勉強ができなくて「俺、バカだからさ」と笑っていた、あの頃の僕へ
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勉強ができなくて「俺、バカだからさ」と笑っていた、あの頃の僕へ

僕は、学校が好きじゃかった。小学校から高校まで、ずっとだ。なぜかって、勉強が嫌いだったからだ。体育や部活動など、楽しみな時間はあったけれど、教室で先生の話を聞いている時間が圧倒的に長いのが学校だ。ずっとお経を聞いている気分だった。でも、それだけならまだマシだ。ぼんやり外を眺めていれば、時間は過ぎていく。本当に嫌だったのは、自分が友達と比べて、勉強ができないことを否応なく自覚させられることだ。授業中、先生からふいに質問されることがあっても、大抵、答えられない。そうすると、他の友達から嘲笑されたり、からかわれたりする。「こんな問題もわかんねえのかよwww」と。そんな時、あの頃の僕は笑ってこう応えていた。「そうなんだよね。俺、バカだからさ」

担当の先生たちの名誉のために言っておくと、先生たちは、とても熱心に指導してくださった。でも、自分がそれについていけなかった。こういう状態が、余計に自分を惨めにさせた。酷い先生だったら、先生のせいにできたのかもしれないが、それも叶わないのだ。

高校を卒業するまで、この状態はずっと変わらなかった。担任の先生からは、成績は悪いし(偏差値でいったら、全科目オール30レベルだ)、そもそも勉強に興味がないのだからと、大学進学を勧められることすらなかった。かといって、専門学校で具体的な技術を身につける気概もなかった僕は、進路未定のまま高校を卒業してしまった。こんな生徒は、僕の学年には僕以外ただのひとりもいなかった。

この状況に、親が危機感を持たないわけがない。どうするんだと聞いてくる。かといって、何もする気が起きない自分は、現実から逃げるように、家出同然で新聞配達員になった。そうすると、住み込みで働けるからだ(4畳の部屋で、和式トイレ共用。風呂なし)。これでようやく、勉強の魔の手から逃げおおせることができた。領域展開からの脱出だ(呪術廻戦)。

この時に、生まれて初めて、自分の興味の赴くままに、自分のペースで、他人と比べられず、勉強する機会ができた気がする。「勉強」といっても、教科書を広げていたわけじゃなくて、本を読んでいただけだったけれど、でも、とにかく、そうして独りで黙々といろんなことを学んでいくうちに、勉強に興味がわくようになった。「面白いかも」と思うようになった。そして、自分でも驚いたことに、もっと勉強がしたくなったのだった。それから、両親にお願いをして、予備校に通わせてもらい、大学進学するに至った。こんなアホな息子を見捨てずに、勉強のための小さくない投資をしてくれた両親には、なんと感謝していいかわからない。

そこから、今に至るまで、時間を見つけてはずっと勉強している気がする。勉強すればするほど、世界の見え方が変わったり、広がっていく感じがするからだ。何より、やればやるほど自分が何もわかってないことがわかるから、もっと勉強したくなるのだ。

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こんな自分自身の体験や、その後の学びを通じて、確信していることがある。それは、子どもの発達には、かなり個人差があるってこと。これは生まれ持っての特徴の場合もあるし、環境による場合もある。いずれにせよ、はっきりいえるのは、6歳になったからって、小学校1年生のカリキュラムについていく準備ができているとは限らないし、高校3年生になったからって、受験できる状況じゃないかもしれないってことだ。

でもそれは、断じて、「バカ」ってことじゃない。まして、劣等感を持たないといけないことでもない。身長は人それぞれ、伸び方も、伸びる時期も違う。発達だって、それと同じだ。今、伸びないからって、これからも伸びないわけじゃない。

自分にも、娘ができた。あと数年もしたら、学校に通うことになるだろう。いい成績をとってほしいなんて、これっぽっちも思わない。勉強なんて、できたってできなくたって、どっちだっていい。けど、学ぶことを楽しんでほしい、とは思う。そして、勉強ができないからって、劣等感を持ってほしくない。自分のような学校生活を娘が送るかもしれないことを想像すると、胸がキュッとなる。娘には「私、バカだから」なんて、言ってほしくない。

だから、子どもたちみんなが、それぞれのペースで、それぞれのフェーズにあった勉強を楽しめるようにしたい、とずっと思ってきた。

🤔

時は進んで、2021年、僕は、衝撃を受けた。デジタル庁が進めている「こどもデータベース」を知った時のことだ。なにせ、「あったらいいな」があったのだ。ドラえもんだって、こんな便利なシステム出せやしないぞ!

