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ラガルドECB総裁は「最近の利回り上昇を認識、注意深く監視している」としながらも、インフレは一時的だ、とも言っており、6月会合で政策に大きな変更はないと見てよいであろう。景気は悪かった去年からの反動もあり、回復傾向にあることは間違いなく、結果金利が上昇するのは当然だ。にも拘わらず、市場は金利上昇に嫌気しがちで、米国の長期金利上昇のニュースを見てダウが落ち、その流れを受けて日経平均も弱く始まるという流れに我々も慣れてきている。さりとて、緩やかな金利上昇は始まっており、どれくらい時間をかけて緩やかに金利上昇させられるか、が鍵と言える。ラガルド総裁が金利上昇には牽制的な発言を繰り返していることで、現状、欧州の金利上昇懸念は後退している。

そうなると、やはり金融緩和モードが継続である。6月のECB会合以降もPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)の買入ペースを維持する期待が高まったと言える。ここからは金利カーブをどうするか、より、資産買い入れをどうするか、だが、ECBが6月以降に買入ペースを落とさなければいけない理由は見つからない。第一に、フランス、ドイツも未だロックダウンから完全にあけてはいない。またも延長ということもありえるが、行動規制の要請は6月30日まで続く。第二に、インフレは徐々に上昇しているとはいえ、4月のユーロ圏インフレ率は1.6%。さらに、第三として、イングランド中銀と違い、現ペースで買入を維持したとて、PEPP枠を使い切るわけでもない。計算上は期限の来年3月末までに毎週ネットベースで€18bn以上買わなくてはいけないので、このままだとむしろ枠が余る可能性の方が高いくらいである。

ドイツ憲法裁判所がPSPP (公的部門証券買入のこと)の合憲性議論について、問題はないとの判断を下したという点も後押し材料になる。ドイツ政府はECBが十分な説明を行っていない、十分な説明がない場合ブンデスバンクの買入を停止する、と裁判所に申し出ていたが、ドイツ憲法裁判所は申し出を却下した。市場観測通りとは言え、こうした資産買入に対する不透明感が払しょくされる中である。以上より、6月のECB会合は無風に終わる、との見通しはかなり精度が高いと言えるのではないか。

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