界標準であるジョブ型は成果主義と親和性が高く、欧米などで広く浸透しています。近年加熱化するグローバル規模での人材獲得競争により、多くの企業で特に需要が高い職種のジョブ型への転換が進んでいます。

現在、日本で主流の雇用形態は「メンバーシップ型」。個々の従業員の業務を細かく定めず、幅広い職種を体験させる。終身雇用を前提にゼネラリストを養成するのに適した仕組みで、長く日本企業の競争力を支えてきた。一方、従業員に「無限責任」を課すことは、長時間労働や低い生産性の遠因ともなった。

ジョブ型は「職務定義書(ジョブディスクリプション)」に業務内容を細かく定める。個人の業績評価が容易で中途採用なども進めやすい。近年、日立は米中企業などと先端人材の争奪戦を繰り広げるが、海外人材には不透明に見えるメンバーシップ型は足かせとなる。

日立では2011年に「グローバル・メジャープレーヤーへの転換」を掲げ、各社で独自にあった人事制度を世界共通の仕組みに集約したそうです。しかしながら、給与体系などの全面刷新につながる改革は容易ではなく、今に至るまでデジタル系人材などの一部に留まっています。

これを動かしたのが、コロナを契機にした在宅勤務。同じオフィスで常時(物理的にも)仕事ぶりが見えているときと異なり、リモートワークでは仕事の評価の仕方も変える必要があります。目標設定や評価方法など、特に管理職や人事、経営陣の意識変革が必要です

メンバーシップ型雇用では社内での「働きぶり」も含めたキャリアや経験が「人」としての評価に入ります。また、終身雇用を前提にしているため市場の相場という外部の指標が入ることが少ないです。よって、全く同じ仕事をしていたとしても、会社によって給与が全然違うということが起きています。このことがジョブ型に慣れているグローバル人材にとっては、かえって「不透明な仕組み」として見えており、入社後にきちんと評価してもらえるのかどうかがわからないといった不安につながります。その結果、メンバーシップ型を採用する日系企業は敬遠される傾向となっています。

このことについては、以下の記事でも触れています。

また、ジョブ型では「職能x勤務地」で給与の相場がだいたい決まっています。一方でメンバーシップ型であれば幅広い職種を経験できるというメリットはありますが、従業員として「無限責任」を負うことにもなり、長時間労働や低い生産性を助長する遠因ともなっています。幅広い経験の中には、転勤を伴うものも珍しくはありません。

一方で、「転勤は嫌」と考える人もいる。ある就職エージェントを手がける会社の営業担当者は3月上旬、大学4年の女子学生からこんな相談を受けた。「内定先から突然他県に配属すると言われて困っています。別の就職先を紹介してくれませんか」――。

聞くとこの学生は不動産企業に内定し、愛知県の実家から通勤可能な営業所への配属を約束されていた。しかし新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、内定先から「入社後は隣の県の拠点で働いてほしい」と言われて戸惑ったという。

本社以外の国内外に拠点を持つ日本企業は、異なる拠点へ勤める転勤制度を設けていることが多い。リクルートワークス研究所が2019年に発表した調査によると、18年に転勤を経験した人は約77万人にも上る。

転勤を避ける傾向は学生だけではありません。共働き世帯や親の介護などの理由により、急な転勤には対応できない方も増えています。リクルートワークス研究所の調査によると、5年以内に退職した女性の2.4%が「配偶者の転勤」を理由に挙げています。その他は、「育児・子育て」(3.9%)、「介護」(2.7%)が並んでいます。

この「配偶者の転勤」を理由に退職した女性(ここにもダイバーシティ観点で大きな課題があります)は、その後再就職ができているのでしょうか?

メンバーシップ型が大多数を占めている現在では、正社員になる道が極端に新卒一括採用時に偏っています。よって、再就職が叶ったとしても、多くは非正社員としての雇用になっているでしょう。

2020年より施行された働き方改革関連法の「同一労働同一賃金」ですが、職種による横断的な賃金相場が存在するという社会基盤なくしては成立しません。

日立の決断は、今後日本の企業全体に波及していくでしょう。ジョブ型の浸透と共に入社時に「職種x勤務地」が確定することになります。別の勤務地を希望する場合は社内異動もしくは別の会社のジョブを探すこととなり、雇用の流動性も増していくでしょう。同一労働同一賃金についても、この流れの中で実現されていくものと考えています。結果として、社命による急な転勤は過去のものなる日が近いのかもしれません。

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タイトル画像提供:C-geo / PIXTA(ピクスタ)

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