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ニューヨーク市の未来は、若者が決める

2年以上ぶりの海外出張で、ニューヨーク市に短期滞在している。

街を行く人は3分の2くらいがマスクをしているものの、ムードは明るい。ちょうど新市長が、3月を皮切りにレストラン顧客にとってワクチン接種証明を不要にすると宣言したところだ。レストラン産業はもちろん、外食大好きなニューヨーカーも大喜び。急に暖かくなったこともあり、コロナ危機に覆われた長い冬が明けようとしているという期待が、肌に感じられる。

私は、2000年代半ばに、数年間マンハッタンの住民だった。改めてこの地に立つと、懐かしさと共に、常に動いていないと残されるという焦燥感を思い出す。コロナ危機は、ニューヨーク市のような大都市をどう変えるのだろうか?

まず、ニューヨーク市の特徴は、大量の刺激だ。特有の匂いや騒音といった物理的な刺激もあなどれない。さらに、金融を中心にビジネスの心臓部であり、チャイナタウンから数分でシックなSOHOへ歩けるような文化の共存も刺激的だ。袖触れ合う他人と共有する背景がないからこそ、逆に親切だったり、たまたま隣り合わせた人としゃれたスモールトークを楽しんだりできる。このような刺激の強度は、より広く静かな東京とは比べ物にならないと思う。

しかし、その刺激は、過剰に感じられることも多い―つまり、刺激疲れしてしまうのだ。常に新しいレストランを訪れ、友達や同僚にさりげなく自慢する――必要はないものの、衝動に駆られてしまう。

実際、マンハッタンからロンドンへ移ったある同僚が、ニューヨークでは有能な人がこぞってめちゃくちゃ働く一方、ロンドンでは、人の有能さには変わりないものの、そこまでは働かないとコメントしていた。成功に向け、ひたすら歯車を走るモルモットのようだ。隣のモルモットも同じことをしているので止められない。

このような過剰な刺激とそれに迎合するライフスタイルは、コロナ危機を機に、過去のものとなるのだろうか?私は、このエネルギーが消えてほしくないという期待も込めて、なくならないと思う。マスク義務がなくなり、パンデミックがエンデミックになれば、刺激は戻り、人間の性がその刺激に応えていくだろう。

ただし、マンハッタンの生態は若年化に拍車がかかるのではないかと推測する。アメリカでGreat Resignation(大いなる退職)が話題になるように、コロナ危機で人生の優先度を考え直した人は多い。刺激に応えて走り続けるライフスタイルに見切りをつけ、郊外や全く違う地方都市にスローライフを求める人は、そもそもの刺激度が相対的に低い東京よりも多いのではないか?

コロナ危機以前から、中年層に人生見直しはつきもの。彼らがニューヨークから出ることを選べば、これからのマンハッタンライフはより「20代から30代前半に経験して、卒業する」位置づけになるのだろう。現在の年齢分布によると、ニューヨーク市の中央値は37.5歳、アメリカ全体は38.3歳。やや若い程度だが、これからニューヨーク市の中央値は若年化するのではないかと予想する。

短期的には、家賃を含め生活費が高いことがブレーキをかけるだろう。しかし、長期的には、需要と供給が均衡し、もっと学生を含め若い人に住みやすい街になることを期待する。

既に春の気配が感じられるマンハッタンが、若いエネルギーと観光客を引き付けてやまない存在であり続けることを期待する。


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