「生徒ひとりひとりの個性にあった学び」的な理念は、長く、叫ばれ続けてきた。それは、文科省が主導する「GIGAスクール構想」や、経産省の主導した「未来の教室」に結実しているようにも思う。生徒に一人一台、端末を配布し、最新のテクノロジーを活用して、生徒個々人にあった教育プログラムを提供できるようにしようというものだ。

ただ、この理念の実現はまだ道半ばと言わねばならない。例え手元に最新の端末があったとしても、肝心の教育プログラムが真に「生徒ひとりひとりの個性にあった学び」になっていない限り、効果が限定的になってしまう。考えてみれば、当然だ。当時の自分に、端末渡して、単にデジタル化されただけの教科書で勉強しなさいっていったら、5秒後にYouTube漬けになっているに違いない。

こんな類の生徒にも刺さるであろう教育プログラムをつくるのに必要不可欠なのが、生徒ひとりひとりの学習状況を「包括的に」網羅した、「大量の」データだ。それなしには、この壮大な理念は、絵に描いた餅になってしまう。

しかし、そんなデータは現在、それぞれの種類ごとに別々の場所に保存されていたり、フォーマットもバラバラだったり、そもそも、存在していなかったりもする。だから、これらのデータを整理統合、加工、連結、収集し、子どもたちのために活用できるようにしようというのが「こどもデータベース」構想だ。

なぜ、そんなデータが必要なのか、そして、データは安全に活用されるのか、個人情報を悪用されることはないのか、といった疑問については、デジタル庁のデジタルエデュケーション統括として本件に携わっておられる中室牧子慶大教授が、とてもわかりやすく、かつ、丁寧に解説してくださっているので、ぜひ、下記のnoteをご参照ください!


このデータベースができれば、自分のような子どもたちが、学校でツラい思いをしなくてすむようになるのかもしれない。目を輝かせて、内発的に興味を持った学びに、打ち込めるようになるのかもしれない。そう思うと、心が踊った。きっと、みんなも賛成してくれるに違いない。もう、爆速で実現させてほしいー!

そう思って小躍りしていた矢先、先日報道されたNHKの記事をみて、目が点になった。見出しはこうだ。「政府 学習履歴など個人の教育データ デジタル化して一元化へ」

記事中でも、短い文章の中で、二度も、「デジタル化して一元化する」というセンテンスが出てくる。

政府は学習履歴など個人の教育データについて、2025年ごろまでにデジタル化して一元化する仕組みを構築することになりました。

これは牧島デジタル大臣が、閣議のあとの記者会見で発表しました。

それによりますと、2025年ごろまでに個人の学習履歴や授業の出欠状況など、教育データをデジタル化して一元化するとしています。

この記事が出て以降、ネットを中心に、様々なメディアで「こどもデータベース」に対する反対意見が噴出している。SNSでは「#教育のデータの一元化に反対します」というハッシュタグまで出現した。

確かに、この記事だけみたら、反対したくなるのも当然だ。僕だって、自分のろくでもない学習履歴が政府の管理下でつぶさに一元的に管理されて、知らない人に覗き見られる可能性があるとなったら、とても嫌な気落ちになる。

でも、先にご紹介した中室教授のnoteにある通り、記事にある「デジタル化して一元化する」というのは、誤解どころか、誤報なのだ。

牧島大臣の会見と同日に発表にされた「教育データ利活用ロードマップ」の42ページに、わざわざ赤字で、「国が一元的にこどもの情報を管理するデータベースを構築することは考えていない」と明記されている。

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その他にも、データ取扱のガイドラインや、個人情報保護の原則等についても、同資料でしっかり語られている。資料をみる限り、システムを作る側は、そういうリスクまで折り込んで本件に取り組んでいるように見える。

もちろん「こどもデータベース」に反対の人がいても、これっぽっちもおかしいと思わない。どんな政策にも、メリットとデメリットがある。それをどう捉えるかは、人によって異なる。けど、誤解や悪意で情報を歪めて反対意見を煽るような報道は、どう考えてもおかしい。とても残念だし、悲しい気持ちになる。

でも幸いなことに、僕には、できることがある。とっても間接的にではあるけれど、「こどもデータベース」に関われる仕事をしているのだ。吹けば飛ぶほどの微力ではあるけれど、システムがより良いものになるように、やれることはなんでもやりたい。勉強が大嫌いで、ずっと惨めな思いをしてきた、あの頃の僕を救うために。


なお、「こどもデータベース」は、単に生徒個々人に個別最適化した学習カリキュラムを提供するだけでなく、そもそも、まともに勉強できる家庭環境にない子どもたちに対して、能動的にアプローチしてサポートするための情報を提供することも目指しています。中室先生のが本件についても下記の記事でわかりやすくまとめてくださっているので、ぜひご一読ください。


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